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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第四章 毒々しき心

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第70話 思いの行方は

 アンナ達が帰還してから、一日が経った。

 今は、体力を回復するために、休息している。


「ふー」


 アンナは、気分転換のため城内を歩いていた。

 せっかくなので、外の空気を吸いたかったため、ベランダに出る。


「あれ?」

「む?」


 すると、ガルスが既にそこにいた。

 ガルスは、柵に体を預け、何かを考えているようだ。


「ガルス、隣いい?」

「ああ、構わん」


 アンナは、ガルスの隣に移動する。


「何か、考えごと?」

「……ラミアナのことを考えていてな」

「ラミアナの?」


 どうやらガルスは、ラミアナのことを考えていたようだ。

 ラミアナの思いを、アンナは知っている。だが、それは言わない約束だ。これからガルスが、何を言おうと、アンナはラミアナの思いを口にする訳にはいかなかった。


「ああ、あいつとはそれなりに長い付き合いだったからな……」


 ガルスは、懐かしむように空を見上げる。


「……後悔しているの?」


 その様子に、アンナは思わず聞いてしまった。

 ガルスが、勇者側についたことを後悔しているのではないかと思ったからだ。


「ふっ! それはない。お前達についていくと決めた時から、こうなることはわかっていた。わかっていて選んだのだ。故に後悔はない」

「ガルス……」


 しかし、ガルスは後悔している訳ではないという。

 その目には、確かな意思が宿っており、言葉が嘘ではないことを表していた。


「ただ、亡くなった者を悼むことだけはしておきたかっただけだ」

「そうだったんだ……」


 敵であっても、故人を悼む気持ちは、アンナにもある。

 そのため、アンナは、ガルスの考えをなんとなく理解できた。


「戦ってわかったけど、ガルスの言った通りの人だったよ」

「ああ、奴程正々堂々な魔族は、他におらんだろう」


 アンナとガルスは、ラミアナのことについて話し合う。

 それは、彼女に対する追悼の気持ちでもあった。


「……奴は、もしかしたら、魔将の中でも俺に一番近い性格だったかもしれないな」

「それは……」


 ガルスの言葉に、アンナは目を丸くする。

 ラミアナはガルスに憧れ、彼のようになりたいと言っていた。それを、ガルス自身がそう思っていたという事実に驚いたのだ。


「そうかもしれないね……」

「うん? ああ……」


 それと同時に、ガルスがそう思っていたなら、ラミアナも浮かばれるのではないかとも思った。


「ラミアナは……どこに行っちゃたんだろう?」

「……さあな。ただ、見つけ出して、きちんと供養してやりたいものだ」


 二人は、連れ去られたラミアナに関して思いをはせる。





 ティリアは、兄であるツヴァイともに部屋にいた。


「……」

「……」


 ただ、お互いに一言も発することができないでいる。

 二人は、兄妹ではあるが、今まで時を共にしてきたわけではない。

 そのため、何を話したらいいか、わからないのだった。


「ティ、ティリア……」


 先に切り出したのは、ツヴァイの方だ。

 ツヴァイには、ティリアと過ごした記憶が少しあり、言葉を交わしたいという思いが強かったのである。


「兄さん……」


 それに合わせて、ティリアも口を開く。


「生きていてくれて……よかった」

「ティリア……」


 ティリアの口から放たれたのは、感謝の言葉であった。


「ティリア、ありがとう」

「兄さん……」


 その言葉を受けて、ツヴァイはティリアを抱きしめる。

 ティリアも、それを受け入れた。

 それは、兄と妹の初めての触れ合いであるといえる。


「兄さんが生きていてくれて、私とても嬉しいんです……」

「ああ、俺もこうしてティリアとまた会えて嬉しいさ」


 離れていた兄妹は、ここで再び出会えた。

 二人の心は、喜びに満たされているのだ。


