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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第三章 鎧に隠された真実

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第54話 エスラティオ王国出発

 アンナ達は、鎧魔将ツヴァイの討伐に成功したため、新たなる戦地へ赴くことになっていた。


「次の目的地は、イルドニア王国か……」


 部屋の中で、アンナはそんなことを呟く。

 次の目的地は、エスラティオ王国の南に位置するイルドニア王国だった。その国は、魔王軍毒魔団に侵攻されているらしい。

 その国でも、また戦いが待っているのだ。アンナは、気を引き締めなければと思うのだった。


「お姉ちゃん、そろそろ行かないと……」

「うん、そうだね」


 カルーナに呼びかけられて、アンナはゆっくりと部屋を出る。

 今日は出発の日であり、出発前に女王に謁見することになっていた。


「ふー」

「お姉ちゃん、まだ緊張しているの?」

「まあね」


 アンナは、未だにこういう王族の前に出るという行為に緊張していた。どれだけ経験しても、それだけは慣れないのだ。


「カルーナの方こそ、よく平気だよね……」

「それは、まあ、慣れかな……?」

「慣れか……」


 カルーナは、アンナと比べると、そういう部分は図太い。それに、色々な事情から、女王であるレミレアには親近感のようなものが芽生えていた。


「羨ましいなあ……」

「お姉ちゃん、リラックスして……」

「いや、わかっているんだけどさ……」


 そう言われても、アンナにはそれはできないことだ。


「お姉ちゃん、着いたよ」

「あ……」


 そんなことを言っている内に、玉座の間に辿り着いていた。兵士達に通され、二人は中に入る。中には既に、ティリアとガルスがいた。


「ティリア、ガルスの治療はどう?」

「はい、とりあえず傷は治りました」

「ああ、ティリアのおかげで、俺もよくなった……」

「よかったですね、ガルスさん」


 そう話していると、奥の方からレミレアが現れたので四人は跪く。


「皆よ、楽にしてもらって良いぞ」

「はい」


 四人は立ち上がり、レミレアを見つめた。


「さて、皆よ。この度の戦いは、ご苦労であった。おかげで、この国には平穏が訪れた」

「いえ、私は、勇者の使命を果たしただけです」

「なるほど、立派だな」


 アンナの言葉に、レミレアは微笑んでいた。アンナの立ち振る舞いは、正に勇者である。それを見てレミレアは、思わず笑ってしまったのだ。


「そなたなら、きっと魔王と渡り合えるだろう。これからも、頑張ってくれ」

「はい、ありがとうございます」


 アンナは、レミレアの言葉に頭を下げて感謝する。その言葉は、アンナにとっても励みとなるものだった。


「ふむ、それで、これからのことだが、イルドニア王国に向かってもらう。この国から、南に位置する国で、毒魔軍に侵攻されているのだ」

「はい、聞いています」

「ふむ、きっとそなたらなら、大丈夫だ。頑張ってくれ」

「はい!」


 レミレアの激励の言葉に、アンナは返答する。

 これで、アンナ達が、エスラティオ王国でやるべきことが終わったのだった。





「さて、出発か……」


 アンナ達四人は、馬車に乗り込むことにした。今回も、アンナとカーナが御者席に座る。ティリアとガルスは馬車の中に入るのだが、そこでアンナはガルスの格好が気になっていた。


