446話 10/25 57人目の客
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落ち着いてきたか。新規の客が来るかもしれない時間帯だな。まだまだ新規の客には来て欲しい。売り切れにはほど遠いからな。もっともっと売れていって欲しいんだよ。雷属性が残るって感じになって欲しいんだよな。売り切れは歓迎する。
客層も比較的マシだしな。変なのは少ししかいないんだよ。少しだけでも困るんだけどな。クライヴ君1人に任せたいんだけど、まだまだってなるんだよな。
訳の分からない系が特に苦手なんだよな。話が出来る人ならいいんだけど。ジョージとかなら話せると思うんだがね。積極的に話しかけなくても、向こうから話しかけてくれるしな。
難しい人はどうしても居るんだよ。会話にならない人とかな。口数が少ないのは何とかなるんだよ。会話のドッヂボールが始まるのもまだいい。バッティングセンターになるのが一番の問題なんだよな。言ったことに対する答えが意味不明なのが駄目だ。
会話は出来て欲しい。そういう客ばかりだといいんだけどなあ。クライヴ君も魔力の相性が合っている人との会話くらいはした方が良いと思うんだよね。
そうだろう? どんな魔法が良いのかなんかを聞かないといけないんだよ。難しい事じゃない。客の要望を聞いた方がいいんじゃないのかって話なんだ。
クライヴ君に、魔法陣魔法を改良できるのかって問題はあるんだけど、出来ないことはないと思うんだよ。文字列閥よりは難しいが、その他の派閥よりは簡単だからな。
根幹さえ変えなければ、ある程度の改変は可能だと思っている。その辺もそろそろ教えていきたいんだけど、会話がなあ。それが出来ないと要望も聞き取れない。客の求めているものと違うものが出来ても仕方がないんだよな。
客が欲しいと言ったから。これを叶えてやるのも魔法屋の仕事だと思うんだよ。オーダーメイドって奴だな。他の客に出す必要はない。その客限定で売ればいい。
そういう魔法も有りだと思うんだよ。客個人個人で使いたい魔法は違うだろうからな。威力か範囲か数かそれ以外か。色々と条件はあるんだよ。それを聞いて何とかできないかを考えるのも仕事の1つだと思えばいい。
そうすることで閃く事もあるんだよ。客との会話で閃く事もある。筋肉魔法……じゃなかった。身体能力強化魔法も会話から出てきたみたいな感じだからな。
思えば何で思い付かなかったのかが解らない魔法なんだよな。簡単に言うと、バフ系統の魔法なんだよ。状態異常魔法があるんだから、思い付いても良かったんだよな。
状態異常魔法はデバフ系統の魔法だ。じゃあその反対のバフ系統の魔法もあってしかるべきだと思うんだよな。どうして思いつかなかったのか。これが解らない。
視野が狭いと言われればその通りだ。私の視野はそこまで広くはないと言う事なんだよ。もっと能力のある奴を転生させるべきだったな。もし神様が居たとしたらの話だが。
私では難しいぞ。天才でもない。英才でもない。極めて普通、凡人だ。凡人には凡人なりの意地ってものがあるが、天才には敵わないし、英才にも負ける。所詮はその程度の才能しか無いのだよ。無いものを欲しがっても仕方がないんだけどな。
身体能力強化魔法は効果次第では爆発的に広がる可能性があるんだよな。前衛が強化されると言う事は、もの凄い事なんだよ。単純に考えたら、怪我率が下がるのと同じことだからな。
強くなる分、力を持て余す可能性は無い事も無いんだが、一部を強化するというよりは、全体的に強化するという感じになっている。聴覚と嗅覚がもの凄く良くなるとは思うんだけど、それ以外は均等に能力が上がるはずだ。恐らくだがという所なんだが。
流行れば、もの凄い事になるはずなんだよな。1回しか使えない前衛が使っても良い事になるんだからな。そうなんだよ。それが一番の利点なんだ。魔法使いが使う必要が無いんだよ。
