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【完結】異世界追想譚 - 万華鏡 -  作者: 姫嶋ヤシコ
第二部

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ただ、キミの愛が欲しい -Silvio-Ⅵ【誤算】③

 遠征部隊はひどく混乱していた。

<封印の地>にいるはずの魔王の姿が無く、更にロガールとの通信が突然途絶えてしまったからだ。


「偵察部隊とは連絡が取れるのにロガールとは連絡が取れなくなるなんて、何かに阻害されている以外考えられないわ」


 定期連絡用の魔具の異常が無い事を確認し終えたイヴォンネの言葉に同調するように、ジョエルが頷いた。


「もし<封印の地(ここ)>に魔王の姿があればただの故障だと思っただろう。……だが、魔王の姿がないと言うことは……」

「最悪な状況が想定されますね」


 ジョエルの言葉の続きを呟いたラディムは、早急に対処しなければとイヴォンネに協力を申し出、早速出された指示に従い始める。

 そんなやりとりを横目に偵察部隊へ帰還するよう命じたシルヴィオは、一人岩場に腰を下ろして状況を見守る姿勢を見せた。(手伝うと申し出た所でイヴォンネに拒否されそうだと言う理由もある)


 ……もう少し待てば"彼"が動いてくれるだろうし、僕の出番はずっと後だからここは許してもらおう。


 ラディムからやや不満気な視線を感じたが、あえて気づかないふりを決め込み、それから心配そうにこの事態を見守るユウキと視線が合うと、「心配いらないよ」と言う意味を含めてにこりと笑って見せた。(意味が伝わったかどうかはわからないけれど)


 それにしても、魔王が<封印の地>にいない事は想定外だった。

 魔王が<封印の地>から出るなどと言う事は、これまで一度も無い。

 故に、王も他の騎士達も、シルヴィオさえも魔王は必ず<封印の地(ここ)>にいるものだと思い込んでいたのだ。


 しかし、今回の討伐では魔王はこの場所には(とど)まっていなかった。


 三代目勇者(アイリ)の施した封印を完全に破った後、魔王はすぐにロガールへ向かったのかも知れない。(遠征部隊と鉢合わせをしなかったのは、恐らく遠征隊が迂回した道を構わずに突っ切って行ったからだろう)


 しかし、魔王は何を目的としてロガールへ乗り込んで行ったのか。


 よく考えて見れば、魔王の根本的な存在理由をシルヴィオは知らない。

 "邪神"と契約し、運悪く"魔王"と呼ばれる存在になってしまったとは言え、彼が今までロガールに直接乗り込んだ事は無かったし、他の国を襲い滅ぼしたと言う記録も無いのだ。

 "魔王"はこの世界を脅威に晒すと漠然的に語られてはいるが、実際の所、彼がどんな脅威となったのだろうか。

 確かに"魔王"によって生み出された魔物の存在もいくつか認められはしたが、その脅威に直接晒されているのはロガールとロガールの恩恵を受けている周辺の村や町だけだ。(ディーノが持って来た報告書に軽く目を通しただけだが、死骸が消える魔物も隣国では目撃されておらず、ロガール及びその周辺にしかいないと書いてあった)

 今まで"魔王"が個人的な恨みを(勇者)や国に対して持ち魔物を送り込んでいると仮定していたが、そうでなかったとしたらどうだろうか。


 ……個人的な恨みなんかじゃなくて、別の目的を成し遂げると言う理由があったとしたら?


 三代目勇者(アイリ)のノートには、「"邪神"は強い願いを持つ魂を好む」と記されていた。


 "魔王"は(勇者)がこの世界に来るよりも先にやって来た異世界の人間で、(勇者)との因縁が出来る以前に"邪神"に願いを叶えてもらっているはずなのだ。(邪神は契約を交わす瞬間に願いを叶えてくれる)

 だとすれば、"個人的な王への恨み"で動いていると言うのは違う気がする。

 本当に(勇者)へ恨みがあるならば、それを晴らす事を願うだろう。

 そして、その願いは即座に叶えられたはずだ。

 しかし、この世界に来てもいない(勇者)をどうやって恨む事が出来るのかと言う矛盾が発生するのだ。

 どうしてこんな単純な事に気が付かなかったのかと、シルヴィオは自らの間抜けさに頭を抱えた。


 ……って事は、"魔王"の目的は世界を滅ぼす事でも王を破滅に追いやる事でもないのか?


 では、何故"魔王"はロガールへ向かったのだろう。

 シルヴィオの知る限り、思い当たるのはただひとつ。


 セシリヤ・ウォートリー。


 "魔王"の呪いをその身に受けた彼女しかない。

 "魔王"が彼女とどんな関係があったのか、彼女に何をする気なのかは分からないが、何となく悪い様にしたい訳ではないのではとシルヴィオの直感が言っている。


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