「これからは、私達……勇者一行に力を貸してくれるんですか?」

「ああ、俺は、お前やお前を受け入れてくれた者のために戦う……故に、勇者達とともに戦おう」


 かつて、ツヴァイの目的は、居場所を得ることだった。

 だが、今の目的は違う。自らの大切なものと、そのものを大切にしてくれるものを守ることなのだ。

 それは、以前までとは違い、ツヴァイが心から望むものである。


「兄さん、これからよろしくお願いします」

「ああ、任せておけ……」


 そんな会話をしながら、兄と妹の会合は続いていくのだった。





 カルーナは、城の地下にある牢獄に足を運んでいた。

 ここには、カルーナのよく知る者がいる。


「……お前か」

「久し振り……という訳ではないね」


 それは、毒魔団の幹部唯一の生き残り、副団長ピュリシスだ。

 ラミアナが倒れた後、毒魔団の団員達は降伏していった。それを先導したのは、他ならぬ彼女である。


「……あなたのおかげで、あれ以上犠牲を出さずに済んだ。ありがとう……と言っていいのかどうかはわからないけど……」

「ふっ! 私など、あのお方とともに散れなかった臆病者に過ぎない……」


 カルーナの言葉に、ピュリシスは笑う。それは、自虐的な笑みであった。

 しかし、カルーナにはわかっている。ピュリシスが降伏したのは、部下を助けるためであるということを。

 あの状況で、一番位の高いピュリシスが降伏すれば、部下達もそれに従う。だから、ピュリシスは誰よりも早く降伏することを選んだのだ。


「……メデュシアは死んだのか?」

「……うん。ガルスさんと戦って、敗れたって聞いてる」


 そこでメデュシアは、同じく幹部であったメデュシアのことを聞いてきた。カルーナは、アンナとガルスから、それぞれその名前を聞いている。


「その後、毒魔将ラミアナに力を貸して、新たなる手を生えさせたみたい。その手は、最期に彼女を抱きしめるような形になったって……」

「……そうか。あいつはあのお方とともに眠れたのだな……羨ましい」


 カルーナからの言葉を受けて、ピュリシスはそんなことを言った。

 主君とともに逝くのが、戦士としての本望だったのかもしれない。

 だが、カルーナはピュリシスの態度に、別のものを感じていた。


「……もしかして、あなた……」

「慕っていたさ。私も、メデュシアも……」


 どうやら、ピュリシスはラミアナに特別な思いを抱いていたようだ。


「ただ、あのお方の思いはわかっていた……」

「思い?」

「竜魔将様さ……」

「え?」


 ピュリシスの言葉に、カルーナは目を丸くした。

 まさか、魔将間で、そのような関係があると思っていなかったのだ。


「最も、それがなくても伝えることはなかっただろうがな……それまで関係を、壊しかねない……」

「それは……」


 何故かわからないが、カルーナにもピュリシスの気持ちがなんとなく理解できた。

 そこで、ピュリシスは一筋の涙を流す。


「だが、こうなるのなら……思いを伝えておけばよかった。例え、どのような結果でも。こんな後悔だけはしなかったろうからな……」

「ピュリシス……」

「お前は、後悔だけはするなよ。私のようになりたくなければな……」


 ピュリシスの言葉は、カルーナの身に染みる。


「……ラミアナ様の遺体が盗まれたらしいな」

「……うん。何者かはわからないけど……」

「こんなことを頼むのは、おこがましいかもしれないが、あのお方を助けてくれないか?」

「……うん、きっと助けてみせるよ」


 そんな会話をして、カルーナとピュリシスの会話は終わっていった。





 部屋に帰りながら、カルーナはピュリシスの言葉を思い出す。


「後悔か……」


 カルーナは、今まで自身の思いから目を逸らしてきた。

 それを気づいてしまったら、駄目だと思っていたからだ。


「だけど……」


 だが、それはもしかしたら、後悔が残る選択なのかもしれない。

 ピュリシスとの対話を経て、カルーナはそう思っていた。


「でも……」


 しかし、前に進むには、それ相応の勇気が必要である。

 そのため、カルーナは悩み続けるのだった。

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