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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第六章 獣人達の王

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第93話 新たなる王

 アンナ達は、アストリオン王国の宿屋に滞在していた。

 王との謁見から、数日が経ったが、戦況に動きはない。

 ガルスが調べたことによると、狼魔団は特に侵攻してきておらず、戦闘すら起っていないようだ。


「でも、なんだか違和感だな……」

「お姉ちゃん?」


 部屋の中でくっつきながら、アンナとカルーナは話していた。特に動くこともできず、部屋で過ごすことしか、アンナ達にはできないのだ。


「だって、ここ数日なんの動きもないって、何かおかしい気がするんだよね……」

「おかしい? でも、作戦を考えているのかもしれないよ」

「いや、それも違和感の理由なんだ。あの狼魔将ウォーレンスは、恐らく策略を巡らせるタイプではない。だから、誰かが裏で糸を引いていると思うんだよね……」


 アンナは、狼魔団の動きに違和感を覚えていた。

 一度剣を交えてわかったが、ウォーレンスはそういう知略に長けた将ではないと思っているのだ。ガルスからも話を聞いたことがあり、それは裏付けられていた。

 ガルス曰く、自身を罠に嵌めたのも、ウォーレンスが考えた事ではないという。つまり、ウォーレンスの裏側には、誰かがいると推測できるのだ。


「誰か……? それって、一体……?」

「わからない……でも、不安なんだ……アストリオン王国が、この戦いに勝てるのか」

「……うん、それは、そうだよね……」


 アンナとカルーナは、漠然とした不安を抱えていた。

 だが、それを解決する術を、今のアンナ達は持っていない。そのため、ただ部屋で待つことしかできないのである。


「……まあとにかく、何か動きがあった時に備えて休んでおこう? お姉ちゃん」

「うん……そうだね」


 アンナとカルーナは、そんな話をしながら休むのだった。





 アンナとカルーナが部屋で休んでいると、その戸が叩かれた。

 戸を開けてみると、仲間達が揃っている。真剣な表情であるため、何か問題があったようだ。


「皆、一体何が……?」

「それが、大変なことになったみたいなんです。その……詳しくは兵士さんが……」


 アンナの質問に、ティリアはそう答えた。

 よく見ると、後ろの方に兵士がいる。やはり、何かが起こったようだ。


「兵士さん、一体何があったんですか?」

「皆さんにすぐに王城に来て欲しいのです」

「王城に?」


 兵士は、アンナ達を呼びに来たらしい。

 あれだけ嫌がっていたアストリオン王が、アンナ達を呼びだすとは、確かに大変なことになったようだ。


「わかった……数秒待っていて、カルーナ!」

「うん!」


 アンナとカルーナは、すぐに準備を始める。


「よし、行こう!」


 数秒後、準備が完了し、アンナ達は王城へと向かうのだった。





 アンナ達は、玉座の間に通されていた。

 前回は、ここでアストリオン王に追い返されたが、今回は自ら招いたのだ。やはり、狼魔団が何かをしたのだろう。


「お待たせしました……皆さん」


 そう思いながら、アンナ達が待っていると、一人の少年が現れた。年齢は、カルーナと同じかそれ以下くらいに見える。

 少年はゆっくりと歩きながら、やがて玉座へと座った。

 アンナ達は、呆気にとられてしまい、動くことができない。

 だが、玉座に座ったことで、この少年が王族に属するのだということは理解できた。


「驚かれているようですね……無理もないでしょう。僕は、あなた方が先日会ったアストリオン王トラシドの弟、ヴィクティスと申します」

「弟……?」

「はい、昨日あった戦いによって、兄上は討ち取られました。正式に襲名した訳ではありませんが、今日からは僕が新たなアストリオン王となります」

「え……?」


 ヴィクティスの言葉に、一同は目を丸くする。

 理解が追い付かないようなことが、次々と告げられたからだ。


「故に、アストリオン王として、あなた方に頼みたいのです。兄の無礼は、本当に申し訳ありませんでした。どうか、僕達に力を貸してください」


 呆然としていたアンナは、ヴィクティスの言葉で、正気を取り戻す。衝撃的なことだったが、今は目の前に集中しなければならないのだ。

 そして、ヴィクティスの言葉は、アンナにとって断る理由などないことだった。


「わかりました、力を貸します」

「勇者さん……ありがとうございます」

「しかし、一体何があったんですか? 現状を教えて頂きたい」

「もちろんです。先の戦いに何があったのか、全てお話します」


 アンナの言葉に、ヴィクティスが頷く。


「先の戦いで、狼魔団に新たな将が現れたのです」

「新たな将……?」

「ええ、獣王と名乗っていたそうです」

「獣王だと!?」

「何……?」


 ヴィクティスの言葉に、ツヴァイとガルスが反応する。

 どうやら、その名前に聞き覚えがあるようだ。


「知っているようですね……」

「ああ、俺達魔族に属していた者なら、その名を知らぬものはいない……」

「獣人の王にして、魔族の中でもかなりの強者だ。今は、隠居していると聞いたが……」


 獣王は、魔族の中でも有名な男らしい。

 それを聞いて、ヴィクティスは納得したように頷いた。


「なるほど、鬼神のような強さだと聞いていましたが、そのような魔族だったのですね。兄上が、手も足も出ない訳です」

「え……?」

「兄上と獣王は、一騎打ちをしたそうです。結果は、知っての通りですが、そもそも勝負になっていなかったらしくて……」

「一騎打ち……」

「兵士達とも交戦したようですが、まったく敵わなかったようです」


 ヴィクティスの言葉に、一同は息をのむ。

 獣王が恐ろしい男だということが、今までの言葉から理解できたからだ。

 

「その獣王と戦うには、あなた方の力が必要です。どうか、よろしくお願いします」

「は、はい……」


 ヴィクティスの言葉に、アンナは頷く。

 アンナ達の新たなる戦いが、始まろうとしていた。

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