百十六話 最終決戦④
ここから戦いの展開が大きく変わる。
影慈の予想している、清宮の特殊能力の未来視、思考伝達で清宮、虎西共に攻守が優れている点は変わらない。
しかし、〝人数が増えた〟こと〝比賀の《空間裂断》〟を警戒していること、何より〝虎西の左腕が義手になった〟ことで敵二人の動きがやや遅くなっている。
「綾島さん、比賀さん! まずは甲冑を倒す! 俺と綾島さんで隙を作り出す。そこを比賀さんの魔法で決めてくれ!」
光葵は叫ぶ。
二人から「オーケー」との返答がすぐにある。
清宮の《強化水龍》《高圧穿孔》《強化水刃》は常に急所を狙ってきている。
そして、虎西の《金帝魔法――構築、魔金属の投斧》での高速攻撃も強力だった。
だが〝攻略方法〟が定まっている光葵達の行動は最適化された――。
「ここで決める……。《光速移動×反射魔法――光彩陸離》!」
綾島は虎西に超光速で接近。その勢いを乗せたまま強烈な《破邪の鉄拳》を六連撃放つ。
虎西が少しふらついた隙に光葵が「《闇魔法――闇霧固め》」を発動する。
虎西の動きを闇霧で固めて止める。
「《合成魔法》《乱生魔法×空間転移――空間裂断》……!」
比賀が虎西に魔法を放つ。
――清宮は《強化水龍》で虎西を助けようとする。しかし、強化水龍諸共に虎西は縦に両断される。
地面に堕ちた虎西だったモノは金属音を虚しく響かせる……。
「虎西さん、ごめんなさい……。私があなたの意志を継ぎます……」
清宮は切なく呟く。
「このまま倒しきる! いこう!」
光葵は気合を入れる。
「これが最後の復讐……確実に殺す……」
綾島の瞳がどす黒く輝く。
「カイザーの仇は取らせてもらう。悪いが三対一でな……!」
比賀は覚悟を言葉に出す。
「私は負けない。来なさい……! 《魔眼×付与魔法――強化版魔を狩る黒衣》!」
清宮が声を張り上げる。
魔眼の黒い輝きが全身に広がる。
その直後、光葵達三人の一斉攻撃が清宮に放たれる。
《破邪の砲弾》。
《擬似神槍グングニル》。
《空間裂断》。
清宮は全てを予見し、躱したようだ。
そして、《強化水龍》《高圧穿孔》《強化水刃》を放つ。
清宮の攻撃はタイミングが完璧であり、完全に躱すことは不可能だった。
三人共傷が増えていき、血が舞い散る。
だが、光葵達全員が回復魔法を使えるため何とか戦闘を継続していた。
一進一退の攻防が続く。
ただし、清宮には〝攻撃は一度〟も当たっていない……。
「このままじゃ三対一とはいえ、体力かマナが尽きる……。攻撃を当てないと……!」
光葵は焦りを言葉にする。
その時、影慈の声が聞こえてくる。
(清宮を観察していて分かった。おそらく、未来視は〝清宮の視野範囲の未来〟が予見できる。比賀さんの急な参戦に対応できてなかったからね。魔眼があるから視野範囲は広いだろうけど……。あと、これは完全に予測だけど未来視のもっと詳しい能力は、視野範囲の〝未来の可能性を見れる〟能力なんじゃないかと思う)
影慈は冷静な声だ。
(何か根拠があるのか……?)
光葵は念じながら、影慈に尋ねる。
(うん。僕達の攻撃のテンポが不意に変わった際に〝未来視ではなく反射神経〟で躱してる時があったんだ。〝未来の可能性が最も高い行動に対して〟清宮が動いているならそこに勝機があるはず……)
影慈の冷静な声が、光葵を焦りから解放していく。
(そうか……そういうことか……。影慈、本当にお前と一緒に戦えてよかった)
光葵は影慈の考えた作戦の全容を理解する。
そして、心からの敬服と感謝をする。
――影慈は本当に、頭がよく回る奴だ。お前がいたから、ここまで生き残れた――。
(うん。僕も思ってるよ。みっちゃんと会えて……一緒に戦えてよかった……)
影慈の嘘偽りない感情が流れ込んでくる。
(おう! いくぞ影慈。最終決戦だ……!)
光葵は最後の戦いに向け、影慈と拳を合わせるイメージをする。
影慈もそれに応じてくれる。




