366話 10/17 ナターシャ来店
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とりあえず指導は上手くいっているようだ。無事に全員が粉になった簡易スープの素を作れたという報告があった。ただ今回は習熟のために、沢山の骨を貰って来た様で、まだまだ作るそうだ。
作った分は、スラムでの炊き出しに使うらしい。教会が主動になって炊き出しをしているらしいんだよな。教会としても信者の獲得は必要な事だから、やるのは当然といった感じだろうか。
懸念されることといえば、教会勢力にワイルドボアの骨でスープを作っていることがバレるとどうなるのかって事なんだが、気にしても仕方がないからな。バレても仕方が無いとは思う。
この粉にする工程を知られなければ良いんだからな。粉にするのは、魔道具で出した水を使わなければならない。別に普通の水でも良いのは良いんだが、もの凄く魔石を使うからな。
この秘密さえ守って貰えれば、店が機能しなくなるというのは無くなるだろう。というよりも、恐らくだが100年もすれば同じような店が出来ると思っている。30年くらいかもしれないが。
真似されるのは仕方が無い事なんだよ。絶対に真似できないものは無いんだから。商売に出来る内に商売にする。売れなくなったら撤退する。それまでに利益を積み上げていかないといけない。
最低でも元は取るつもりだからな。1年も営業すれば大丈夫だろうとは思うんだが。試算では、結構な金になる事が解っている。あくまでも試算の範疇ではあるが、1年もすれば十分に利益を取り返せるところまでいくだろう。10年くらいもってくれれば良いと考えている。
その10年の間に、他の副業を考えないといけないのが辛い所ではあるんだがね。何か良い副業は無いものか。出来れば、長く続けられるものが良い。利益もそうなんだが、直ぐに真似されるのはな。
中々に難しい所なんだよな。真似される前提で副業をするわけなんだが、真似されても利益を出すようにするには、ブランド化があげられるんだが、携行食のブランド化は無理があるだろう。
美味しければ、何処でもいいと思うんだよな。美味しければというのが一番のポイントなんだが、ワイルドボアの骨だけでこれだけ美味しいんだから、簡単に真似をされると思う訳だ。
むしろ、教会勢力が店をやり始めるまであるからな。私の個人的な考えで申し訳ないんだが、聖職者というのは金の亡者であるという認識なんだよ。特に上の立場である程に。
高潔であれとは思うんだが、教会勢力がそもそも6神教の1強状態なんだから、権力者と大差がないんだよな。都市全体の市民が自分の信者だと考えていると思うんだよ。
そう、教会勢力の上の人間は、信者は自分の信者だと勘違いをしていると思っている。あくまでも6神教の信者であって、個人の信者では無いというのに勘違いをしていると思っている。
心ある神官もいるとは思うんだが、全員が全員良い人だとは思わない。むしろ私利私欲の人間が多いと思っている。私の私見だがね。欲深いものが神の名を使って良い様にしていると思っている。
カランカラン
「いらっしゃい。ゆっくりと見て行ってくれ」
「いらっしゃいませ!」
「こんにちは! また来ましたよ。思ったよりも良い魔法だったんだよね。だから今日も買わせてもらおうかなって。ちょっと早めに来てみたんだ」
うむ。元気があってよろしい。……苦手なんだけどな。元気があるのは良い事なんだが、テンションが追いつけない。こう見えて、中身はおっさんだからな。陽キャでも無かったし。
まあ、客である事には変わりはないんだけどな。紐を括ってくれないんだが。こっちに渡してくるのは変わらない。良いんだけどな。買ってくれれば。お客であれば文句を言うつもりはないんだ。
「そう言えば、来店をしてくれたという事は、魔力の色が合っていたという事だとは思うんだが、どんな感じだったのかを聞いても良いか?」
「ん? ああ、魔力の癖ね。う~ん。店主さんのは普通だったかな。書いてある通りに使えたよ。でも弟子さんの魔法は数が多かったような気がする。威力は比較対象が無いから解らないけど」
「なるほどな。私の魔法とは相性が普通で、弟子の魔法とは書いてある以上の事が起こったと、そういう事だな? 出来れば、弟子の魔法を優先的に買っていってもらいたいんだが」
「え~。それはちょっとなあ。書いてある通りに発動してくれる方が良いんだよね。書いて無い事が起きるって事は、良い事も悪い事も起きる気がしてさあ。書いてある通りの方が好きなんだよね。だから、赤い紐のは買わないかな。多分今後も同じだと思う」
……珍しい考え方なのかもしれない。確かに書いてある通りに魔法が発動すれば、自分にあっているというのが解る。だが、合いすぎるというのも変な感じなんだよな。
書いていないことが起きているという事だというのは正しい。良い方向に、上振れているという事なんだから、その魔法を使った方が良い様に感じるんだが、絶対にそうだとは、断言できない。
書いていないことが起きるという事は、必ず上振れるとは限らないと思うのも解らんでもない。今回は良かったが、次回は駄目かもしれないというのも、気持ち的には解らなくはない。
その辺は、研究が進んでいない分野だからな。魔力の色を確かめる術が、今の所私が秘匿している鑑定魔法くらいなものだからな。全く進んでいないというのも頷ける。
「解った。それであるのであれば、私の魔法を買っていってくれると助かる。数は多いからな。選んで買っていってくれると嬉しい。使い勝手は良かったはずだからな」
「そうなんだよね。形が変なのはあったんだけど、使い勝手は良かったんだよね。だから買いに来たんだし。でもなんでこんな変な形にしているの? 普通じゃ駄目だったの?」
「まあ、作り方が特殊でな。他とは違うんだよ。詳しくは言わないが、私の作り方だと形はこうなってしまうんだ。形を変えるには、威力なんかを下げないといけないからこのままだろうな」
「う~ん。威力が下がっちゃうのか。それはあんまり良くないね。仕方がないのかなあ。よし! 気にしないことにするよ。今日はこれだけ買っていこうかな」
「ああ、クライヴ君、会計だ」
「はい。中銀貨6枚になります。……丁度いただきました」
「毎度どうも。またどうぞ」
行ったか。考え方次第なんだな。上振れる可能性があると言うだけで、下振れる可能性もあるんじゃないかと思う、そんな考え方なんだな。気持ち的には、解らんでもないんだが。
必ず上振れるとは言えないんだよな。恐らくそうなるだろうという経験則でしかない。確たる証拠は無いんだよ。だから選ばない。そういう選択もあるって事なんだな。勉強になった。




