十四話 取るべき選択
翌日の放課後。空き地にて。
「影慈……普段なら今日は空手の日なんだ。でも、今は空手に行ってる場合じゃないと思ってる。戦う相手が魔法を使ってくるとなると、魔法を使える奴と修行をするべきだ」
(つまり、昨日にチームを組んだ金髪君と修行をした方がいいって思ってるってこと?)
「その通りだ。影慈は昔からだけど、ほんと察しいいよな。俺は直情的過ぎるから、羨ましいよ……。今日空手道場に行って、しばらく休むってこと伝えようと思ってる。そもそも、代理戦争がどのくらいの期間になるのかもわからないしな……」
光葵は先の見えない不安に声のトーンが低くなる。
(空手道場を休むことには僕も賛成だよ。そもそも、みっちゃん黒帯で強いしさ! 代理戦争については、本当に読めないね……)
影慈も途中から不安そうな声色へと変わる。
「とりあえず、やることは決まったし、動くしかないか! また、メフィさんから接触があった時に色々聞いてみよう!」
光葵は意識的に声を明るくし、お互いの不安を減らすよう努力する。
このまま、二人が不安感を募らせるのが一番危険だ。
わからないことがあっても、わかること、できる範囲で動くことでしか、道は拓けない……。
◇◇◇
光葵は夕方の空手が始まる時間より、三十分早く道場に行った。
師範のもとへ行く。
「押忍! 師範少しよろしいでしょうか?」
「押忍! 構わないよ。どうしたんだい?」
「実は、学校の行事の担当に当たっているのと、私的な事情で当分道場に来れそうにないんです。見通しが立てば連絡しますので、当面休ませて頂くことは可能ですか?」
「学生生活も大事だろうからね。分かった。親御さんに許可は取ってるのかい?」
「既に理由を伝えて了承はもらっています」
「では、当面休むということで承ろう」
これで、代理戦争のための修行に集中できる。本当は小学生の時から、通い続けている空手がしたかったが、今は自分の気持ちを優先している場合ではない……。
◇◇◇
翌日。
学校の授業を終え、夜に頂川と会う約束をしていたので、待ち合わせの公園で落ち合う。
「よう! 頂川。次期番長は決められたのか?」
光葵は手を上げて挨拶しながら質問する。
「おう! 決めれたぜ。でもみんな泣きやがるから大変だったぜ……」
頂川は少し涙ぐんでいる。
「それだけ慕われてるってことだろ。頂川のそういうところすごいと思う!」
光葵の口から素直な言葉が出る。
「よせよ。褒めても何も出ないぜ」
頂川は言葉ではそう言っているが、まんざらでもない反応だ。
「これからの動きなんだが、話してもいいか?」
光葵は少し真剣な口調で尋ねる。
「ああ、問題ないぜ。……ぜひ話してくれ」
頂川の目つきが鋭くなる。
「俺は友達を怪我させた倉知が許せない。戦って倒したいと思ってる。ただ、修行も必要だと感じてるんだ。だから、倉知を探すのと並行しながら、頂川と対人で修行もしたいと思ってる。どうだろう?」
「なるほどな。いいと思うぜ。対人での修行は大切だろうしな!」
頂川が快活に笑う。




