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【Another】星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
二章 星の代理戦争 後編

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百十一話 護りたかった存在

 ちょうどその頃、綾島と至王は息をもつかせぬ戦いを継続していた。


 そして、結界の崩壊音は戦いのリズムを微かに変える。

 綾島の意識が一瞬崩壊音に逸れたのだ。


 それを至王は見逃さなかったのだろう。


「《使役魔法――インビジブルゴーレム》……!」


 インビジブルゴーレムの強烈な殴打が綾島に直撃する……。


「フハハハ。貴様の思考の隙を衝いてやったぞ!」


 血まみれの至王は叫ぶ。


「綾島さん!」


 光葵は急いで駆け寄る。


「仇……殺す……」


 綾島の様子は明らかにおかしいが、致命傷ではないことがわかる……。


「……お前、その魔法……」


 志之崎は驚いた様子だ。


「……俺はインビジブルゴーレムを知覚できる。今までずっと一緒にいた美鈴の魔法だからだ。そして護りたかった存在だからだ……!」


 志之崎は叫ぶ。


「なら、ちょうどいい! 志之崎! 俺達でこいつらを殺すぞ。今の一撃で相当なダメージを与えたはずだ」


 至王は血を吐きながら、言葉を吐く。


 志之崎は全てを悟ったような顔をする。


「……点と点が繋がった。至王、お前は金髪の男を殺したか?」


 志之崎は淡々と尋ねる。


「そうだ。しぶとい男だったよ。仲間のために命を捨てたような愚か者だったがな」


 至王は頂川を侮辱するような口調で答える。


 その言葉を聞き、志之崎は俯きながら、小さな声で呟く。


「……俺は仲間の仇である日下部を殺したい……。だが、日下部の親友である金髪の男は、危うい精神状態の美鈴を降伏させ命を救ってくれたのだろう…………。俺は何がしたい……。何を望んでいるんだ……。仇を討つことか、それとも『護りたかった存在』を救ってくれた男の無念を晴らしたいのか……」


「何をぶつぶつと言っている! 俺と貴様でこいつらを殺すぞ!」


 至王は苛立ったように言葉を放つ。


「…………そうか。俺のしたいことが分かった…………」


 ゆっくりと志之崎は至王に刃を向ける。


「完全な私情だ。俺は……美鈴の命の恩人に報いたい」


「フハハ。何を言っている? お前の殺したい相手は目の前にいるだろう。俺とお前でなら両方殺せるぞ」


 至王はあくまで冷静に説得しているようだ。


「俺は護りたかった。それだけが俺の望みだった……」


 志之崎は悲しげに呟く。


「ふざけるなァァ! 俺達は利害が一致している。それを捨てるのか!」


 至王は怒りの咆哮を上げる。


「ああ、そうだ! 俺は俺の信念に従う!」


 志之崎も声を荒げる。


「では、貴様も敵という認識でいいんだな?」


 至王は怒りでこめかみ付近に血管を浮かべている。


「そうだ……。俺はお前の敵だ。いくぞ……」


 志之崎は至王に向かい駆ける。


「待てっ! 俺達も至王を倒したい。追いかけるぞ!」


 光葵は叫ぶ。


「勝手にしろ……。俺はケリをつけられればそれでいい……!」


 志之崎は光葵達に構う素振りはない。


「フハハハハ! 馬鹿げた奴だ……! 来い……! まとめて消してやる……!」


 至王は狂気じみた瞳で、大声を出す。


「《使役魔法――インビジブルゴーレム……!」


 至王は光葵目掛けて、インビジブルゴーレムを進めたようだ。


「《風魔刀――散らし風》……」


 志之崎が間に割って入り、散らし風にてインビジブルゴーレムの攻撃をいなす。


「……いけ」


 短く志之崎から言葉がある。


「助かる!」


 光葵と綾島は更に進む。


「まだだァ! 《合成魔法》《刻印魔法×雷火砲――刻印雷火》……! 《刻印魔法×結界魔法――爆撃結界》……!」


 至王は全力と思われる、魔法を放つ。


「俺が防ぐ! 《合成魔法》《氷魔法×闇魔法――氷黒壁、氷黒の盾》……!」


 光葵が至王の攻撃を全て防ぐ。

 魔法同士の接触時に、凄まじい爆音が響き渡る。


「殺す……! 《光魔法――破邪の矢》……!」


 綾島の詠唱と共に、まばゆい輝きが奔る。


 破邪の矢は至王を貫く……。


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