表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第五章 水面に映るもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/160

第73話 二人一組の宿

 アンナ達は、オルフィーニ共和国へ向かっている。今は、イルドニア王国のとある村に到着していた。

 この村にある港から、オルフィーニ共和国に向かう船が用意されている。


「さて、今日はこの村に泊まる訳だけど……」


 現在はもう日が暮れており、この村に泊まることになるのだが、そこで一つ問題があるのだ。


「ネーレも、とりあえず泊まるということでいいかな?」

「ああ、俺も目的地はここじゃないからな」


 それは、ネーレのことについてである。


「それで、ちょっと問題があるんだ」

「問題? なんだよ?」

「実は、この宿にはそんなに部屋がなくて、まあ、端的に言うと三部屋しかなくて、二人一組で泊って欲しいそうなんだ」


 宿屋側の都合で、三部屋しかないため、ネーレに相部屋をしてもらわなければならない。それを、ネーレが許可できるかどうか、聞かなければならないのだった。

 ちなみに、アンナとカルーナは一つのベッドしか使わないため、いざとなったら、ネーレに一部屋でも問題はない。


「なんだ、そんなことか。それなら、全然いいぜ」


 しかし、ネーレがこれを快く受け入れてくれたため、その手はとらなくてよくなった。これで特に問題はないだろう。


「ところで、俺は誰と同部屋なんだ?」

「あ、それは私です」


 ネーレの疑問に、ティリアが答える。見た目や口調は男性的であるが、ネーレは女性だ。アンナとカルーナが同部屋になる都合上、ティリアと一緒になるのは必然だった。

 そもそも、性別の前に、ガルスやツヴァイと同部屋はまずい。なぜなら、ネーレは二人が魔族の血を引く者だと知らないからだ。


「そうか、よろしくな」

「はい、よろしくお願いします」


 こうして、六人はそれぞれの部屋に向かうのだった。





 アンナとカルーナは、部屋で休んでいる。

 そこで、カルーナは困っていた。


「カルーナ……」

「お姉ちゃん……?」


 アンナは部屋に入るなり、カルーナに抱き着き、ベッドに倒れ込んだのだ。

 突如起こった姉の奇行に、カルーナは困惑していた。


「どうしたの?」


 カルーナが困惑する理由は多くある。

 ピュリシスとの対話により、カルーナの考えは少し変わっていた。

 要するに、アンナのことが気になっているのだ。


「きゅ、急に……」

「あのね……」


 そのため、今の状況はカルーナにとって嬉しいと同時に、激しく動揺させるものである。


「カルーナとの距離が開いた気がして……」

「う……」


 アンナの言葉は、図星であった。

 カルーナは自覚したことで、今まで通りアンナと接せなくなってしまったのだ。

 それは、自らに対する戒めのようなものであった。


「それは……」


 しかし、急に離れるとアンナが困惑すると思い、少しだけ距離を変えることにしたのだ。

 その僅かな変化を、アンナに見抜かれるとは思っていなかったのである。


「何かあったの?」

「そうなんだけど……」


 だが、どうしてそうなったかをアンナに話すことはできない。

 なぜなら、それはカルーナの思いを告げるのと同じ意味だからだ。

 言わず後悔するくらいなら、言うことをカルーナは決意している。しかし、まだ勇気が出せず、今言うことはできなかったのだ。


「言えないこと?」

「……うん」

「そっか……」


 そこで、アンナはカルーナをじっくりと見つめてくる。


「……でも、私がこうするのは嫌じゃないみたいだね」

「……うん。それは、嬉しいよ……」


 カルーナの心を、アンナは見抜いているようであった。

 カルーナは、この状況が嫌ではない。ただ、恥ずかしいという思いと、アンナに申し訳ないという思いから、自ら近寄ることを自粛していただけに過ぎないのだ。


「じゃあ、これからは私からカルーナに近づくね」

