3話 デートに誘ってみようと思う!
「どう思う?」
「あのね、舞......いきなりどう思うって切り出されても、少し困っちゃうかなぁ?」
生徒会室で花音と二人、書類に目を通している時に相談したら、そう切り替えされちゃった。あれ、声に出してなかった?
「デートだよ、デート!! 葉月っちと花音、あたしと一花のWデート!」
「え、私たちも?」
「そう! だって結局葉月っちと二人でどこにも出かけてないでしょ?」
「そ、それはまぁ、そうだけど......今でも幸せだからなぁ」
葉月っちを思い出してるのか、ふふって花音は嬉しそうに笑っている。いや、幸せそうなのは見て分かるんだけどね? 教室でも葉月っちの後ろの席で嬉しそうだし、寮の部屋では常にイチャイチャしてるの見てるし。
2年生になったあたしたちは、今回みんな一緒のクラスになった。
レイラもユカリもナツキも一緒。
ユカリとナツキは葉月っちを少し怖がってたけど、ま、そのうち慣れるでしょ。葉月っちのやることははた迷惑だけど、花音と恋人になってからは、大人しく花音の言う事聞くようになったしね。花音に「だめだよ」って言われると、あの葉月っちがシュンッとするもんだから、二人も驚いていた。代わりにレイラに悪戯するようになったけど。
「それに舞。本当は一花ちゃんと二人で行きたいんじゃないの?」
「それは......まあ、そうだけどさ」
苦笑している花音にはお見通し。でもさ、花音?
「いくら葉月っちが安定してるとはいえ、やっぱり一花は葉月っちを置いて、遊びにいったりしないと思うんだよね......」
「そうだね......一花ちゃんは葉月第一で考えてるところあるものね。もうそれが当たり前なんだろうな」
花音の言うとおり、それが一花の当たり前になってる。
「もう葉月っちには花音がいるし、過保護だとも思うけどさ......でもそれで、一花が葉月っちを心配して楽しめない方が嫌だもん」
そりゃ二人で思いっきり楽しみたいよ? でもきっと一花は楽しめない。あたしにだってそれぐらい分かる。葉月っちの過去を聞いて、葉月っちが一花にとっての特別だっていうのも分かってるつもり。
過保護だと思うよ?
だからといって、一花の意思を無視したくはない。
花音が書類を置きながら、クスっと笑っていた。
「まあ、私も葉月とまたデートしたいしね。途中で別行動取れば、一花ちゃんもそこまで心配しないんじゃないかな?」
「っ!! うんっ!」
さっすが花音! 話が分かるっ! よーし、めちゃくちゃ楽しいデートに──
「でも舞? そろそろ一花ちゃんへの告白とか考えてないの?」
──どこ行こうか考えようとした時に、花音が冷静にツッコんできた。
「そ......そりゃ考えてるよ! で......でもさ......ほらその......一花はずっと葉月っちを中心に生活してきたわけじゃん? いきなりあたしが好きだって言ったところで「は?」とか言って、真面目に受け取ってくれないと思うから......だから......」
「そっか」
また花音は苦笑して、それ以上言ってこなかった。
うっ......これ絶対あたしの考えてること分かってる。自分でもかなり言い訳がましくなったのは認めるしかない。
実際......告白はしたい。
でもさ、一花はやっと普通の生活をこれから送れるってことじゃん? だからしばらくは波風立てないように過ごさせてあげたいっていうか......。
違うね......本当は怖いだけ。
いざ告白して......一花に拒否されたらって怖いだけ。
それこそ、ルームメイトも解消されてしまうんじゃないかって怖いだけ。
ちょうど生徒会室に戻ってきた九十九先輩たちと花音は話し始めた。
そんな花音を見ると、本当に凄いなって思う。
花音は行動した。
葉月っちに気づいてもらうために行動していった。
本人気づいてないと思っているけど、お菓子とかご飯のおかずとか一花に届けてたのを知ってる。スキー旅行でも手にキスしていたし。
そして、あの土壇場で告白した。
みんなの前で、堂々と告白した。
断られた時のこと考えて、怖いって思ってたはずなのに。
勇気を出して、花音はちゃんと葉月っちに伝えていた。
その花音の想いに葉月っちはちゃんと応えた。
それに比べて、あたしはいざ自分のことになると怖気づいてる。
前とは違って、葉月っちには花音がいる。
だから葉月っちを気にすることない。
本当は告白して、一花に意識してもらうチャンスなのに、
今、みんなでいる関係を壊したくないって思ってる自分がいる。
このままでいれば、一花のそばにはいられるって......ズルい考えの自分がいる。
このままでいれば、嫌われることはないって......そう思っちゃう。
一花との関係を変えたいって思ってるのに、変わらないでって思ってる自分がいるんだよ。
「舞、さっきの書類は......って、どうかした?」
「へっ!? あ、ううん! この書類でしょっ!」
花音が少し心配そうに見てきた。不安になってたの、顔に出てたかな?! やばいやばい! 心配させるつもりじゃなかったのに!!
それに、こんなのあたしらしくない!
そうだよ! あたしは一花と恋人になりたい!
花音と葉月っちみたいにイチャイチャしたい!
このデートはその為の第一歩!!
今年こそ、一花と恋人になる!!
相反する気持ちに無理やり蓋をして、怖いって思ってる自分を必死で打ち消した。
お読み下さり、ありがとうございます。




