百話 想い合う二人
「ふざけないで! コウさんを殺しておいて! 殺してやる!」
美鈴はゴーレムの破片を、一気に自分を巻き込む形で頂川目掛けて大量に放つ。
「命は大事にしろ……」
頂川は《雷盾》で美鈴も含めて、防御する。
「インビジさん! 起きて!」
美鈴が更にマナをゴーレムに送ろうとする。
「これ以上アイツに無理させんな」
頂川は美鈴に電撃を与える。
そして、倒れる美鈴を支え地面に寝かせる。
「殺せ……ないなら……自分……で」
美鈴はゴーレムの破片を自分の頭に撃ち込もうとする。
「馬鹿野郎が……!」
頂川が大声を上げる。
「あんたには大事に思ってくれる人がいる……。たしかに、俺の仲間が殺しちまったのは事実だ。それでも、優しいマジシャンとあんたを思いやる侍がいるのを俺は見てた。あいつらと過ごした時間で少しでも生きたいと思ったなら生きろ! あの侍は俺が殺させない。約束だ!」
頂川は噓偽りない言葉をそのまま届ける。
「そんな……こと……信じれない」
美鈴は痺れながらも目を合わせる。
「コレは漢の約束だ。絶対破らない。あんま時間もない。あいつらと過ごした時間、あんたのことを大切にしてくれてる人のことを思い出せ。その上で生きたいと少しでも思えればそれで十分だ……」
頂川はそう言い、十秒程無言で待ち続ける。
「……シノさんのこと……死なせない……?」
美鈴がゆっくりと涙を流しながら尋ねる。
「ああ。絶対だ!」
頂川は短く、そして明瞭に返答する。
「……分かった。美鈴……あなたに……降伏する」
美鈴は静かに目を閉じる。
「そうだ……。それでいいんだ。生きなきゃ、折角生まれた意味がそこで終わっちまう……」
この瞬間、頂川は《使役魔法――インビジブルゴーレム》が使えるようになる――。
◇◇◇
同時刻、美鈴の守護センサーの反応が消えた。
「お前ら……。これ以上俺から大切な者を奪うか……!」
志之崎は咆哮を上げ、右脇腹に突き刺さったグングニルを強引に引き抜く……。
地面の血溜まりが倍以上に広がる。
そして、目の前に広がるもの全てを破壊し尽くす勢いで、《風魔刀――駆天乱斬》を放つ。
「マナ出力が桁違いだ。死ぬ気か……」
そう思わせる程のマナ出力の魔法が、光葵に襲い掛かる。
《想像的生成、擬似聖盾アイギス》を使うも、強烈な勢いで斬撃と共に吹き飛ばされる……。
志之崎はそのまま、頂川の方に向かう。
まずい……!
◇◇◇
「金髪! 美鈴を返せ!」
志之崎は鬼の形相で、神風の如き速さで斬りかかる。
「それだけ大切に想われてるなら安心だぜ……」
頂川は斬撃を全て躱し、姿を消した……。
「消えた……? いや、美鈴が無事ならいい……」
志之崎は美鈴を抱えて美鈴家へ向かう。
◇◇◇
美鈴家にて。
「アンナさん……。申し訳ない。俺が弱いばかりに美鈴を護れなかった……」
志之崎は頭を下げる。
「シノさん……! すごい怪我ですよ。早く手当を……!」
アンナは驚きの声を上げる。
「コレはいいんだ。伝えたいことがある。聞いてくれ。美鈴はここ三ヶ月の記憶がなくなっている。詳細は言えないが色々と事情があってな……。頼みが一つある」
志之崎はアンナの目を真っ直ぐ見つめる。
「……何でしょうか?」
アンナは素直に応じてくれる。
「美鈴に生きる大切さや楽しさを伝えてあげてほしい。この子は両親が死んでしまい、孤独を感じることもあるだろう。それでも、アンナさんがいれば……愛してくれれば、真っ直ぐいい子に育つと思う。今までお世話になりっぱなしで、最後に頼み事をして申し訳ない。何卒お願いしたい」
志之崎は再度深々と頭を下げる。
「頭を上げてくださいシノさん。分かりました。もちろん、そうするつもりです!」
アンナが太陽のような笑みを浮かべる。
「そうか……。よかった……」
志之崎はアンナの芯のある顔を見て、その場を立ち去る。
幸せになってくれよ美鈴……。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。




