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私たちカード同好会ですっ!  作者: あさままさA
⬛第五章「冬の団体戦! 悩めるもえと葉月が明かす真実!」
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第八話「カード同好会のクリスマス会! 謎の喧嘩勃発!?」

 団体戦の登録を無事に終え、あれからさらに数週間――学校は冬休みとなり、そして十二月の二十四日。


 ヒカリが優越感に浸ってもえといちゃいちゃする予定だったクリスマスを迎えた。


 当時のヒカリは思い込み型のリア充であったため、今年の聖夜はぼっちとなる……はずだったのだが、カード同好会でクリスマス会を開催することに。


 ――というわけで、カード同好会のメンバーはクリスマス会の会場となるしずくの自宅に集まっていた。


 ヒカリと葉月が合宿の時と同じく料理係を務めキッチンで動き回り、残りの三人に、妹から誘われ参加しているみなみを加えた四人がダイニングでパーティーの開催を待っている。


 料理係にはもう少し手が欲しいところだが、みなみも料理ができないとのこと。


 ちなみにしずくの両親は「家をクリスマスパーティーで使いたい」と言ったところ、喜んで外へデートに出かけるような仲良し。


 会場に関してしずくの自宅以外にも候補として閉店後のカードショップや超がつくほど豪邸な白鷺家という案もあったが、合宿などでヒカリの力を借り過ぎということで青山家になった。


 さて、手際よく料理を進める葉月とヒカリ。


 そんな光景へ片肘をついて視線を送っていたみなみとカレンダーに記載された「24」の数字を見比べ、しずくは口を開く。


「姉さん、今日は来てくれてありがとう。でも彼氏との約束はよかったの?」


 あからさまに不機嫌な表情を浮かべ、しずくの方を向くみなみ。


「……へぇ、アンタ喧嘩売ってんの? いつでも買うけど?」

「売ったつもりはないけど、勝ってくれるなら売ろうかな。でも、戦うなら手加減してくれるんでしょ? プロがまさか素人に本気出さないだろうし」

「へ、へぇ……言うねぇ。いいよ、手加減してやろうじゃない」


 しずくの挑発に目元をピクピクと痙攣させ、苛立ちを露わにするみなみ。


 そんな光景を見てもえは思う。


(しずくさんの性格なら真剣勝負にこだわりそうなのに、手加減しろって……やっぱお姉さん相手だと結構ふざけるんだなぁ)


 意外な一面を見た気がしてちょっと楽しくなるもえ。


「じゃあ姉さんは初期手札二枚ね」

「初期手札五枚のゲームで半分以下!?」

「あ、無理ならいいけど」

「誰も無理なんて言ってないでしょ! ……いいよ、やったげるから!」


 しずくの安い挑発に乗り、みなみはハンデを抱えた姉妹喧嘩を買った。


 部屋までカードを取りに戻るみなみに対して、しずくはどこからともなく取り出したデッキケースをテーブルの上に置く。


 最初から姉と戦いたくて挑発したようだ。


 そして、みなみがデッキを持ってダイニングに戻ってくると、本当に初期手札二枚で姉妹喧嘩が始まった。


 一方、プロプレイヤーと全国レベルの女子高生カードゲーマーが激突する隣で幽子はもえの服の袖を引き「ねぇねぇ」と話しかける。


「……もえちゃん、プレゼント交換……何、持ってきた?」

「姉妹喧嘩を前に冷静だね……っていうか、何を持ってきたかは言っちゃダメでしょ」

「……そうなんだけど、私……こういうパーティー、参加したこと……ないから。……持ってくるもの……分からなくて」


 目を伏せ、手遊びをしながら幽子は言った。


「私もプレゼント交換なんてアニメの世界の出来事だと思ってたから経験ないけど、でも誰が貰っても当たり障りないものなら何でもいいんじゃない?」

「……さらっと、言ってるけど……それって結構、難しくない?」

「あはは、確かにそうかもね」


 指摘されてもえは楽観的に笑い、それに幽子も続く。


 ただ、もえはそんな風に笑いながら、


(自分で言っといてアレだけど、誰が貰っても当たり障りないもの持ってこれてるのかな……私。カードゲーマーだらけなんだし、オーケーだとは思うけど)


