表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第三章 鎧に隠された真実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/160

第52話 鎧魔城の最後

 ツヴァイは、槍に雷を集中させていく。アンナも聖剣に聖闘気を纏わせる。


「いくぞ! ツヴァイ!」

「勇者あああっ!」


二人の力が再びぶつかり合おうとしていた。


雷の(サンダー・)──」

聖なる(セイント・)──」


 ツヴァイの槍が轟音とともに、突き刺した。それに合わせて、アンナも十字の攻撃を放つ。


(ランス)!」

十字斬り(クロス)!」


 聖闘気と魔闘気、二つの闘気が重なり合って、爆発する。激しい光が放たれ、辺り一面を覆う。


「ぬうっ!」

「くっ!」


 互いの衝撃で、二人の体が、大きく後退する。しかし、どちらも再び距離を詰めていく。


「まだだ! 勇者あっ!」

「おおおおおお!」


 二人は、自らの闘気を集中させる。二つの力が溢れ出し、空気が歪み、震え始めた。


雷の槍(サンダー・ランス)!」

聖なる十字斬り(セイント・クロス)!」


 二つの攻撃が、再びぶつかり合う。


「ぬううううっ!」

「うおおおおっ!」


 雄叫びをあげながら、二人の力が爆発した。


「ぐううううっ!」


 ツヴァイの体勢が、あまりの衝撃に崩れる。彼は、ガルスとも戦っているため、疲労がアンナより大きい。


「はあああああっ!」


 闘気による光の中で、アンナはその身を翻す。もう一度、さらなる攻撃を放つためだ。

 ツヴァイは、その様子に驚きながらも、構える。


「やあああっ!」

「何!?」


 アンナの放った斬撃によって、ツヴァイの槍は切断された。槍の先端が、地面に転がる。これで、ツヴァイの攻撃手段は消え去った。


「まだだ! 鎧魔奥義! 超強化鎧(スーパー・アーマー)!」


 ツヴァイの体に、魔闘気が纏われる。その防御力は、ガルスとの戦いで証明済みだ。だが、アンナは見抜いていた。ガルスとの時と比べて、完全ではないことを。

 ツヴァイの疲弊した体で、完璧に力を発することなど、できる訳がないからだ。


「これで最後だ!」

「ぬうっ!」

聖なる十字斬り(セイント・クロス)!」


 アンナの聖なる斬撃が、ツヴァイの鎧を打ち砕く。


「ぐああああああっ!」


 ツヴァイは大きく吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる。鎧は辺りに散らばり、やがて消え去った。


