百八話 どす黒い瞳
光葵と綾島はアジトに戻り、休息をとっていた。
そして、二日経ってもカイザーにも比賀にも連絡が取れない状態が続いた……。
「おかしい……。カイザーにも比賀さんにも連絡が取れない。何かあったのか……?」
光葵は最悪の事態も考え声が低くなる。
「そうだよね……。あの二人はたしか少し離れた岩山で修行するって言ってた。見に行ってみた方がいいかも」
綾島が心配そうに話す。
「そうだな。でも、まだ俺も綾島さんも回復しきってない。今敵と遭遇したら負ける可能性が高い……。あと一日回復だけに専念しよう。早く行きたい気持ちはあるけど……」
光葵は逸る気持ちを抑えるために、唇を強く噛む。
「日下部君の言う通りだと思うよ。今日しっかり回復して明日の朝に見に行こう……」――。
綾島は冷静に返答している。だが、その目には不安の色が滲んでいた……。
◇◇◇
翌日、完全に回復してはいないが、光葵と綾島は岩山に来ていた。
「守護センサーが反応すれば二人かもしれない。一緒に探して回ろう」
光葵はそう言い、半日かけて二人を探す。
しかし、反応はなかった……。
「別の場所にいるのかも。でも、もしかしたら……」
綾島は悲しく呟く。
「あの二人も強い。きっと生きてるはずだ! 俺達ができることを今はしよう。体力を回復させて、敵を倒せるだけ強くなろう……!」
光葵の言葉に綾島は静かに頷く。
「そうだね……。みんなの仇は私が取る……」
綾島からは今までにない強い覚悟を感じる。
◇◇◇
その日から八日間は回復ができ次第、光葵と綾島で修行した。
光葵は《理の反転》を使えるように何度も反復練習をする。
結果、実戦で使える程度の溜め時間、マナ量での運用ができるようになった。
綾島は少し人が変わったような雰囲気になっていた。〝自分よりも復讐〟を優先しているような印象だ。
時折、一人で修行がしたいと言い、少し離れた場所で修行することもあった。
◇◇◇
――「今のままじゃまた負ける……。仲間に迷惑をかけてしまう。何より、みんなの仇が取れない……」
綾島の脳裏にルナ姉、頂川、朱音の顔が浮かぶ。
「私は至王を殺すために修行してきたけど、違うね……。殺すべきは『自分』だ……。今イメージが湧いた魔法なら、『自分も至王も』殺せる……」
綾島の目にどす黒い光が宿る……。
◇◇◇
九日目。
光葵と綾島はカイザーと比賀探し、併せて索敵をしていた。
守護センサーが〝洲台採石場跡地〟で反応する。
反応は二人だ。
カイザー、比賀さん……安堵感が心の底から湧く。
しかし、向かった先にいたのは別人だった……。
「会いたかったぞ。貴様らは俺の手で殺さねば気が済まない……!」
至王が殺意を露にする。
「日下部だったな……。お前は俺が殺す」
志之崎は短く、ただ殺意を吐き出す。
「侍、至王……! 俺も会いたかったぞ……。ぶっ倒してやる……!」
光葵に怒りが込み上げる。
「……日下部君。至王は私にヤラせて。確実に殺す……」
綾島の瞳はどす黒い光で光葵を捉える。
「綾島さん、二人で戦おう」
そう言った直後に超高速で志之崎が光葵に突っ込んでくる。
「日下部……! お前は俺が相手だ! 至王……!」
志之崎が叫ぶ。
「分かっている。《刻印魔法×結界魔法――刻印結界、堅牢の陣》」
至王が素早く詠唱を終える。
すると、光葵と志之崎は十メートル四方の結界に閉じ込められる。
クソッ、綾島さんと分断された……。




