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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第四章 毒々しき心

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第65話 纏いし槍

 毒魔将ラミアナの毒によって、窮地に立たされたアンナを助けたのは、かつての敵である鎧魔将ツヴァイであった。

 ツヴァイは鎧を纏っているが、その鎧は以前とは違う。以前の鎧よりも一回り小さな鎧であり、漆黒に金色の模様が施されていた。


「ガルスに続き、お前まで……」

「……悪いが、俺はそこまで魔王軍にこだわる必要はないのでな」


 ツヴァイとラミアナは、お互いに構えながら、話をしている。

 ラミアナは、ツヴァイが魔王軍を裏切ったことが許せないようだ。


「お前は、前々から魔王軍のことを第一に考えていない面があった。しかし、まさか裏切るとは思っていなかったぞ……」

「なんとでも言うがいい。俺は俺のために戦うまでだ……」


 ラミアナの言葉を、ツヴァイは気にしない。

 今のツヴァイは、ティリアを守ることしか考えていなかった。


「……お前の正体は聞いているが、やはり半人半魔(ハーフ)とは信用できないようだな……」

「……ふん! お前も有象無象の魔族と変わらんということか……」


 ツヴァイは、ラミアナをあざ笑う。

 半人半魔(ハーフ)という差別は、これまで何度も受けてきた。どれだけ優れた将であったとしても、それは変わらないようだ。


「プラチナスや、ガルスのような者は、やはり少ないようだな……」


 ツヴァイにとって、魔王軍で信頼できるのは、この二人だけであった。その二人の存在が、どれだけありがたいかを、ツヴァイは噛みしめる。


「……そういう意味では、アンナやカルーナも同じか」


 そして同時に、ティリアのことを受け入れた二人の人間のことも思う。彼女らが、ティリアを受け入れてくれて本当によかったと。


「……いや、俺の態度も原因か」


 さらに、ツヴァイは思う。自身が魔王軍に受け入れられなかったのは、自分の態度にも原因はあったのだと。


「まあ、いい……」


 そこでツヴァイは、思考を捨てる。

 どんなことがあろうと、今は目の前にいる敵を倒すだけだからだ。


「鎧魔将! いくぞ!」

「来い!」


 ツヴァイに対して、ラミアナが迫ってくる。その二刀流が、大きく振りかぶられながら。

 一方のツヴァイは、纏った鎧のみの徒手空拳である。


「はああああっ!」

鎧の障壁(アーマー・バリア)!」


 ラミアナの剣が襲い掛かってきた瞬間、ツヴァイの鎧が闘気で覆われた。


「何!?」


 ラミアナの剣は、その闘気によって受け止められ、それ以上進まない。


「この程度か!」


 ツヴァイは、その剣を弾きつつ、態勢を変える。

 それは、槍を使う構えであった。


「なんだ? あの構えは?」

変化(チェンジ)(ランス)……」


 そこで、ツヴァイの鎧が光を放つ。

 そして、鎧がなくなり、中のツヴァイが姿を現す。


「これが……」


 その様子に、ラミアナは目を丸くする。彼女も、ツヴァイのこの姿は初めて見るからだ。

 肌色の肌に、黒き羽と尻尾、頭から角が生えている半人半魔(ハーフ)、それがツヴァイ本来の姿である。


「何?」


 ツヴァイの姿に驚いたラミアナは、さらに驚いた。

 先程まで何も持っていなかったツヴァイの手に、黒と金の槍が握られていたからである。

 ツヴァイは、その槍をラミアナに向け、言葉を放つ。


雷の槍(サンダー・ランス)!」

「ぬぐうっ!?」


 ラミアナに、雷を纏った槍が突き刺さる。

 闘気と魔力、その二つを併せ持つ槍は、ラミアナの体を大きく吹き飛ばした。


「……」


 そこで、ツヴァイは思い出す。この武器を手にした時のことを。





「ツヴァイ……これを受け取れ」

「これは……?」


 ツヴァイは、エスラティオ王国の女王であるレミレアから、黒と金の槍を渡された。

 それが、なんなのかツヴァイは知らない。


「そなたらを探す過程で、鎧魔城に地下を見つけてな。そこで、手に入ったのがその槍だ」

「ほう……」


 ツヴァイの武器は、アンナ達との戦いの中で消失していた。

 ツヴァイにとって、その提案はありがたいものだ。


