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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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種族の神秘


「サンダーバードは……っと、ここで突っ立って話すのもな」


 ラシルドはちらりと機械兵の残骸に目を向ける。


「悪いが、お前さんが倒したその機械兵の残骸を譲ってくれないか?」

「残骸を?」


 俺も視線を残骸へと向ける。

 壊れて動きそうもない。

 けれど、分解すればまだ使えるところがあるのかも。


「あぁ、どうせ俺には使い道がないしな。友好の印だ」

「助かる。おい、お前ら。回収だ」

「あいよー」


 ラシルドの部下たちは手慣れた様子で残骸を掻き集める。

 専用の大きな麻袋のような物に詰め込んでいく。

 その作業は手早く済まされた。


「よし、終わったな。なら、歩きながら話そうや。なに、街までそう遠くない」


 たしかに街まではあとすこしと言ったところだ。

 逆に言えば街の近くで機械兵が暴れていたことになる。


「あぁ、案内をよろしく」


 俺たちは街に向けて移動を開始した。


「サンダーバードが現れたのは、世界に天変地異が起こった後のことだ」


 天変地異。

 恐らく地球と異世界が繋がった際のことだろう。


「俺たちドワーフはそのころ、天変地異によって土の中から露出した古代文明の遺物を掘り起こしてた。大きいのから小さいのまで、用途のよくわからねぇ物までな」

「あの太陽もそうなのか?」

「ん? あぁ、あれか。ああそうさ、お陰で昼夜の概念を維持できてる」


 古代文明の遺物。

 オーバーテクノロジー。

 オーパーツ。

 なかなかどうしてロマンのある響きだ。


「だが、その掘り返した遺物どもがある日、俺たちに牙を剥いた」

「……それはどうして?」

「サンダーバードに操られたから、だ」


 サンダーバードに操られた、だって?


