前へ目次 次へ 30/38 凍える夜の子守歌 教えてあげたい、君に。 溶け込む春の陽射し、甘い花吹雪。 うとうとと、夢の中に見え隠れする子守歌。 絡めた足の温度、肌の柔らかさ。 瞼閉じたままの君を、そっと連れ去りたい。 隠しておきたい、君を。 凍てつく外の風に、吹き散らされる粉雪。 ひそひそと、壁の外で囁かれる井戸端会議。 絡み付く手の強さ、音のぬめり。 瞼閉じたままの君を、そっと連れ出したい。 行かないで。ここにいて。 向こうの水はまだ苦い。 君が1人で立てるまで、僕が手を引くから。