前衛でも、魔法を1回だけ使えるという者はいる。割と多くいるんだよな。2回という人もそこそこいる。けれど、それでは魔法使いとしては使えない。
少なくとも3回以上使えないと、魔法使いとして認めては貰えないんだよな。戦闘が1回2回で終わればいいんだが、3回4回と続いて行くのが普通なんだよ。
だから、少なくとも3回以上が魔法使いの基本だ。それ以下の人材は、実は結構な数が居るんだよ。魔法屋にも魔道具屋にもなりたいとは思ってもらえないんだけどな。冒険者になってしまうんだよなあ。もっと魔法屋に来てくれてもいいんだが。
2回でも歓迎するぞ。やれることは色々とあるからな。1回は……流石に難しいかもしれないけど、雇用はする。給金で不満が出るかもしれないけど、雇用は出来るぞ。
どんどんと魔法屋の従業員を増やしていきたいからな。まだまだ募集中である。リアムが来てくれるかもしれないとはいえ、まだ3人。30人くらいは欲しい所なんだよ。
カランカラン
「いらっしゃい。ゆっくりと見て行ってくれ」
「いらっしゃいませ!」
「ふむ。ノラが言ってた魔法屋とはここか。確かに解りにくい。不思議な魔法を使っていたが、ここの魔法で間違いがないんだろう? 店主よ」
「ふむ、ノラがというと、あのノラの事だとは思うんだが、普通の魔法屋では無いのは確かだな。特殊な魔法だとは思うぞ。今までの魔法から考えるとな」
私はそれよりもノラから聞いたと言う事の方が驚いたけどな。あのノラだぞ? 饒舌に話す姿が思い浮かばない。必要最低限しか話さないノラが良く喋ったな。
そして、いかにも厳ついって人が来たな。クライヴ君の顔が固まっているのが解る。結構いい歳だと思うんだよな。もしかしたら、もう少しで引退かという感じの年齢だ。まだまだ元気そうに見えるが、結構な歳だぞ。足腰が心配になってくるな。
「む? これはなんだ? いや、紐か。……なるほどな。そういう事か。面倒だが有効だな。だが、面倒なのは頂けない。そうさな。それであれば……店主よ、これは魔法の識別をしていると見ていいんだろう? この紐で誰の魔法か解る様にしてある、そうだろう?」
「その通りだ。面倒なのは仕方がないが、混ざる方が問題でな。出来れば改善したいとは思っているんだが、改善策が思い付かないんだ」
「改善策ならある。皮紙の端に穴を開ければよい。そこに紐を通せ。そうすれば混ざらなくなるだろう。穴を開けても魔法は使える。そうすればわざわざ縛る必要もない」
「……そうか。穴を開ければ良かったのか。それには気が付かなかった。有り難くその案を採用させてもらう。それと名前を教えてくれないか? クランは金を賭ける者で狩場は平原だったと思うんだが、名前は知らないからな。なるべく客の名前と顔は一致させておきたいんだ」
「素直な事は良い事だぞ、店主よ。若者は柔軟でないといかん。そしてわしだったな。わしはウバンジャだ。老害が喋っていると思ってくれればいい」
「先人の言葉には耳を傾けるべきだ。同じ過ちをする必要はないからな。出来れば失敗の事も教えてくれると嬉しい。その道を通らない様にする事は出来るからな」
「ふん。解っているじゃないか。まあいい。ノラの奴が面白い魔法を使っていたんだ。こっちも試させてもらおう。これを頼む」
「ああ、試してみてくれ。クライヴ君、会計だ」
「はい。中銀貨1枚になります。……丁度頂きました」
「毎度どうも。またどうぞ」
行ったか。穴を開けるのは盲点だったな。それは凄く良い。穴を開ける道具はあったはずだ。今日中にも全部の魔法をそうしてしまうとするか。
時間がかかるだろうが、仕方がない。格段に見やすくなるからな。それの方が絶対にいい。紐を解いて括ってを繰り返すよりは、断然いい。流石の知恵だな。直ぐに出てきたところが凄い。長生きは出来るのであればしてもらいたいな。




