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【Another】星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
二章 星の代理戦争 後編

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百五話 カイザーキング

「ん……? 何を無礼なことを言っている!」


 カイザーは怒りの声を上げ、数秒間押し黙る。


 そして、声のトーンが元に戻る。


「いや、その通りかもな……。比賀は私立洲台学園中学を知っているか?」


「知ってるよ。県内トップの進学校だろ?」


「うむ。我はその中で学力トップファイブなんだ。昔から頭が良かった。親も教師もそんな我に『良い成績』を取ること『良い生徒』であることを望んだ。我からすれば『強要』されていたような感覚だったがな。我は周りからがんじがらめにされた生き方はしたくなかった……」


 カイザーが過去を思い、苦々しい表情を浮かべる。


「頭が良いのはいいことだろ。てか、ちょっと腹立つわ。でもまだ中二だろ? そんなに気にしないでいい気もするけどな。でも、あんたが言いたい気持ちは何となく分かるよ……」


 比賀にもカイザーの言う、〝がんじがらめにされた生き方をしたくない〟という気持ちがよくわかった。

 自分のしたいことや、意志とは違うことも刑事としてやってきた。その苦しさが体感としてわかるからだ。


「そうかもな。……我は『何者かになりたかった』だから、昔から好きだったダークヒーロー『カイザーキング』の真似をした。話し方から見た目、考え方までな。すると不思議と『自分という軸』を持てた気がした。たとえ借り物の張りぼてだとしてもな……」


 カイザーはだんだんと声のボリュームが小さくなっていく……。


「あんた随分色々考えて生きてんだね。正直驚いたよ。でもいいんじゃないか? たとえ張りぼてでも、それを貫けば何者かにはなれるだろ? それに真似から入るのなんて、仕事でも何でも同じだ。そこから自分らしさを見つければいい」


 比賀は思ったことをそのまま伝える。


「フフッ……。比賀の言う通りだな。汝に話して気が楽になった。ありがとう。さて、修行を再開するか。皆を守れるくらい強くなるためには『比賀の新技』の完成が必須だ」


 カイザーの声がどこか軽くなっているのを感じる。よかった。


「そうだな。ガキのことも守ってやるよ。私はこれ以上大事なものを失いたくはないからな」


 比賀は弟のことを思い、言葉を紡ぐ。


「ああ、頼りにしているぞ。…………なんだ……? 何か違和感を感じる……」


 不意にカイザーが、魔眼を頼りに周囲を見渡す。


「比賀! 上だ! 岩石と大量の水が落ちてきている!」


 カイザーの焦った声が響く。


「何……? まずいな。ガキ、近くに来いワープする!」


 比賀がカイザーの背中に手をつき片目を隠す。

 百メートル程離れた場所に移動する。


「我が魔眼で気づけなかったか。いや、魔眼の感知範囲に入らないように上に登ったのか?」


 カイザーが現状を分析して声を出す。


「分からない。だが敵がいるんだろうな。上に登るか?」


 比賀はカイザーの目を真っ直ぐ見る。


「そうだな。高所からの攻撃を繰り返されると不利だろうしな」


 カイザーがすぐに同意する。


 頂上付近まで行くと、少し広いスペースに清宮がいた。


「あら、さっきの攻撃、確実に当てられると思っていたのに無傷なのね」


 清宮は穏やかに話す。


「汝はルナ姉の……!」


 カイザーの瞳に怒りが迸る。


「会いたかったよ……! あんたは私の手で裁かないと気が済まないんでな……!」


 比賀の中に憤りが満ちていく。


「怖いわね。コレは代理戦争。犠牲はつきもの……。でもあなた達の気持ちも理解できるわ。その上で私は負けられない。私の理想の世界のために……!」


 清宮は憂いのある表情をする。


「いくぞ……! 《魔眼散弾》!」


「《乱生魔法――乱し打ち》……!」


 比賀は空間を鞭のようにしならせて打ち付ける。


「こちらもいくわ……。《合成魔法》《付与魔法×水魔法――強化水龍、蜷局とぐろ》……」


 清宮は巨大な水龍を渦状に回転させることで攻撃を防ぐ。


「とんでもない水量と勢いだな……。《魔眼砲》でも弾き返されそうだ……」


 カイザーが言葉を出す。


「だったら、私の『新技』でいくか……! 《合成魔法》《乱生魔法×空間転移――空間裂断くうかんれつだん》……!」


 比賀は清宮を目で捉え、右腕を上から下に素早く振り下ろす。

 すると、強化水龍諸共に〝空間ごと〟清宮の左腕を裂断した……。


 仕組みとしては、ワープホールを敵周辺に作り出し、その空間に乱生魔法を使い無理やり〝敵の身体の一部分のみを空間転移〟させることで、結果的に〝敵を裂断〟できるというものだ。


 この技は一週間かけて、カイザーの魔眼で確認しながら〝空間と物体を裂断できる距離感、マナ出力、タイミング〟などを訓練した結果修得したものだ。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


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