表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第五章 水面に映るもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/160

第78話 水魔団の秘密兵器

 ツヴァイは、オルフィーニ王国の中心都市ブームルド内を駆け抜けていた。

 その目的は、都市を浸水させている即席(インスタント・)水没器(ウォーター)を破壊することだ。

 道中、ツヴァイもエスラティオ王国の兵士達と遭遇し、事情を聞かされた。

 周囲の水魔団は、その兵士達が引き受けてくれる。そのため、ツヴァイが目指すべき場所は、ただ一つである。


「なっ!」


 走っているツヴァイは、青い球体を捉える。しかし、そこにあるのは、即席(インスタント・)水没器(ウォーター)だけではない。


「なんだ、これは!?」


 ツヴァイは、目の前にあるものに対して、目を丸くする。

 そこには、液体状の丸い物体がいくつも浮いており、揺らめいていた。

 ツヴァイは、それから何故か異様な雰囲気を感じ取っていたのだ。


「……スライム、なのか?」


 その物体を、ツヴァイはとりあえず、スライムであると認識する。

 とても珍しいものであり、ツヴァイも見るのは初めてだった。

 問題は、何故これがここにあるのかだ。


「キュルキュルキュルキュル」

「な、何……」


 ツヴァイが立ち止まっていると、スライムが動き始めた。

 スライムは一カ所に集まり、その身をよせる。そして、スライム達は混ざり合って、一つの形をとっていった。


「キュルキュルキュル……んっん!」

「なんだ……こいつは?」


 スライムは、人型になったのだ。

 さらに、そこから声を調整しているように聞こえる。


「よし、これでいいかな……」

「喋った……?」

「驚いているようだな、鎧魔将ツヴァイ……いや、元鎧魔将か」


 合体したスライムは、流暢な言葉遣いで話し始めた。


「一体、何者だ?」

「私の名前は、スライミー、スライムマンさ」

「スライムマンだと……?」


 その魔族は、ツヴァイですら聞いたことはないものだ。

 その異様な雰囲気は、普通ではないように思える。


「聞いたことがなくても当然だろう。私は、突然変異で生まれたのでね」

「突然変異だと……?」

「かつて、私はただのスライムだった。だが、ある時突然知恵に目覚めてね。そんな私を拾ってくれたのが、水魔将フロウ様だった……」


 ツヴァイの疑問に、スライミーは答えてくれた。

 その姿は、異様であったが、とても知的にも見える。


「フロウ様は、私のことを秘密兵器とし、周りから秘密にしていたのだ……故に、私の存在は魔王軍ですら、知られていなかった」

「ほう? 最終兵器とはな……」

「ふふ、戦ってみればわかるだろう。この私の強さを……」


 そう言って、スライミーは構えた。

 構えだけ見れば、格闘家のようである。

 しかし、水魔将フロウが隠していた者のため、普通の戦闘力ではないと、ツヴァイは予測した。


「……待っているのも危険か」


 そこで、ツヴァイは駆け出す。

 秘密兵器が何をしてくるかなど、想像はつかなかったが、ただ待っていても危険は変わらないと感じたからだ。

 先手で、戦いのペースを握り、一気に勝負を決める。ツヴァイは、それが一番いい手だと思ったのだった。


雷の槍(サンダー・ランス)!」

「ほう? それなら……」


 ツヴァイは、手に持つ魔人の鎧槍(アーマード・ランス)をスライミー目がけて突き刺す。


「何?」

「これでどうかな?」


 しかし、スライミーに攻撃が当たることはなかった。

 スライミーは、ツヴァイが突き刺した胸の部分に丸い穴を開け、その攻撃を回避したのだ。


「ふん!」

「ぐっ……!」


 さらに、スライミーはその体勢で、ツヴァイの顔に手を伸ばしてきた。

 ツヴァイの顔が、液体状のもので覆われる。ツヴァイは、液体によって呼吸を封じられてしまった。


「ご……」

「このまま、窒息するのだな……」


 どうやら、これがスライミーの戦術であるようだ。


「はっ……」

「おお……」


 そこで、ツヴァイは槍を薙ぎ払う。

 それは成功し、スライミーの体を切り裂くことができた。


「ごふっ……?」

「ふふ、この私の体を、切り裂いても無駄だ……」


 しかし、スライミーは拘束を解くことなく、その体も崩れてはいない。


「スライムの集合体たる私は、切り裂いてもこのようにくっつけることができる」


 それどころか、離れた体を再生し始めてしまう。

 程なくして、スライミーの体は、元に戻っていた。


「ごふ……」

「下がろうとしても無駄だ……」


 ツヴァイは拘束から逃れため、後退しようとする。

 だが、スライミーがその場から動かないというのに、拘束は解けなかった。


「私の体は、伸縮自在……逃れることなどできない」


 スライミーの腕が伸びたため、逃れることができなかったようだ。


「ぐふっ……!」


 ツヴァイが次にとった行動は、飛び立つことだった。

 空中まで行けば、スライミーの手から逃れられると思ったからだ。


「残念だが、そちらでも無理だ」


 しかし、スライミーの手は伸び続け、ツヴァイの顔から離れない。


「くっ……」

「おっと、限界か……」


 ツヴァイの体が、どんどんと落ちていく。

 ツヴァイの呼吸は、限界を迎えようとしていたのだ。


「ごがっ……」

「さて、そろそろ終わりか……」


 ツヴァイの様子を見て、スライミーは笑う。

 どこに移動しても、ツヴァイはスライミーの手から逃れられない。

 それは、絶体絶命ともいえる状況だった。


「ごふ、ごはっ……!」

「む?」


 そこで、ツヴァイの持つ魔人の鎧槍(アーマード・ランス)が光輝く。

 ツヴァイの体に鎧が纏われ、その力によって、スライミーの手が千切れる。


「くっ……はあ、はあ」


 鎧の中で、スライミーの一部から逃れ、ツヴァイは呼吸を再開した。


「ほう? 逃れられたか……」


 体が千切れても、スライミーは平気そうである。

 さらに、一手が破られたというのに、それも気にしていないようだ。


「……これが、秘密兵器の力か」

「これは、力の一端にしか過ぎないさ。この私の体には、無限の力が宿っているのだからね……」


 スライミーは、余裕な態度を崩さない。そして、その能力は、それを裏付ける要素しかもっていないのだ。ツヴァイは、彼を強敵だと認識せざるを得なかった。


「くっ……」

「ふふ、天下の鎧魔将も、私には有効な手段が思いつかないようだな……」


 先程の攻撃は、魔人の鎧槍(アーマード・ランス)で防ぐことができることがわかったが、それでもツヴァイの劣勢は変わらない。

 なぜなら、スライミーを倒す方法が今のツヴァイにはわからないからだ。突いても斬っても、スライミーの体には、ほとんどダメージを与えられない。現在、ツヴァイは有効手段がないのだ。


「さて、そろそろ再開しようか……」


 スライミーが、ゆっくりとツヴァイに近づいてくる。

 二人の戦いは、続いていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