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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第四章 毒々しき心

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第60話 二つの姿

 カルーナは、毒魔団副団長ピュリシスと対峙している。

 ピュリシスのことを、カルーナはハーピィだと思っていた。

 しかし、ピュリシスはセイレーンという種族だったのだ。


「一体、何が起こっているの……?」


 それだけなら、大した問題ではなかった。

 問題はそこからである。 


「ふふ、驚いているようだな……」


 ピュリシスは、半人半鳥の姿から、半人半魚の姿に変わったのだ。

 それは、まったく違う姿に体を変化させたということである。

 さらに、その変化によって、カルーナの一撃は、消え去ってしまった。


「この姿も、私の一部」


 ピュリシスは、魚の下半身で、器用に体を立たせ、口を開いている。

 カルーナは、何が起こったか、まったく理解できず、目を丸くすることしかできなかった。


「セイレーンは、空と海の両方を統べる者なのだ。ハーピィだろうと、人魚だろうと、このセイレーンに敵わない」


 ピュリシスは、両手を広げて、カルーナにそう呼びかける。

 己の力に、どれ程の自信があるというのだろうか。


「でも、姿が変わったとしても、あなたが受けたダメージは変わらない。別に、私が不利になった訳じゃない!」

「……確かに、あの一撃は強力だった。だが、一度躱せばこちらのもの」

「あなたの機動力は、半鳥時の方が、上のはず。今の方が、むしろいい的だよ!」

「この技は使いたくなかったのだがな……だが、ここで私が負ければ、お前は、ラミアナ様の元に行ってしまう。それだけは、止めなければならない!」


 カルーナが、手に魔力を集中させようとしていると、ピュリシスがゆっくりと呟いた。


混乱せし歌コンフュージョン・ソング……」

「えっ……?」


 次の瞬間、ピュリシスの口から奇妙な歌が響いてくる。

 綺麗な声であるが、何故かカルーナはそれを不快に思った。


「うわああっ!」

「ピュリシス様!? これはあああ!?」


 それは、周りの兵士や毒魔団団員も同じらしいだ。

 ピュリシスが、この技を使いたがらなかったのは、仲間も巻き込むからのようだ。


「うっ……?」


 カルーナは、思わず膝をついていた。

 とても、気分が悪かったからだ。


「があっ!」

「ぐふっ!」


 周りにいるピュリシス以外の全員が、倒れたり、ふらついたりしている。

 辺りは、まさに混乱していた。


「そうだ……! 耳を……」


 そこで、カルーナは両耳を塞ぐ。

 これがピュリシスの歌によって引き起こされているならば、聞かなければいいからだ。


「よし……」


 その試みは、半分だけ成功した。

 ピュリシスの歌が、少し聞きにくくなった結果、気分の悪さも半分になったのだ。


「だけど……」


 しかし、その状態では、カルーナも魔法を使うなどの行動を起こせなかった。

 両手を塞いでいるため、腕を構えて放つ魔法は使えない。そもそも、気分の悪さで、通常時よりも、上手く魔力が練れなかったのだ。


「くっ……どうすれば……?」


 そこでカルーナは、あることを思いついた。

 ピュリシスのこの攻撃は、歌によって起きている事情である。

 つまり、その原因は音。耳を塞ぐ意外に、それを遮る方法があるのだ。

 今現在、ここに響いているのは、ピュリシスの声のみである。ならば、それを変えればいいと、カルーナは結論付けたのだ。


「ああああああああああああああああ!」


 カルーナは、大きく叫ぶ。

 これが、今カルーナにできる最大限の抵抗であった。


「あああああああああああああああああ!」


 その咆哮で、カルーナの耳にはピュリシスの歌など、ほとんど入らなくなる。

 カルーナは、その隙に両手を前に出す。


紅蓮の不死鳥ファイア・フェニックス!」


 カルーナの手から、火の鳥が放たれる。

 火の鳥は、一直線にピュリシスの元へと向かっていく。


「む!?」


 そこで、初めて、ピュリシスはカルーナが自由になったことに気づいたようだ。

 どうやら、あの歌はかなり集中していなければ、歌えないらしい。


「く……!」


 ピュリシスに火の鳥が当たり、燃え上がる。


「ふふ! だが……無駄だ!」


 しかし、いくら燃えても、ピュリシスは平気な顔をしていた。


「セイレーンの人魚体は、水の力を持っている。火の攻撃など、通用しない!」

「いいえ、あなたはもう終わり……」

「何? ……はっ!?」


 ピュリシスは、そこで自身の体に起こる異変に気づいたようだ。


「い、息が……」

「燃え盛る炎は、あなたの周りから空気を奪っていく。そのまま、あなたは窒息する」

「くっ! 舐めるな!」


 ピュリシスがそう言うと、彼女の体が変化していく。


「まさか!」

「これこそが! セイレーンの戦い方!」


 ピュリシスの魚の下半身が、鳥へと変化し、腕は羽へと変わる。


「これで!」


 その変化に合わせて、ピュリシスは体を回転させた。


風の回転(ウィンド・スピニング)!」


 ピュリシスの炎が、はじけ飛んでいく。

 しかし、弾け飛んだ炎がまた鳥の形に変わる。


「だが! この炎が永遠ではないことは、先の攻防で理解した!」

「くっ!」


 先程、ピュリシスが変化してから間もなく、火の鳥は鎮火された。

 そのことで、火の鳥が永遠ではないことはばれてしまっていたのだ。


風の回転(ウィンド・スピニング)!」


 ピュリシスは、体を回転させて、火を払っていく。

 火の鳥が再生するが、その回転は止まらない。


「くっ……!」


 その回転によって、火の鳥は完全に崩れていってしまった。


「ふふ! これで形勢は変わらなかったな」

「くっ!」


 カルーナは、再び手に魔力を集中させていく。


「何度やっても同じこと! セイレーンの形態変化に、お前は対応できない!」


 確かに、二つの形態変化を使い分けるピュリシスを攻略するのは、かなり難しいだろう。

 しかし、カルーナは諦めるつもりなどない。


小さな(リトル)紅蓮の火球(ファイアー・ボール)!」

風の壁(ウィンド・ウォール)!」


 カルーナの火球に対して、ピュリシスは風の壁を展開していく。


「ふん!」


 風の壁によって、カルーナの攻撃は遮られてしまう。


小さな(リトル)紅蓮の火球(ファイアー・ボール)!」


 カルーナは、すかさずもう一度魔法を放つ。

 それに合わせて、ピュリシスは体を回転させる。


風の回転(ウィンド・スピニング)!」


 その回転によって、カルーナの魔法はかき消されてしまった。


「くっ! やっぱり駄目か……」


 カルーナは、必死で思考する。ピュリシスに勝つ方法を。

 カルーナとピュリシスの戦いは、続くのであった。

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