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【完結】異世界追想譚 - 万華鏡 -  作者: 姫嶋ヤシコ
第二部

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これが、戦場なのだ -Yuri-Ⅴ【戦慄】③

 東側のエリアは第三騎士団が警護していると聞いていた為、安心して立ち寄る事ができる。

(ジョエルとディーノの人柄のお陰で、安心と信頼の第三騎士団と言うイメージがあるからかも知れない)

 東側のエリアも北側のエリアと変わらずに混み合ってはいるが、時折見かける騎士達が上手く人を誘導している為に混乱もなく、平和そのものだった。

 団が違えばこうも対応が違うのかと感心しつつ、ここでなら少し露店も見て回れるかも知れないとユウキに声をかけようとした直後、


「君は医療団の……、ユーリくんだったね?」

「ジョエル団長っ! お、お疲れさまですっ!」


 思いもよらない人物から声をかけられ、ユーリは条件反射で畏まり深々と頭を下げる。

 下げた頭を上げるようにと言われ恐る恐る上げれば、ジョエルはユーリの後ろをじっと見つめており、すぐさまその視線の先にユウキがいる事に気づいたユーリは、周囲を警戒しながらユウキをジョエルに紹介した。


「あの……、こちらが勇……じゃなくて……えっと、ユウキ様です」


 うっかり公衆の面前でユウキの事を"勇者"と言いかけたがギリギリの所で堪えると、察したジョエルもそれに合わせてくれる。

(本当に相手がジョエルで助かった)


「お初にお目にかかります、ユウキ様。第三騎士団長のジョエル・リトラと申します」

「さ……、佐瀬 優希です! これから、お世話になります! 迷惑をかけないように頑張りますので、よろしくお願いします」

「そんなに気負わずとも大丈夫ですよ。ユウキ様のお力になれる事を、第三騎士団としても光栄に思います」


 優しく語り掛けるジョエルの口調はあっと言う間にユウキの緊張をほぐし、会話もスマートにリードして弾んでいた。

 元々持っている雰囲気とは言え、会ってものの数分で相手の緊張や警戒心を解いてしまえるのは、ジョエルか (タイプは全然違うけれど)シルヴィオくらいだ。

 どちらかと言えば人見知りのユーリには、絶対に真似できない芸当である。

 ジョエルと同じようにスマートに優しく語り掛ける自分の姿を想像し、あり得ないと人知れず頭を振っていれば、ユウキが辺りを見回しているのに気が付きどうしたのかと訊ねた。


「あの……、眼帯をした方はいらっしゃらないんですか? 先日、とてもご心配をおかけしてしまったので、改めてその時の謝罪をと思ったんですが……」


 以前、ユーリが昼食を準備している間に部屋からいなくなってしまった時の事を指しているのだろう。

 あの時は本当に生きた心地がしなかった。

 最終的にはシルヴィオと共に城下に出ていたらしく無事に戻って来たが、セシリヤがディーノと偶然会っていなければ、大事に発展していたかも知れない。

 ユウキも反省しているようで特に咎めることも無かったが、本人はマルグレットやセシリヤを始め、心配をかけてしまった人達に律義に謝罪して回っていた。

 きっと、この機会にディーノにも直接謝罪をしたいと思っていたのだろう。

 けれど、


「申し訳ありません。ディーノなら見廻りへ行っております。まだ戻るには時間がかかりそうですが……、呼び戻しましょうか?」

「い、いいえ、大丈夫です! お仕事の邪魔をしてはいけないので、また今度にします」


 残念ながらディーノとは会えず日を改める事にしたユウキにユーリが声をかけると、ジョエルに長々と引き留め話をしてしまった事を詫び、持ち場へ戻って行く彼の後ろ姿を見送った。


「今日は会えなくて残念でしたけど、ディーノ副団長には剣の稽古についてもらえる事になっていますし、気を落とさないで下さい」


 ユウキの予定表の中にディーノの名前もあった事をさり気なく伝えてその場をフォローしたユーリは、先程よりも混み始めた東側のエリアを抜けて南側のエリアを目指し歩き始める。

 ここに来るまでの間、ゆっくり城下を案内するどころか露店すらも見ていない事に気が付き、今度こそユウキへしっかり城下を案内しようと振り返れば、


「やっほー、ユウキ! 建国祭、楽しんでる?」


 これまたタイミング悪くエレインがユウキに声をかけ、更に彼の腕はしっかりと彼女によってホールドされていた。

(しかし、ユウキと呼び捨てにするとは、流石エレインである)


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