百一話 仇討ち
場面は朱音、綾島が至王と対峙している時まで遡る。
「あなたはルナ姉の仇……。ここで仇を取らせてもらう……」
綾島は静かに言葉を発する。
「ルナ……? ああ、温井のことか。仇討ちとは涙ぐましいな」
至王は挑発したように話す。
「綾島ちゃん……。一緒に仇を取ろう……」
朱音も静かに呟き、《炎帝魔法――焔の羽衣》を纏う。
あらゆる魔法を焼き尽くす強力な防御魔法だ。
「《光魔法――覚醒の光明》……」
綾島の身体中から神聖な光が放たれる。
「光魔法の特性の『覚醒』を用いて、マナの知覚力、感覚を目醒めさせた。前のようにはいかない……」
綾島の言葉に迷いは一切ない。あるのは覚悟だ。
「フハハ。修行でもしたか。来い……! まとめて消してやる……!」
至王は不敵に笑う。
朱音は《炎帝魔法――加速移動》、綾島は《光魔法――光速移動》にて超高速で至王への一撃を狙う。
「《刻印魔法――全能力強制上昇》……!」
至王は自分に刻印を刻み、全能力を引き上げる。
飛躍的に戦いの速度が上がる……。
朱音は《焔の矢、焔の魔球》、綾島は《穿ち光線、破邪の矢》を放つ。
「《分身魔法――六》……」
至王は六人に分身する。
そして、それぞれが個別の状況に合った動きをする。
《刻印魔法――空盾》、空気中に刻印を打ち、盾を作り防ぐ者。
攻撃として、《合成魔法》《刻印雷火》、《爆撃結界》を放つ者がいる。
爆撃結界は炎の刻印の付いた手のひらサイズの爆発する結界であり、幾度となく商店街に爆音が響き渡る……。
「……あなたがルナ姉の魔法を使わないで……!」
綾島が怒りの叫声を上げる。
「奪った魔法を使って何が悪い? 貴様はこの代理戦争の趣旨を理解しているのか? 最後まで生き残った者が世界を変えるほどの力を手に入れられる。まあ、俺は興味ないがな……」
至王は吐き捨てるように言葉を出す。
「何言ってるの? 世界を変えるほどの力が欲しくて代理戦争に参加したんじゃないの?」
朱音は思わず尋ねる。
「俺はむしろ今のままの世界でいい。大企業の御曹司として生まれ、何の不自由もしていない。代理戦争に参加した理由は『俺が関与できない部分で世界が変えられることが我慢ならない』からだ……!」
至王は傲慢という言葉を体現したかのように両腕を広げ、声を張り上げる。
「ふざけるな……。そんな奴にルナ姉は……。殺してやる……!」
綾島の瞳に殺意が宿る。
「綾島ちゃん! 冷静になって!」
朱音の声も虚しく、綾島は直情的に攻撃を繰り出す。
「フハハハ。人間とは愚かなものよな。感情を揺さぶってやれば、すぐに隙を見せる」
至王の言葉の直後、綾島が踏み入れた地面から〝雷の刻印〟が浮かび強烈な雷撃が発生する。
追撃で、取り囲む形にて〝六人の至王〟から《刻印雷火》が放たれる。
土埃と稲妻、炎が辺りに舞う……。
「うぐ……」
綾島は呻き声を上げつつも《光魔法――破邪の盾》でかろうじてダメージを軽減したようだ。
「大丈夫? 綾島ちゃん!」
朱音が駆け寄ろうとするも、非情にも至王の追撃は続く。
朱音は《加速移動》を大幅に強化し、綾島の前に立つ。
「仲間思いなのはよいが、そんな所にいてもただの的だぞ」
至王は冷血に言葉を紡ぐ。
六人の至王から《刻印雷火》《雷撃結界》が立て続けに放たれる。
「《炎帝魔法――焔の羽衣、焔の渦》……!」
朱音が防御し続けるも、マナが徐々に減っていく……。
このままじゃ持たない……。
「朱音ちゃん、ごめんね。もう動けそう。私も戦う……」
綾島が声を振り絞る。
「……綾島ちゃん、無理やりでもここから動かないとジリ貧で負けちゃう。向かって右斜めが比較的攻撃の数が少なそう。そこから一緒に脱出しよう!」
朱音が明るく提案する。
《焔の渦》を強化し一時的に至王の攻撃を全て相殺する。
刹那、朱音は《加速移動》、綾島は《光速移動》で一気に移動する。
「……脱出するならここからだと思っていた。まあ、そう仕向けたのだがな……」
至王は静かに呟く。そこには〝五人の至王〟が待ち構えていた。
それぞれが《爆撃結界》《雷撃結界》を両手いっぱいに持っている。
「じゃあな……。《爆撃結界、雷撃結界×分身魔法――多重爆撃》……」
投げられた爆撃結界、雷撃結界が途中で〝分身〟し広範囲に爆撃を与える……。




