表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スぺ先輩たちの夏休み  作者: 寿々喜 節句
スぺ先輩たちの夏祭り
16/21

狭山新は咲かせたい

「今日さ、東人たちもお祭に来るんだって」

 私は秋津駅で、小花ちゃんとみーちゃんと合流するなり言った。

「なんかいい感じじゃん」

「ほんとあっついわ。ってか“たち”って他に誰?」

「立家君っぽい」

 小花ちゃんの質問に答える。

「げ、立家君か……」

「なんかマジウケるんだけど。小花、なんかほんと立家君のこと苦手だよね」

 みーちゃんの意見に同意。

「うーん。なんかね。苦手なんだよね」

「でもさ、頼むよう。小花ちゃん!」

 私としては、花火を好きな人と一緒に見たい。

 もちろん小花ちゃんとみーちゃんと一緒に見るのも悪くはない。でも今はこの気持ちが大きい。

 私の気持ちを花火のように咲かせたいと思っている。

「わかったよ」

 小花ちゃんはいつも優しい。そして頼もしい。

 そう思うと立家君って見る目はある。

「なんか面白いから、私もいいよ」

 二人から了承を得ると、私は「ありがとう」と伝え、スマホを取り出して東人にラインを入れる。

――後で合流しよう。二人からオッケーもらった。どこにいる?

 送信するとすぐに既読が付いた。

 少し待つと返信がきた。

――今歩いて向かってるところ。頃合い見つけて合流しよう。

――わかった。

 既読が付いたのを確認してスマホをしまう。

「あとで合流ってなった」

「はいはい。それじゃあそれまで三人で楽しもう」

 小花ちゃんが右手で私の肩を、左手でみーちゃんの肩を組んで「さあ行きましょう」と歩き出した。



  □◇■◆



 今日の衣装は、立川のららぽーとで三人で一緒に買った浴衣だ。

 フランクフルトを食べる時、ケチャップとかマスタードがこぼれて浴衣についちゃわないように気をつけた。

 他にも綿あめとか、スーパーボールすくいとか、射的をして楽しんだ。

 スーパーボールすくいに関しては、みーちゃんが「なんかうける」とか言いながらたくさんすくっていた。

 射的は弾が景品に当たったのにもかかわらず、ぴくりとも動かなかったので、お店を離れてから三人で「詐欺だね」と言ってツイッターに晒そうか検討した。結果としては、おとがめなしにしてあげた。

 次はどこに行こうかと話している時、私のスマホが揺れた。

 確認すると、東人からだった。

――そろそろ合流する?

 私はラインのことを二人に伝えた。

「ねえ、そろそろ東人たちと合流しない?」

「えーもう?」

 小花ちゃんの返答にみーちゃんが笑っていた。

「いいじゃあん」

 私は小花ちゃんの腕を掴んでゆさゆさする。

「なんかうける。私はいつでもいいよ」

「しょうがないな」

 小花ちゃんも許してくれた。

「ありがとう、二人とも」

 私はお礼を伝えると、スマホを取り出す。

――うん。合流しよ。

 私は東人に返事を送った。

 すると東人からすぐに合流場所が送られてきた。

 小花ちゃんとみーちゃんにも伝え、目的の場所へ移動することにした。



  □◇■◆



「おーい、東人!」

 休憩スペースとなっているエリアのドリンク売り場の前に、甚平姿の東人が立っていた。

 かっこいいなって思った。普段着もよかったけれど、甚平姿は甚平姿で特別感もあって、より一層かっこよく見えた。

 隣には立家君がいたけれど、なぜか普通の服だった。

 私に気が付いた東人がこちらに手をあげて近づいてきた。

「久しぶり、新。浴衣姿も可愛いね」

 合流早々、東人が言った。

「あ、ありがとう。東人も甚平かっこいいよ」

 東人に浴衣姿を褒められたことにも、そして私自身の発言にもなんだか恥ずかしくなった。

 東人から視線をそらしたら、私たちを見ている小花ちゃんとみーちゃんに気が付いた。

「なんか恥ずいんだけど」

「うんうん、こっちまで熱くなっちゃう」

 ニヤニヤしている二人。

「ちょっとうるさい」

 私は二人を両手で押すように抵抗した。

 その時みーちゃんのスマホが鳴った。

「もしもし? あーそうなんですか? なんかうけますね」

 みーちゃんの敬語を初めて聞いたかもしれない。相手は誰だろう。

 そんなことを思っていたら、なぜか普通の服の立家君が小花ちゃんに絡んでいた。

「金井さん。浴衣姿、かわいいね」

「あ、ありがとう……。立家君は、なんて言うか、普通だね」

「え、あ、うん。ちょっとね……。それより、射的でもしない?」

 立家君が積極的に小花にアピールしている。

「いや、やらない」

 小花が首を振り、きっぱりと断る。

「楽しいよ?」

「いや、やらない」

「景品が取れたとき気持ちが良いし」

「いや、やらない」

「騙されたと思ってさ」

「いや、やらない」

「祭りでじゃないとめったにできないし」

「いや、やらない」

「俺、結構自信あるんだよね」

「いや、やらない」

「そ、そっか……」

 残念ながら立家君が折れたようだ。

 しかし、私たちはさっきの経験から、ここの射的は詐欺だと疑ってしまったのだ。

 これは断られても仕方がない誘いだ。

 もしかしたら射的以外だったらよかったかもしれないのに。

 立家君の選択とタイミングが悪かったとしか言いようがない。

 そんなことを思った時だった。

「大塚さん、偶然ね。あら、新さんに小花さんもいるじゃない。久しぶりね」

 聞き覚えのある、私にはドキッとする鋭い女性の声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 小花ちゃんの返しwwwwww 「いや、やらない」しか言ってない! そしてやはり立家くんのメンタル強し。 最後は折れたけど、頑張るなぁ、少年。 いい子だから、違う恋で報われて幸せになってほ…
[良い点] めっちゃ断られる立家くん笑。 タイミングの悪さがすごいですね( *´艸`) そして、ここに乱入してくるのですね! これは乱戦必至!
[良い点] 仲良し女の子三人で浴衣姿とは華やかですね⸜(*ˊᗜˋ*)⸝ みーちゃん、スーパーボールすくいうますぎっ!笑 射的は本当に動かないですよね*\(^o^)/* アニメとかで主人公がカッコよく倒…
2022/04/04 06:30 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