「機械兵が俺たちを襲うのもそれが原因だ。奴が放つ紫電が遺物の制御を乗っ取りやがるんだよ」

「そんなことが……」


 これがごく普通のロボットだったなら壊れて仕舞いだったのだろう。

 だが、古代文明の遺物は機械技術と魔法を合わせたもの。

 この魔法という部分が雷の魔力と干渉し合い、制御機構を奪ってしまう。

 これはただの憶測だが、とにかくこれでラシルドの言葉の意味がわかった。

 宿敵と呼びたくもなる。


「遺物を奪ったサンダーバードは機械兵を使って狩りをしてる。てめぇで雷を落とすより、よっぽど安全で効率がいいからな」

「違いないな」


 自身に絶対忠誠の手駒が無数にいて意のままに動かせるのだ。

 空を飛んで獲物を見つけ、雷を落として仕留める。

 そんなことをしなくても数多の機械兵で人海戦術をすればエサには困らない。


「お陰でこの周辺は魔物が狩られ尽くされちまった。仕舞いにゃ家畜にまで無視できない被害が出てる。このままだと俺たちドワーフは遠くない未来に飢え死にだ」

「ゆゆしき事態だな、それは」


 筋骨隆々な肉体を持つ種族だ。

 肉体の維持に特によく飯を食うだろう。

 いまはまだ持ちこたえられているが、それにもいずれ限界がくる。

 そうなる前にサンダーバードを討伐しなければならない。

 これは急務だ。


「だが、そんな時にお前さんが現れた」


 ラシルドは俺の肩に腕を回す。


「あの数をたった一人で殲滅させるなんて凄い奴だぜ、お前さんは!」

「はっはー、くぐってきた修羅場の数が多いもんでさ」


 いったい何度、死にかけたことか。

 そのたびに命を繋いでなんとか前に進めている。

 色んな人に助けられた。


「お前さんがいれば百人力だ。サンダーバードの討伐にゃ、存分にその力を振るってもらうぜ」

「あぁ、任せてくれ。人一倍働いてやる」

「そう来なくっちゃな! がっはっは!」


 快活な笑い声が荒野に響く。

 そうして俺たちは街の前まで到着した。


「おー」


 街は大きな城壁に囲まれていた。

 所謂、城郭都市というものだ。

 見上げて見ると、その無骨ながら物静かな佇まいに思わず声が出た。

 出入り口である大きな門の前には武装した門番が配置されている。

 ラシルドはまず彼らの元に赴いた。


「おや、お疲れさんです、兵長――って」

「なんです? その後ろの骸骨野郎は」


 当然の反応が返ってきた。


「さっきこいつに命を助けられてな。意思疎通が出来るし、敵意がないことはこのラシルドが保証する。だから、街へ入れてほしい」


 ラシルドがそう言うと門番たちは顔を見合わせた。


「まぁ……兵長がそう言うなら」

「でも、なにか起こっても知りませんからね、俺たちは」

「あぁ、それでいい。責任は俺がもつ」


 そこで会話が終了し、しばらくして門が開く。

 その先に広がるのは石造りの街並みだった。

 石畳の地面に、石造りの建築物。

 赤い屋根が特徴的だ。

 そのどれもが大きく、高身長のドワーフに合わせられていた。


「――ん?」


 しかし、ふと違和感を覚える。


「なぁ、ラシルド」

「どうかしたか?」

「いや、やけに子供が多いなって」


 異常なほどに子供が多い。

 街行く人々の半数ほどが子供だ。

 それも人間でいう中学生くらいの身長ほどしかない少女ばかり。

 大人の男性はいるものの、大人の女性がいないのも引っかかる。


「子供? あぁ、そうか。ドワーフ以外にはそう見えるんだな」

「どういう意味だ? それ」

「ドワーフの女はあれで成人なんだよ」

「なっ!? ――マジか」


 見た目が子供にしか見えないような少女の全員が成人?

 だって、ラシルドやその部下たちはどう見ても二メートル以上ある。

 男女で体格差がありすぎるだろ。


「はー」


 種族の神秘だな。

 いや、でもそうか。

 ドワーフという言葉には小さいという意味が含まれていたはず。

 この場合の小さいとはドワーフの女性を差していたのか。


「というか、大丈夫なのか? 俺が街に入って」


 流れで門をくぐったけれど。


「まぁ、大丈夫だろう。ちょっと通りを抜けるだけだ」


 ラシルドはそう言っていたけれど。


「キャッ、なにあれ!?」

「ま、魔物よ! どうして街の中にっ!」

「で、でも、ラシルドさんが側にいるぜ」

「どういうこった、これは」


 案の定というべきか、すぐに騒ぎになった。


「あぁー……こいつは不味いなぁ」

「さっき大丈夫って言ったのに……」

「悪い。ありゃ嘘だった」


 嘘だった、で済む問題ではないんだが。

 やっぱり豪快じゃなくて間抜けなのかも。


「どうしたもんか……」


 みんなが俺を避けるようにして様子を窺っている。

 捕まらなかったことは幸いだったが今度はこうなるのか。

 まぁ、エルフの里では長老に認められるまで縄で繋がれていたしな。

 こうして自由の身で街に入れば、こういうことも起こるだろう。

 そうしていると、どこからか笛の音が聞こえてくる。

 次第に大きくなるそれは人混みを掻き分けて俺たちの前に現れた。


「魔物が出たと通報があった!」

「みなさん、はやくこの場から離れ……て?」


 恐らくは警備兵であろう人物の二人組。

 彼らはラシルドの姿を見て、ぽかんとした表情をみせる。


「ラ、ラシルドさん。こいつはいったい」

「説明してもらえます? どうして魔物がそこにいるのか」

「あぁ、そいつは構わねぇが」


 ちらりと周囲に目を向ける。


「ここじゃ騒がしくて敵わない。悪いが駐屯所に行こう」

「それはこちらとしてもありがたいですが、大丈夫なんです?」


 警備兵が俺を見る。


「こいつに害はないし、敵意もない。心配しなくても大丈夫だ」

「……ホントですか?」

「ラシルドさんの大丈夫は当てにならないからなぁ」


 まったくもってその通りである。


「まぁ、ここにいるよりはずっといい。行きましょう」


 そうして俺たちは警備兵を先頭にして駐屯所へと向かう。

 結局、御用になってしまった。

 まぁ、縄に掛かった訳ではないから幾分マシではある。

 さて、これからどうなるのか。

 はやくも不安でいっぱいだ。

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