「ガルス、馬車の中くらい、それを脱いでもいいんじゃない?」


 ガルスの格好は、ボロボロのマントで身を包んでいる。これで、顔まで覆い隠してあるのだ。リザードマンであることを隠すためらしいが、流石に暑そうだった。


「問題ない……周りの人間に見つかると、厄介だろう?」

「でも、そんな格好じゃあ、暑くない?」

「俺は、暑さには強いということを覚えていないのか?」

「あっ……!」


 そういえば、ガルスはカルーナの炎魔法を受けても、まったく動じない体質であったことを、アンナは思い出した。

 ならば、この格好も大丈夫なのかもしれない。


「俺のことなど、気にする必要はないさ……」

「いや、これから一緒に旅するんだから、気にはするよ」

「そうか……」


 ガルスが少し照れているように、アンナからは見えた。顔は見えないが、そんな気がしたのである。

 ガルスはそれだけ言うと、馬車の中に入ってしまった。


「アンナさん、カルーナさん、それではよろしくお願いします」

「うん、任せてよ」


 ティリアも、ガルスに続き馬車の中に入ってく。アンナとカルーナは、二人で御者席に乗り込んだ。


「さあ、マルカブ、シェアト、今日もいいかな!?」

「ブルル!」

「ヒヒーン!」


 アンナの合図に、二頭の馬は応え、アンナ達の馬車が動き始めた。


「よし、今日も調子いいね」

「うん、二匹とも、王国にいる間は、しっかりと休息してたみたいだよ」

「なるほどねえ」


 イルドニア王国までの道のりは長い。二頭の馬にも、頑張ってもらわなければならないだろう。

 アンナ達の旅は、まだまだ続くのであった。





 レミレアは、アンナ達の旅立ちから数日後、ある知らせを受け、ある場所に来ていた。

 そこは、鎧魔城の跡地。かつてアンナ達が戦った場所である。


「ここか……」


 レミレアは、跡地を見下ろし、そこであるものを認識した。それは、レミレアにとってもある意味でよく知るものだ。


「……なるほど」


 酷く動揺したレミレアだったが、そこにいる者達に、そのことを悟られてはならなかった。


「さて、どういうことか、そなたらの口から説明してもらえるのか……? 鎧魔将ツヴァイよ……」

「……もちろんだ」


 そこに立っていたのは、鎧魔将ツヴァイ。鎧魔城とともに沈んだはずの男だ。さらに、その隣には、副団長プラチナスもいる。


「俺達は、鎧魔城とともに沈むつもりだったが、俺は運よく助かったのだ」

「なるほどな……」

「ただし、プラチナスは命が危なかった。そのため、俺は自身の力を分け与えることで、プラチナスの命を引き止めた」


 ツヴァイは、家臣を死なせぬために、自身の力を失ったようだ。つまり、今の鎧魔将にかつての強さはないということになる。


「その後、数日の間、身を隠していたが、俺とプラチナスで話し合った結果、お前達に交渉するという結論に達したのだ」

「ほう? 交渉とな?」


 レミレアは、少し怪訝な表情をした。ツヴァイの交渉がなんであれ、穏やかなものではなさそうだと感じたからだ。かつての敵を、そこまで信用することは、レミレアにはできなかい。


「俺達は降伏する」

「何!?」


 しかし、次にツヴァイから出た言葉は、意外なものであった。それは、降伏宣言。つまりは、敗北を認めたということだ。


「ただし、俺を解放して欲しい」

「む? それは、どういうことだ?」


 だが、次の言葉で、レミレアの表情は変わる。それでは、降伏にはならないと感じたからだ。


「ティリアを……勇者一行を助けたいのだ」

「なんと!」

「俺の妹と、それを慕ってくれている者達。そして、俺がかつて唯一尊敬していた男。俺は、奴らの力となることで、今までの罪を償いたい」

「む……」


 ツヴァイの提案は、悪くないものだと、レミレアは感じた。しかし同時に、この男が本当に勇者の元に向かい、助太刀するなど信用できるかどうかの心配もある。

 レミレアがそう悩むことを予測していたのか、ツヴァイは、言葉を続ける。


「無論、俺の行動を制限するものも用意しよう」

「制限……」

「この私です。私が人質となり、ツヴァイ様の枷となります」


 そこで、プラチナスが初めて口を挟んだ。どうやら、人質ということらしい。


「なるほどな……」

「こ奴は、すでに俺の半身のようなものだ。何より、俺が最も信頼する部下でもある。この者のためなら、俺は命すら惜しくないといえるだろう」

「ほう? それを妾に信じろというのか?」

「……そうだ」


 ツヴァイの素直な言葉に、レミレアは口の端を歪める。


「面白い……乗ってみようか。その提案に……」

「……感謝する!」


 こうして、アンナ達の知らぬところで、ある男が動き出してのだった。

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