「少し調べてわかったが、その槍は、かつてエスラティオ王国の王家に仕えし者が持っていた槍だ。それも、普通の槍ではない」

「何……?」


 そう言って、レミレアはツヴァイに対して笑みを浮かべる。


「その槍の名は、魔人の鎧槍(アーマード・ランス)……槍の姿と鎧の姿、二つの姿を持つ武器……」

「二つの姿だと……!?」


 レミレアの言葉に、ツヴァイは目を丸くした。

 そのような武器は、魔王軍にいた頃ですら、聞いたことがない。


「槍に念じてみるのだ。そうすれば、その槍はそなたの望む形となるだろう」

「……」


 ツヴァイは目を瞑り、ゆっくりと念じる。その槍が、鎧へと変化するように。


「むっ!?」


 その瞬間、槍から眩い光が放たれる。

 そして、次の瞬間にはツヴァイの体は、鎧に覆われていた。


「それが、魔人の鎧槍(アーマード・ランス)の特性である。鎧魔将であり、槍の名手であったそなたに、正に相応しい武器であろう?」

「……何故だ?」

「む?」


 ツヴァイは、レミレアの態度に疑問を覚えてしまう。


「俺は、お前の国を襲った敵だった者だ。そんな俺に、この武器を渡していいのか?」


 かつての敵であった自分に、王家の秘宝ともいえる武器を手渡すなど、ツヴァイには理解できなかった。


「……その武器を宝物庫に閉まっていて、なんの意味がある?」

「……何?」

「武器というものは、飾りではない。それが戦いにおいて行使されてこそ意味がある」


 レミレアは、ツヴァイに対してはっきりとした口調でそう言い放つ。


「それに、そなたを疑おうなどと思ってはおらん。アンナ達の救援に向かうそなたを、妾が冷遇するはずもない」

「女王……」

「そして、そなたは……我が国の人間でもある」

「……」


 レミレアは、悲しそうな表情で天を見上げた。

 それが誰に向けたものなのか、ツヴァイはすぐに理解する。


「女王よ、感謝する……」

「ツヴァイ……」


 ツヴァイは、膝をついていた。

 レミレアの誇り高き精神と、自らの母に対する思いを聞き、そうせずにはいられなかったのだ。


「この鎧で、必ず勇者の力になると約束しよう。俺の母に誓って……」

「……そうか。それなら安心だな……」


 こうして、ツヴァイは新たなる武器を得たのだった。





 ツヴァイの一撃によって、ラミアナは大きく後退した。


変化(チェンジ)(アーマード)


 ツヴァイは槍を鎧に変化させ、ゆっくりとラミアナに歩み寄っていく。

 あの程度の一撃で、沈むラミアナではない。そのため、万全の状態で追撃したかったのだ。


「いくぞ……」

「くっ……!」


 ツヴァイは、ラミアナまで近づくと、大きく飛び上がった。

 そして、片膝を下に向け、落下する。


稲妻鎧落とし(ライジング・ブレイク)!」

「ぐがああっ!」


 電撃を纏いし、ツヴァイの膝が、ラミアナに落とされた。

 その激しい痛みに、ラミアナは悲痛な声をあげる。


変化(チェンジ)(ランス)!」


 そこでツヴァイは、空かさず鎧を槍に変えた。

 さらに、その槍をラミアナ目がけて突く。


雷の槍(サンダー・ランス)!」

「ぬううっ!」


 雷を纏った槍が、ラミアナの体を吹き飛ばす。

 ラミアナは、空中へと上げられ、直後、その体が地面に叩きつけられた。


「がはあっ!」

変化(チェンジ)(アーマード)


 その隙に、ツヴァイは槍を鎧に変化させる。

 そして、再びラミアナに近づいていく。


「……くっ!」

「……何!?」


 そこで、ツヴァイの体にあるものが飛んできた。

 それは、ラミアナの尻尾である。


「ぐ……」


 ツヴァイの体に、その尻尾が巻き付いていく。

 それにより、その両手両足の動きが封じられる。


「これ以上……好きにはさせん!」

「ほう……」


 ラミアナは、拘束したツヴァイにその二本の剣を向けた。


「俺を捕まえられると思ったか」

「なっ!? ぐわああっ!」


 しかし、その瞬間、ツヴァイの体に電流が走る。

 その衝撃によって、ラミアナの拘束する力が緩まっていく。


「くっ!」


 ラミアナは、ツヴァイから大きく距離をとった。

 このままでは、やられ兼ねないからだ。


「毒魔将……お前もここまでだ」

「くうっ……」


 ツヴァイとラミアナの戦いは続く。

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