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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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機械の兵士


「機械には水だろ」


 右腕をシーサーペント・スケイルに変換。

 手の平に水の魔力を集めて解き放つ。

 水流は蛇を模し、水蛇となって機械兵たちを呑む。

 水の牙をもって銀色の装甲を噛み砕く。

 そうして何体もの機械兵を喰らっていった。

 しかし、そのほとんどの機械兵たちは動きを止めない。

 携えた得物に紫電を流し、水蛇の腹を引き裂いた。


「防水対策もしてるってわけか」


 漏電したり、ショートしたりしない。

 思惑は空振りに終わったしまった。


「ギギ――ギ――」


 水蛇を切り刻んだ機械兵たちが、こちらに照準を向ける。


「な、なんだ? いまの」

「空! おい、空を見て見ろ!」

「なんだ……ありゃあ」


 襲われていた人々の声が響くと同時に機械兵は行動に出る。

 一つ目のレンズが輝き出し、次第に光が強くなっていく。

 その予備動作はひどく見覚えがあるもの。

 即座に攻撃を予測して宝石の魔力から結晶壁を張る。

 その直後、地上に数多の煌めきが生じ、紫電を思わせる閃光が放たれた。

 夥しい数のレーザービーム。

 だが、そのすべては阻まれる。

 相手の魔力を利用して紫色に染まった結晶壁が、そっくりそのまま弾き返した。

 自らが放った閃光によって、機械兵たちは次々に貫かれていく。


「いい感じだ」


 その光景を見下ろしながら思案する。

 機械兵に有効な手はなにか。

 水がダメなら、もっと根本的なところを攻めるべきか?

