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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第五章 水面に映るもの

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第77話 砕かれた鮫肌

 ガルスは、オルフィーニ王国の中心都市ブームルド内を駆け抜けていた。

 その目的は、都市を浸水させている即席(インスタント・)水没器(ウォーター)を破壊することだ。

 道中、ガルスはエスラティオ王国の兵士達と遭遇し、事情を聞かされた。

 周囲の水魔団は、その兵士達が引き受けてくれる。そのため、ガルスが目指すべき場所は、ただ一つであった。


「ここか……」


 走っているガルスは、青い球体を捉え、足を止める。

 それこそが、即席(インスタント・)水没器(ウォーター)だ。


「来たか……」

「む? お前は……」


 その即席(インスタント・)水没器(ウォーター)の前に、一人の男が立っている。


「我が名はシャード、水魔団幹部の一人である」


 男の名前は、シャードというようだ。

 その見た目は、サメと人間が合わさったようなものである。つまり、サメの獣人だ。


「竜魔将ガルス殿、あなたとは、是非手合わせしてみたかった」

「ほう?」

「だが、このような形でそれが実現したのが、残念でならん」

「……何が言いたい?」


 シャードは、ガルスに対して敬意を払っているように見えるが、その態度は余裕そうでもあった。

 それは、まるで自身の勝利を確信しているかのようだ。

 その態度を訝しく思い、ガルスは問い掛けるのだった。


「この戦いは、非常に一方的なものになってしまうだろう……私の力を惜しみなく使えば、あなたは勝てないのだ……」

「何か自信があるようだが、そんなことはやってみなければわからんことだ」

「ならば、来るといい。己の敗北を、確信するだけだがな……」

「ほう? なら、いくとしようか」


 シャードの妙な自信をおかしく思いながら、ガルスはゆっくりと近づいていく。

 シャードは、そのまま動かず、ガルスの攻撃を待っているようだ。

 そんな隙だらけの状態は、ガルスにとって絶好の的であった。


竜人拳(リザード・ナックル)!」

「ぐぅ!」


 ガルスの拳がシャードの頭に突き刺さる。

 シャードは特に抵抗することなく、吹き飛び、地面に叩きつけられていた。

 ダメージを軽減した訳でも、なさそうだ。

 意外にも呆気なく、攻撃が当たったため、ガルスは疑問を感じてしまった。


「むっ……」


 そこでガルスは、あることに気づく。

 それは、自身の拳に起こったある変化である。

 ガルスの拳は、刃物によって切られたように傷ついており、そこから赤い血が流れていたのだ。


「これで、理解しただろう……」


 ガルスが驚いていると、シャードが立ち上がっていた。

 シャードは、特に動くこともせず、ガルスに起こったことを説明し始める。


「私の体は、切り裂きし鮫肌(スラッシュ・スキン)。触れた者を傷つける体なのだ。従来は、使わないようにしているが、戦場では常にこの状態にしている」

「なるほど……」

「あなたとは、一人の武人として、これなしで戦いたかった。なぜなら、格闘家にとって、私の体は天敵だからだ。触れなければ、相手を倒せない格闘家にとって、触れられないとは致命的だ」

