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72話 悪ふざけ? —花音Side※

 


 いつもの夜のお勉強。今は試験範囲を勉強中。

 葉月は暇そうにゴロゴロしている。携帯をいじりながらゴロゴロして、器用だなぁと笑ってしまう。


「葉月、お茶でも飲もうか?」

「ん~飲む~」


 一息入れるために紅茶を飲もう。またあの紅茶でいいかな。


 東海林先輩に前にもらった紅茶を淹れるために立ち上がって、ゴロゴロしている葉月を避けてキッチンに向かった。葉月はハチミツ2杯だからね、ちゃんと寝る前に歯磨きさせないとなぁ。


 紅茶を淹れて部屋に戻ると、葉月が体を起こしていた。携帯電話をテーブルに置いている。近くにカップを置いて、私も向かい側に勉強道具を端に避けてカップを置いた。その前に座って、紅茶を一口。これ本当いい香り。確かストロベリー味なんだよね。


「花音~。花音も見る~?」

「ん、何を?」

「この前、舞が言ってたドラマ~」

「ああ、そういえば言ってたね。んー私はいいよ」

「音出さない方がいい?」

「出しても大丈夫だよ」


 それぐらいだったら全然平気だよ。勉強の邪魔なんかにならないから大丈夫。舞が言ってたドラマね。


 ……そういえばその話をしてた時、本当に一花ちゃんと葉月は仲いいなと思ったな。


 お昼休みに、たまには2人と食べようと思って舞と一緒に中庭行ったら、葉月が一花ちゃんに抱きついてるんだもの。仲良しさんだよね。


 紅茶を飲んで落ち着いて、また勉強を再開する。葉月はドラマを携帯で再生させていた。夢中で見てるみたい。面白いのかな? ペンを動かしながら聞こえてくる音声では全く内容は分からなかった。


「花音? 花音はこういう風に押し倒されたりしたことあるの?」


 ん、押し倒される? しばらくしてドラマを見ていた葉月が、携帯を指しながら何かを聞いてきたから、横に移動して画面を覗き込んでみる。女性が男性にベッドの上で押し倒されている構図。えーと、んー……どうだろう。


「んー、妹たちに押し倒されたりはしてるけど……」


 詩音と礼音には押し倒されるけどなぁ。でも2人ともまだ体も小さいし。葉月の方は無いのかな?


「葉月はないの?」

「ん~? ないよ。このドキドキっていうのがさっぱりだね~」

「それは私も分からないなぁ……」


 中学の時はそういうのに興味がある子はいたみたいだけど。

 ドキドキかぁ。するものなのか――


「花音!」

「ん、何って、きゃあ!!?」


 いきなり覆い被さってきた葉月に、為すすべなくゴロンと床に倒れてしまう。一瞬のことで目をギュッと瞑ってしまった。


「もう、葉月……いきなり――っ!?」


 目を開けたら、ものすごく近くに葉月の顔。

 ち、近い!!

 あの綺麗な顔がもう、

 それこそ自分の視界いっぱいに広がっている。


 心臓が自然と跳ね上がる。


「へへ~。どう、花音? ドキドキする~?」


 近さと綺麗さで、たまらず顔が熱くなるのを感じた。こ、これ心臓に悪い。しかも葉月、絶対からかってる。


「葉月……さすがに……ち、近すぎる……」

「ん~?」


 ああ、もう。絶対からかってる。見ていられなくて視線を逸らすけど、無理。嫌でも視界に入ってくる。というか、体! 密着しすぎ! あ、葉月って意外と胸ある? 雨の日にハグした時は気にならなかったけど――ってそうじゃなくて! お、落ち着かなきゃ……落ち着いて、冷静に……。


「はぁ……葉月、もうどいて?」

「えへへ~。花音、顔真っ赤~。かっわい~」

「かっ……!? だからっそういうことは……」


 どうしてそういうことサラッと言うかな!? しかも間近で!! ああ、もう! 心臓うるさい!


「おい、葉月。お前、あたしのノートどこに……」


「「「あ」」」


 一瞬、辺りに静寂が訪れました。


 ……い、一花ちゃん。ノックと同時は、ノックの意味がないんじゃないかな?


 その一花ちゃんは目を丸くして、言葉を発さなかったけど、あからさまに目を逸らした。


「あーその……すまん……」


 いいい一花ちゃん!? 今、何を想像したの!? いや、その、何となく分かるけど、ちち違うからね!?


 彼女が想像したであろうことを、自分も想像してしまって、ますます頬も顔も耳も熱くなってしまった。


「コホン……葉月、一応聞いておこうか。お前にこんな趣味があったとは記憶してないが。何してる?」

「いっちゃん。何やら誤解をしているみたいだね?」

「だから一応聞いているんだ」

「あ、あの……一花ちゃん……これはね……」

「いっちゃん。これはね。ちょっとした実験なんだよ」

「ほう、そうか。実験か。何のだ?」


 2人がこの状態のままでいつものやりとりを始めてしまった。「あの、葉月も……そろそろどいてほしいなぁ?」と再度声を出したんだけど、聞いていない。


「ドラマを見ていたんだよ」

「そうか、ドラマか」

「そうなんだよ、いっちゃん。ドラマでね、主人公が相手の人に押し倒される場面があってね」

「なるほど……それをお前はマネしてみようと思ったわけか。それで?」

「押し倒して、花音で遊んでました」

「花音に迷惑かけるなって言っただろうが!?」


 直後、一花ちゃんの蹴りが葉月に直撃。吹っ飛んだので、無事に私は起き上がることが出来ました。


 葉月に説教している一花ちゃんの近くで、ホッと胸を撫で下ろす。ああ、本当。あの綺麗な顔は心臓に悪すぎる。


 一花ちゃんは説教が終わって自分の部屋に戻っていった。一花ちゃんが来てくれて助かったよ、本当に。……あれ? ノートって言ってなかった?


 説教が終わった葉月はきょとんとした顔で見てくる。あ、これ反省してないなと思ってニッコリ笑った。


「葉月? 悪ふざけはだめだよ」

「……花音?」

「何?」

「ドキドキした?」


 途端に悪戯っ子みたいに笑った葉月。

 お、思い出させないで!? また顔熱くなるから!


 全然反省してないみたいなので、次の日は一日玉ねぎ出してあげた。


 だめだよ、葉月。ちゃんと食べようね。え、もうやらない? それは良かった。自分の顔がどれだけ心臓に悪いか自覚しようか。だからそれ全部食べようね。


お読み下さり、ありがとうございます。

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