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わたし、九尾になりました!【改訂前ver.】  作者: 依那 瑞希
第3部 レェーヴ連合編
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83話 わたしが疎ましいと言われても

「イーナ殿。大変感謝致します!」


 ノアはそう言って、ひたすらに頭を下げ続けていた。そうする以外に彼に出来る手段は残されていなかったのだろう。家族を失い、国を失い、それでもなお、心は折れていなかった。だからこそ、私はこの若者に、夢を託したくなったのだ。きっと、彼となら良い未来が描けると信じていた。


「ノアさん、王国はこの国に攻めてくると思う?」


 私の問いかけに、ノアは頷いた。ノアは確信を持っているようだった。流石に実の弟のことはよくわかっているだろう。ならば、その判断もおそらく正しいに違いない。


「奴らは、あなた方の存在が疎ましくて仕方無いのです。そうなれば、必ずや攻めてくるでしょう」


「迎え撃つとしたら、レェーヴ原野だろうな」


 ミドウは小さな声で呟いた。シャウン王国との国境からリラの街までの間に広がるレェーヴ原野。確かに戦いにはうってつけだろう。おそらく、シャウン王国もそこを主戦場に選んでくる。数と武器を生かすとなれば、見通しがよく、また平地で戦うのが、彼らにとっては有利であると目に見えている。


「レェーヴ原野で迎え撃つとしたら、こっちの被害も大きくならないかな?数では圧倒的に向こうの方が優位だろうし」


 私の発言に、皆が考えこんだ。どうにか相手の戦力をそぐ方法はないか、私は必死に考えていた。いくら、こちらが神通力を持っているとは言え、無策で突っ込んでいくというのは無謀である。そんな事をしていては命がいくつあっても足りないだろう。


「なんとか飛び道具を無力化させたいところだね。元々レェーヴなら飛空船は使えないし、銃さえなんとか出来れば被害を減らして勝利は出来るはず」


 アレナ聖教国の時とは異なり、相手はより近代的な兵器を有している。正面からぶつかっても得策ではない。人間の技術をいかに制するか、それがこの戦いの鍵となる。


「俺達夜叉族であれば、多少の銃撃なら屁でもないわ。先鋒は俺達が引き受けた!」


 そう言ってミドウは力強く答えた。夜叉の肉体強化の力、これは生かすほかない。

 すると、ミドウに続いて、シナツやミズチも声を上げた。


「大神の速さなら、そもそも攻撃もあたるまい。その前に仕留めれば問題は無いのだろう?」


「俺達も再生という力がある。問題は無い」

 

 皆の力を最大限に生かすためにはどうするのが良いか。少ないリソースで、敵を打ち破るためには……


「いっそ、先にこちらから攻めるのはどうなのかな?国内の騒動が収まらないうちの方が、敵の指揮系統も上手く機能しないだろうし」


 私の提案に、皆に一瞬動揺が走った。そして、皆が一斉に一つの懸念を思い浮かべたのだ。


「せっかく俺達の事を理解してくれる人達が現れたというのに、こちらから攻めるような事をしたら、その人達すらも裏切ることにならないか?」


 皆が、私の提案に疑問を投げかけてきた。至極もっともな意見ではある。


「これはある意味では賭なんだ。もし、仮に王国内でのクーデターに不満を持っている人が沢山居たとしたら……皆が死んだと思っていた第2王子、そして友好国が助けに来てくれた。むしろ、私達に味方してくれるひとが沢山居るかもしれない」


 もし、そうでなかったとしたら……もし、シャウンの人々が私達のことをよく思っていなかったとしたら、私達は侵略者としてモンスターと人間の間には大きな亀裂が入ってしまうだろう。そうなれば、今までやってきた事も全て無駄だったと言うことになってしまう。


「大丈夫だ、イーナ。お前はモンスターだけではなく、シャウンの人達の為にも、全力でここまでやってきたじゃないか。絶対に皆、味方してくれるはずだ」


 ミドウが私を励ますように、力強く答えてくれた。命からがら逃げてきたシャウン王国の兵士達の目にも、希望の光が灯った。


「そうですよ!イーナ様はシャウン国内で知らぬものがいない位の有名人なのです!」


 兵士の1人が叫ぶと、他の兵士達の士気も上がっていった。なんだか照れくさかったが、悪い気はしなかった。私が、他の皆の様子をうかがうと、皆も理解してくれたようだ。シナツもミズチも何も言わずに頷いてくれた。


「そうと決まれば、出来るだけ早いほうが良い。まだ国内が混乱している間の方が都合が良い。まずはカムイ、そして目標はフリスディカだ」



………………………………………



「それにしてもイーナよ、おぬしも大胆なことを考えたな」


 方針を決めた後、ミドウが私の所へやってきて、言ったのだ。


「そうかな?まあ賭と言えば賭だけど……」


「最初にあったときとは全然違うな。最初こそ、頼りなさもあったが、今ではすっかり九尾になったと言うべきか……」


 ミドウは、さらに何か言おうとしていたが、一瞬何かを思ったかのように黙りこみ、再び言葉を発した。


「なんにせよ、おぬしが味方で良かったと心から思うわい」



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『Re:わたし、九尾になりました!』
わたし、九尾になりました!のリメイク版になります!良かったらまたお読み頂ければ嬉しいです!





『memento mori』
新作になります!シーアン国のルカの物語になります!良かったらよろしくお願いいたします!




FOXTALE(Youtube書き下ろしMV)
わたし、九尾になりました!のテーマソング?なるものを作成しました!素敵なMVも描いて頂いたので、是非楽しんで頂ければと思います!

よろしくお願いいたします。
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