「はあ、はあ……」


 アンナにとっても、今までの連撃は練っていた聖闘気を全て使う程だ。これ以上、ツヴァイに手があれば、アンナも危ういだろう。


「ぐっくっ……」


 ツヴァイは、地面に伏したまま動かなかった。いや、動けないのだ。


「……終わりのようだな、ツヴァイ」

「くっ……この俺が……動けないだと……」


 そこでアンナは、ティリアに目を向けた。彼女の望みは、兄であるツヴァイと話すこと。回り道になったが、今なら彼女の望みを叶えられるはずだ。


「ティリア……」

「アンナさん……ありがとうございます」


 ティリアが、ゆっくりとツヴァイの側に近寄った。


「ティ、ティリア……」

「ツヴァイ……いえ……兄さん」

「ティリア? お前……今、なんと……」


 ティリアの言葉に、ツヴァイは目を丸くする。兄と呼ばれるとは、思っていなかったからだ。


「兄さん、もうやめにしましょう……」

「ティリア、やめることなどできん……俺達に居場所はないんだ……」

「そんなことは、ありません。私が半人半魔(ハーフ)だと知っても、アンナさんやカルーナさんは、受け入れてくれました」


 ティリアの言葉で、ツヴァイの顔は濁っていく。


「それは、ほんの一瞬に過ぎないことだ。いずれ、俺達は拒絶される。それがこの世界の真意なのだ……」

「それは違います。人間にも、魔族にも色々な人がいます。確かに、私達を受け入れてくれない人もいるのかもしれませんが、それが全てではないんです」


 ツヴァイの顔は、歪んでいる。最愛の妹との会話だというのに、その表情は晴れていなかった。


「ならば……」

「兄さん?」

「ならば俺は、なんのために……戦ってきたんだ?」


 言いながら、ツヴァイは地面を手で押す。その体が、ゆっくりと起き上がってくる。


「何を……きゃあっ!」

「ティリア……」


 ツヴァイは、ティリアの首に腕を回して押さえつけた。


「ツヴァイ! 何をしている!?」

「動くな!」


 その様子を見たアンナは、すぐに駆け出そうとした。しかし、ティリアを人質にされる形となっていたため、足が止まる。


「ティリアに手を出すなんて……血迷ったか!? ツヴァイ!」

「俺はただ……居場所が欲しかったのだ」

「兄さん?」


 アンナの叫びに対して、ツヴァイは何かを喋り始めた。その姿には、かつての強さや威圧感はまるでない。


「だから強くなった……魔将にまでなった! 今更、巻き戻すことなど……できん!」

「ツヴァイ……」

「兄さん……」


 それは、悲痛な叫びであった。最早、誇りも何もなく、ただ己のわがままを押し通そうとしているだけだ。


「このまま俺は、引かせてもらうぞ……お前達に手は出せんはずだ」

「ツヴァイ……あんたは、どこまで落ちたら気が済むんだ」


 しかしその時、一つの声が響いく。


「ツヴァイ様!」

「プ……プラチナス!?」


 そこには、白金の鎧が現れていた。その姿に、カルーナは目を丸くした。


「そんな!? ガルスさんの一撃で倒れたはずじゃあ?」

「私は、残る闘気全てを使って、一時的に蘇生したのだ」


 カルーナの質問に、プラチナスは早口で答えた。その様子は、何か焦っているように見える。


「何をしにきたのだ?」

「ツヴァイ様! 私は……あなたを尊敬しています!」

「プラチナス……?」

「だが、今のあなたは見ていられない!」

「くっ……」


 プラチナスは、悲しそうな声色で、そう言った。信頼していた部下の言葉で、ツヴァイの動揺は加速する。


「そんな卑劣な手を使うくらいなら、この場で潔く散ろうではありませんか!」

「プラチナス……お前は、そこまで俺を……」

「あ……兄さん?」


 ツヴァイは、プラチナスの言葉でティリアを離していた。その体がゆっくりと、プラチナスに近づく。


「ツヴァイ!」


 警戒したアンナだったが、その殺気の無さは、手を出すことすら躊躇わせるものであった。

 ツヴァイはプラチナスの側に行き、その手を取り、言葉を放った。


「プラチナス……俺と共に散ってくれるか?」

「もちろんです。我が魂は、あなたのためのもの……」

「そうか、ありがとう。お前がそこまでの決意を抱いてくれているのに、主である俺がそれに応えぬ訳にはいかんな……」


 ツヴァイは、次にティリアの方を向いた。


「ティリア」

「兄さん……?」

「俺の様になるなよ……最も、お前なら心配ないだろうがな……」

「兄さん! 駄目!」


 そこで、ツヴァイは懐からあるものを投げ放つ。それは、魔法の筒(マジック・ポット)。光輝くその筒は、上空で爆発し、ツヴァイとプラチナスを除く全ての者を包み込んだ。


「さらばだ……勇者達よ。ティリア……きっと元気で」

「兄さん!」


 そこで、アンナ達の視界は塞がれた。





 アンナ、カルーナ、ティリア、ガルスの四人は、鎧魔城の外に出ていた。


「皆! 大丈夫!?」


 アンナは、三人に声をかけ確認する。


「お姉ちゃん、私は大丈夫!」

「私も問題ありません……」

「俺も無事のようだな……」


 どうやら、全員無事のようだ。アンナは、次に鎧魔城の方に目を向ける。


「鎧魔城が……」


 鎧魔城は、徐々に壊れていっていた。さらに、地面にひびが入っていき、その辺り一面が崩れていく。


「兄さん……」

「ツヴァイは、どうやら鎧魔城と運命を共にするつもりらしい……」

「ツヴァイ……」

「お姉ちゃん……」


 四人はしばらく立ち尽くしていたが、エスラティオ王国に帰還することにした。これ以上ここにいても、できることはない。

 今、アンナ達ができることは、早くエスラティオ王国に帰り、ツヴァイが倒れたことを知らせることだった。そうすることで、エスラティオ王国に平和が訪れるのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