「え?」

「嫌じゃないなら、別にいいよね?」


 アンナの提案は、カルーナにとって思いもよらぬものだった。

 カルーナは、その提案を受け入れるかを数秒考える。アンナから近づいてくれるのは、カルーナにしてみれば嬉しいことしかない。

 つまり、断る理由がないのである。


「わかった、いいよ」

「よかった……」


 カルーナが提案を受け入れると、アンナは優しく微笑んだ。


「じゃあ、遠慮なく……」

「あう……」


 そして、カルーナの頬に自分の頬をこすりつけてくる。

 アンナは楽しみ、カルーナも嬉しい。それは、二人の安らぎの時間である。

 アンナとカルーナは、しばらくそうしているのだった。





 ティリアは、ネーレとともに部屋で休んでいた。

 ネーレは羽織っていたマントを脱いで、ベッドに寝転がっている。

 ティリアは、そんなネーレを見つめていた。


「なんだ? どうかしたのか?」

「あ、はい……足の調子はどうかと思いまして」


 ティリアが見ていたのは、ネーレの足である。

 ネーレは森で罠に嵌ったため、足を怪我していた。それをティリアが治療したのだが、何事もなかったのか心配だったのだ。


「ああ、おかげでばっちりさ。ティリアの回復魔法って、すごいんだな」

「い、いえ……」


 ネーレはベッドから立ち上がって、その場で跳ねる。

 それは、足の怪我をまったく感じさせないものだ。そのため、ティリアも安心できたのである。


「……ところで、ティリア達って、どういう集まりなんだ? 家族とは違うようだし、よくわからないんだよな……」

「あ、それは……」


 そこで、ネーレがそんな疑問を口にした。

 それは、ティリアも話さなければならないと思っていたことである。

 アンナから、勇者であることを話してもいいと許可されていた。そのため、ティリアは説明を始めることにする。


「その、実は、私達は勇者一行なんです」

「……ゆ、勇者!?」

「はい、赤い髪のアンナさんは、勇者なんです」

「ア、アンナが!?」


 ティリアの説明に、ネーレは目を丸くした。

 それも、当然の反応だろう。


「なんか、すごい人達に拾われたんだな……」

「隠していてすみません。あなたが焦らないようにしようと思って、言い出せなかったんです」

「あ、いや、それはいい。事実、すごく動揺してるし、むしろありがたかった」


 ティリアが謝ると、ネーレは首を振ってそれを止めた。


「……それで、一つ聞きたいことがあるんですけど……」

「え? 何だ? なんでも聞いてくれ」


 そこで、ティリアは疑問を口にする。


「ネーレさんは、どこから来て、どこに向かっているんですか?」


 それは、ずっと気になっていることだった。

 この年の少女が、一人で森を歩いていたというのは、おかしい面がある。そのため、ティリアは聞いておきたかったのだ。


「……その」


 ティリアの質問に、ネーレは少し表情を変える。

 どうやら、話しにくいことのようだ。


「話しにくいことなんですか?」

「いや、その……恥ずかしい話、家出なんだよ」

「家出?」

「家族と上手くいかなくて、家を出たんだ。それで、そろそろ帰ろうと思って……」


 その言葉に、ティリアは納得した。

 確かに、それなら一人で行動して、あんな所にいたのもわかるからだ。


「それで、家はどこに?」

「……アストリオン王国」

「え!?」


 アストリオン王国は、今から向かうオルフィーニ共和国の北に位置する国である。

 つまり、かなりの距離があるのだ。

 その距離を渡ったというのは、そうとうな労力だろう。


「よくここまで来られましたね……」

「ああ、体力には自信があるんだ」


 ティリアは驚愕したが、ネーレはなんてことないかのようにそう言い放つ。

 嘘をつけるタイプではなさそうなので、ティリアはとりあえず、ネーレの言葉を信用することにする。

 そんな話をしながら、ティリアとネーレは過ごすのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