 ――と、ちょっと焦りを感じていた。


 考えれば考えるほど不安になりそうなので話題を変えることに。


「そういえば幽子ちゃん、サンタクロースっていつまで信じてた?」

「……え!? ……信じてたって、もしかして……サンタ、本当はいない、の?」

「嘘でしょ!?」

「……冗談、だよ。……小学校に上がるまで……信じてた、かな」

「びっくりしたー。夢を壊しちゃったかと思ったよ」


 幽子の発言でもたらされた緊張の緩和に安堵したもえ。


 一方でしずくはカードをプレイしつつ、聞こえてきたもえと幽子の会話に疑問を抱く。


「姉さん」

「何さ」

「サンタクロースっていなかったんだね」


 いつものポーカーフェイスながら、イントネーションは明らかに落ち込んでいるしずく。


 対して、みなみは呆れたように嘆息する。


「アンタ、そういうベタな天然かますタイプのキャラだっけ?」

「いないの?」

「いるよ」

「でも、さっきもえと幽子が……」

「毎年アンタの用意してる靴下にプレゼント入れてるの、アタシだよ」

「そうだったんだ。じゃあ、サンタクロースいたね」

「ちなみに今年は何が欲しい?」

「勝利かな」

「ごめん、無理。……はい、これでアタシの勝ち」


 トドメとなるカードをプレイし、呆気にとられているしずくからあっさりと勝利をもぎ取っていくみなみ。


 初期手札二枚というハンデも、もえに通ずる強い引きを持つみなみにはあまり効果がなかったようだった。


        ○


 キッチンにて親指を噛み、苛立ちを露わにしながらダイニングへと視線を送っているヒカリ。


 対して、突如――遊んでいる四人組を恨めしそうにヒカリが見つめていたために葉月は、


(ヒカリ、流石に私たち二人だけで料理しなきゃいけない状況に怒ってるのかも……)


 ――と、「普段温厚な人がキレると数倍怖く感じるあの現象」により、親友に対して恐れを抱き震えていた。


 だが、実際はこうである。


「みなみさん、もえちゃんをいじめて……酷い! 許せないです!」


 ダイニングにてしずくに代わってみなみと戦い、プロの洗礼で目がぐるぐると回っているもえを見つめてヒカリはもどかしそうに語った。


 噂に聞いていた強運プレイヤーということで、みなみがもえに勝負を申し込んだのだ。


 いつもの「もえちゃん大好きフィルター」を介した怒りだったために、ちょっと安心した葉月。


「団体戦に出るんだし、プロと戦う経験もアリなんじゃないー? ……まぁ、なんかワンサイドゲーム過ぎて経験になってるのか分からないけどー」

「それはそうですけど……でも、もえちゃんはいじめる側でないとっ!」

「もえにそんなこと求めるのはヒカリだけだと思うけどねー……」


 相変わらず自分の芸風はしっかり守るヒカリ、そして呆れた表情を浮かべる葉月。


 とはいえ、葉月としてはそんなヒカリの言葉に思うところがあった。


(……そういえば最近、もえがヒカリをいじったりするところ見ない気がするなぁ。私には大家族顔とかいじってきたあたり、丸くなったわけじゃないんだろうけどー……?)


 ヒカリの再告白以後の二人の関係を、「返事保留状態」だとは聞かされていた葉月。


 もしかしたらそんな微妙な関係であるため、もえは少し手加減しているのだろうかとも考え、とりあえず納得しておくことに。


 そんな思考をしている最中も恨めしそうにみなみを見つめるヒカリ。


 葉月も同じように四人を見つめ、和気藹々と盛り上がっている光景にどこか満たされたような表情を浮かべる。


「こうしてみんなでクリスマスパーティーするの、今日が最初で最後になっちゃうのかなー?」


 葉月がどこか寂しさを含んだ物言いをしたからか、ヒカリは苛立ちに満ちた態度を崩す。


「……まぁ、幽子ちゃんが去年まで中学生でしたから、夜のイベントは自粛してましたもんね」

「大学に進んだらやっぱり皆と離れ離れだし、こういう集まりも難しくなりそうだなぁー」

「私と葉月も志望校が別ですから、会いにくくなりますよね」

「このまま皆とあんまり関わらなくなっていくのかなー?」


 三年生の二人には楽しい時間こそが寂しいものとなる独特の心境があったのか、同じように表情を曇らせる。


「私は……そうであってほしくないですけどね」

「あ、もえのこと?」

「それももちろんですけど……みんな大事な友達ですから。ずっと続く関係であって欲しいって思います。でも、それで前に進めないのも駄目ですよね」

「まあねー。寂しいけど、お互いがお互い抜きの日々で動けるようにならないといけないわけだからねー」


 卒業を控え、そして日々が重なるほどに現実味を帯びていく未来。


 未来に希望はあれど、どうしたって今に縋りたい弱さや甘えは抱くもの。過去になることを引き留めたくなるくらいに輝かしい日々だったからこそ、別れを前にすれば寂しくなる。


 ――だが、それはあくまでも全てが滞りなく進んだ場合の話。


「ところで葉月、受験は大丈夫そうですか?」

「いやー、わかんないねー。親には団体戦に出るのアホだって言われてて、私もそう思うしー」

「不合格だったら二人でカードショップでもやりましょうか」

「……う、うん」



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