「……ほう」


 シャードが何故自信を持っているか、ガルスはやっと理解した。

 つまり、格闘攻撃ができないと思って、勝ちを確信しているようだ。


「俺も舐められたものだな……」


 そのことに、ガルスは笑う。

 この程度のことで、自身に勝てると思っているシャードの浅はかさが、ガルスはおかしくて仕方なかった。


「何故笑う? あなたの勝ちはなくなったというのに……」

「勝ちがなくなるか……ならば、試してみるか?」


 ガルスは、一気に駆け出し、シャードとの距離を詰める。

 突然のことに、シャードは反応できなかったようだ。


竜人拳(リザード・ナックル)!」

「なっ!」


 ガルスの拳が、再びシャードを殴りつけた。

 シャードの体は、再び大きく吹き飛び、地面に叩きつけられる。

 拳から鮮血が噴き出たが、ガルスはそれを気にしない。


「まだまだいくぞ! 竜人脚(リザード・レッグ)!」

「ごふぁっ!」


 地面に叩きつけられ、少し浮かんだシャードの腹に、ガルスのつま先が突き刺さる。

 シャードは、地面にぶつかり、叫び声をあげた。

 足からも、血が噴き出るが、やはりガルスは気にしない。


「ふん!」

「くああっ!」


 ガルスが再び、攻撃しようとしていると、シャードが動く。

 シャードは身を翻し、水面を滑るように移動し、ガルスから距離をとったのだ。

 少し距離を開け、シャードは立ち上がった。その顔は、困惑に満ちている。


「何故攻撃できる……?」

「……勘違いしているようだが、切り裂かれるといっても、攻撃できない訳ではない」

「何……?」


 シャードの問い掛けに、ガルスは答えることにした。

 相手に、絶望を与え、戦意を削ぐためである。


「要するに、俺が死ぬ前にお前を殺せば、俺の勝ちだということだ。そんな単純なことも分からん奴が、戦場に立とうなど笑わせる……」

「くっ……」

「戦場で必ず勝てるなどと思わぬことだな。最も、お前に次はないが……」

「ぐがああああ!」


 ガルスの言葉で、シャードは駆け出した。

 その口を大きく開け、ガルスに向かって来る。

 サメの歯と顎の力は、とても強力なものだ。だが、そのいい武器も、真っ直ぐ向かって来るだけでは、なんの脅威にもならない。


「ふん!」

「がぎゃっ!」


 ガルスの拳が、シャードの顎を下から殴りつけた。

 シャードの口が勢いよく閉じられ、その衝撃で歯が飛び散る。


「上がれ!」

「ぶっ……!」


 ガルスはそのまま殴りぬき、シャードの体を上空に上げた。

 そして、自分もそれを追いかけ、飛び立つ。


「いくぞ!」

「ぐ……」


 空中で、シャードの頭を地面に向けた状態で、拘束する。

 さらに、そのままの状態で、地面へと落下していく。


竜人落とし(ドラゴン・ドロップ)!」

「ぐ……ぎゃっ!」


 頭を地面に叩きつけられ、シャードは叫びをあげる。

 ガルスは、一度シャードから距離をとった。


「まだ息があるか……しぶとい奴だ」

「ぐぐぐぐ、貴様!」


 シャードが、立ち上がりガルスは驚く。

 案外、体は丈夫なようだ。


「うん? はははは、なんだ? その体は?」


 そこで、シャードが急に笑い始める。

 それは、ガルスの体の状態を見たからのようだ。


「……この程度で、その態度か……」


 ガルスの体には、いくつもの切り傷がついており、そこから血が流れている。

 だが、この程度はガルスにとって些細なことだった。


「そんなに傷ついて、まだ余裕か? はははは、強がりを!」


 しかし、シャードはそれを見て笑う。

 その様子は、狂っているかのようだった。

 そうでもしなければ、自分を保てないのかもしれない。


「今、噛み砕いてやる……はははははは!」

「ほう?」


 シャードは、口を開け、再びガルスとの距離を詰めてきた。

 もう一度、先程の再現をしてもよかったが、今のガルスには、それよりいい手がある。


火炎の吐息(ヒート・ブレス)!」

「ぐああああ! 熱いいいいいい!」


 ガルスの口から、炎が放たれた。

 その熱さに、シャードは足を止め、叫びをあげる。


「お前へのダメージは、もう充分与えた。その闘気も弱まっているだろう。故に、俺はもうお前に触れる必要はなくなった」

「な、何……!?」

「闘気を飛ばしたり、火を吐いたりという攻撃は、闘気で防がれる恐れがあったからな。だから、使わなかったのだ。つまり、触れずともお前を攻撃できたということだ」

「そ、そんな……ぐがっ!」


 ガルスは、手から闘気を放ち、シャードを攻撃していく。


「ぐあ! があ! ぐっ……があっ!」


 ガルスの攻撃は、何度も行われる。

 シャードは、為す術もなくそれを受け、声をあげていた。


「ご……は……」


 やがて、シャードは声すらもあげなくなる。

 その瞬間、シャードの体がゆっくりと地面に倒れた。

 ガルスは手を止め、シャードに目を向ける。


「終わりか……」


 シャードの体が、動くことはなかった。

 ガルスはそれ以上、その体を見ず、青い球体の元へ向かう。


「ふん!」


 ガルスの一撃で、即席(インスタント・)水没器(ウォーター)が砕かれ、水の供給が止まる。

 この戦いは、ガルスの勝利で終わったのだった。

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