 たとえば、そう。


「……熱」


 入院生活ではよくパソコンやスマホに触っていた。

 すぐ熱くなるそれらにちょっとした悩みを抱えていたほどだ。

 機械が熱を持てばパフォーマンスが落ちる。

 たとえ異世界の機械だろうと、その根本は同じなはず。


「試してみるか」


 右腕をシーサーペント・スケイルからサラマンダー・シェルへ変換。

 手の平に炎の魔力を集めて解き放つ。

 火炎は火蜥蜴を模して機械兵たちを喰らう。

 呑まれた機械兵たちは、しかし今度は行動できなくなった。


「ギギ――ギ――」


 銀色の装甲が融け、レンズが割れ、至るところが爆ぜる。

 高熱に晒された機械は機能不全を起こし、次々に沈黙していく。

 その効果たるや絶大であり、一息にかなりの数を減らすことが出来た。


「何が何だかわからんが、今だ!」

「一点突破だ! 気合い入れろ!」

「転ぶなよ! いいか、絶対転ぶなよ!」


 頭数がすくなくなり、包囲が薄くなったことを彼らは見逃さない。

 戦力を集中させた一点突破で包囲を突き破って脱出する。

 彼らはそのまま逃げるように戦場を離れていった。

 それを上空から確認し、一先ずほっと息を吐く。


「あとはあいつらの処理だな」


 羽ばたいて地面に降り立つ。

 機械兵たちが彼らを追わないように立ち塞がる。


「お前たちでも倒せば魔力が喰えるのか?」


 紅蓮刀を構築しながら独り言を呟く。

 すくなくとも骨は吸収できなさそうだ。

 流石に鉄とは混淆できない。


「まぁいいや。倒せばわかる」


 紅蓮刀を構えて地面を蹴る。

 機械兵たちは機械のくせに学習しないのか。

 懲りずに紫色の閃光を撃ってくる。

 俺はそれに対して結晶板で対処し、閃光をすべて撃ち手に跳ね返した。


「一つ、二つ、三つ」


 接近し、紅蓮刀を振るう。

 赤い剣閃は銀色の装甲を融かして焼き切り、一撃のもとに両断する。

 それを幾度も繰り返し、残骸の山を築く。

 時折、放たれる閃光を魔力探知で事前に読み取り、結晶板で跳ね返す。

 そうすることで瞬く間に殲滅は完了した。


「魔力は……出てこないか」


 しばらく残骸を眺めていたが魔力が出てくる様子はない。

 倒しても得られるものは何もなさそうだ。


「あの人たちは無事に逃げられたかな」


 そう思い、彼らが逃げた先へと視線を向ける。

 すると。


「あっ、やべっ」

「隠れろ、隠れろ」


 岩陰からこちらを覗いているのが見えた。

 逃げもせず、様子を窺っていたみたいだ。


「……どうしたもんかな」


 これまで亜人と接触して第一印象がよかった試しがない。

 今回もそうなるだろうと思っていたけれど、どうも様子が違う。

 珍獣扱いと言うか。

 最初から敵と見做されていないような、そんな妙な気配がする。


「あー……」


 友好的になれるのなら彼らと交流する価値がある。

 自身が敵ではないと納得してもらえたなら、ここでの行動が楽になるからだ。

 いちいち隠れて行動する必要もなくなるし、この機械兵やあの人工太陽のことも聞ける。

 とりあえず、話しかけてみようかな。


「俺になにか用があるのか?」


 そう話しかける。


「……今の聞いたか?」

「あぁ、聞いた」

「しゃべった上に、話しかけてきおった」


 驚いたような声がしてまた岩の後ろに隠れてしまう。

 それからすこしして、そのうちの一人が岩陰から姿を見せた。


「お、お前さん。言葉がわかるのか?」

「あぁ、わかる」

「……こいつは驚いた」


 実際に話してみると、更に驚かれる。


「じゃ、じゃあ、さっきは俺たちを助けてくれたってことか?」

「こっちの事情もあったけど、そういうことになる」


 機械兵を倒しても得るものがないとわかった。

 それはそれで俺の特になる収穫だった。


「つまり、敵意はないと」

「あったらそこの機械と一緒に一網打尽にしてる」

「そ、そうか」


 そう言った彼は、またしても岩陰に隠れた。


「ど、どうする?」

「どうするたって相手は魔物だぞ」

「でも、言葉は通じるし敵意もないって」

「馬鹿。魔物の言葉を信じる奴があるか」

「そうは言うけど、助けてくれなかったら今頃は死んでたぞ、俺たち」

「うーむ」


 たぶん岩陰で会議をしているのだろうけれど。

 その内容は筒抜けだった。

 間抜けというか、豪快というか、よくわからない人たちだな。


「出来れば」


 彼らに向かって言葉を紡ぐ。


「争ったりせず、友好的な関係を築きたい」


 心からの本心を。


「俺の目的はとある魔物を討伐することだ。決して人に危害を加えたりはしない。約束する」


 そう言うと彼らは沈黙した。

 そうして。


「あーもう。うだうだ考えるのは面倒くせぇ!」


 また先ほどの人物が岩陰から現れる。


「俺はドワーフの戦士、ラシルド! お前さんの助力に感謝する! お陰で兵長として部下を死なせずにすんだ!」


 腕を組み、大きな声で彼は話す。


「お前さんは恩人だ! 魔物だろうが、なんだろうが関係ねぇ! 礼を尽くすのが当然! そうだろ! お前ら!」

「まぁ、兵長がそう言うなら」

「俺たちに文句はねぇさ」


 次々に彼らドワーフが姿を見せる。

 どうやら彼らは間抜けなどではなく、豪快な人たちだったらしい。

 細かいことを気にしない。

 いい言い方をすれば懐の深い人たちだった。


「ありがとう。俺は元人間、現スケルトンの音無透だ」

「トオルか。よし! 俺たちはお前さんを歓迎しよう!」


 そう言ってラシルドは俺の側にまで歩み寄る。

 そうして側にまで彼がくると、一つ気がついたことがあった。

 遠巻きではわからなかったが、彼らドワーフはとても体格がよく身長が高いということ。

 鎧の隙間から垣間見える首筋から、彼らが筋骨隆々な種族であることが窺えた。

 従来のドワーフ像からは、かなり外れている。


「よろしくな!」

「あぁ、よろしく」


 その大きな手と握手を交わす。

 それは彼らドワーフが、俺を受け入れてくれたことの証でもあった。


「ところで」


 握手を交わし終えると、ラシルドが問う。


「お前さんの目的。そのとある魔物ってのはどんな奴なんだ?」

「あぁ、それはサンダーバードって魔物で――」


 そう告げると。


「サンダーバードだって?」


 彼らの身に纏う雰囲気が変わる。


「なるほど……なら、尚更お前さんを歓迎してよかった」

「どういう……ことだ?」

「サンダーバードは俺たちドワーフの宿敵だからだよ」


 その声音に先ほどまでの快活さはない。

 憎しみや憎悪と言ったものが込められていた。

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