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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第ニ章 国境際の聖女

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第28話 竜魔将ガルス③

 再び構えたアンナは、心の中で思考する。

 通常の攻撃では、ガルスに歯が立たなかった。小さなダメージは与えられるかもしれないが、それ以上に反撃されるリスクが大きい。

 ならば、威力の高い攻撃を行いたいが、そのためには隙を作る必要がある。

 ただし、カルーナの炎魔法は、ガルスには通用しない。ならば、別の方法で隙を作るしかない。


「お姉ちゃん、私にいい考えがあるの」


 アンナが思考していると、隣のカルーナが話しかけてきた。


「何? カルーナ?」

「うん、次は私が必ず隙を作るから、お姉ちゃんは、さっきと同じように距離を詰めて」

「わかった。任せて」


 カルーナは、作戦の多くを語らなかったが、アンナはすぐに了承した。

 カルーナには、何か考えがあるはずなので、それに乗るだけでいいとアンナは考えたからだ。


「ほう? やはり、厄介なコンビだな……」


 ガルスは、二人の様子を見ながら、素直にそう感じていた。

 絶対的な信頼は、戦いにおいて一番重要なことだ。二人には既にそれがあり、強敵であるとガルスは認識していた。


「行くぞ!」


 アンナが大地を蹴りながら、ガルスに向かっていく。

 ガルスは、今回も受けることにし、その場を動かず構えた。


紅蓮の火球(ファイアー・ボール)!」


 次に、カルーナの声が響いた。

 放った魔法は、先程と同じ魔法、炎の球体がガルス目がけて飛んできた。

 炎が効かないガルスは、それを奇妙に思いつつも、躱す必要がないため動かないでいた。


「むっ!」


 その時、ガルスは気づいた。

 カルーナの放った火球は、自分を狙っている訳ではなかった。正確には、ガルスの足元を狙っていたのだ。

 火球は地面に着弾し、小規模の爆発が起こる。


「くっ!」

「よしっ!」


 ガルスの足元の地面は爆発によって崩れ、ガルスのバランスが崩れかけた。

 ガルスは咄嗟に、地面を蹴り後ろに下がった。

 しかし、足場が悪いため、上手く飛ぶことができず、着地の際も少しだけ手間取った。


「はああああああ!」

「ぬうっ!」


 その瞬間、アンナはガルスとの距離を詰めていた。


十字斬り(クロス・スラッシュ)!」


 アンナにの放った技は、アンナの使える最大の技であった。

 デルゴラドとの戦いによって、感覚は完全につかんでいた。

 

「ぐうっ!」


 十字の斬撃は、ガルスの体に直撃した。


「えっ……?」


 しかし、アンナはすぐに理解した。攻撃がガルスに、大して効いていないことに。

 なぜなら、デルゴラドの時に味わった攻撃の手ごたえが、感じられなかったからだ。

 すぐにガルスの様子を伺ったアンナに、さらなる絶望が襲い掛かった。


竜人拳(リザード・ナックル)!」

「うっ!」


 アンナは、咄嗟に両手を交差させ、拳による攻撃を防いだ。

 数歩分だけ後ろに下がったアンナは、ガルスを認識する。その姿には、傷一つついておらず、アンナの技は効いていないことを表していた。


「そ、そんな……」

「悪くない一撃だったが……まだまだだ!」

「お姉ちゃん! 逃げて!」

「はっ! 聖なる光よ、盾になれ」


 唖然とするアンナに、ガルスの追撃が襲い掛かってきた。

 咄嗟に聖剣を盾に変え、衝撃に備えた。


「ふんっ!」

「くっ!」


 ガルスの攻撃を、なんとか盾で防ぐが、完全に衝撃を反らせず、アンナの体はどんどん後退していった。

 ガルスは、アンナから離れることなくさらなる追撃を行う。アンナと接近しているため、カルーナも無闇に魔法を使うことができないでいた。


「ふんっ! ふんっ!」

「くっ……」


 アンナは、連撃をなんとか受けながら、思考を加速させる。

 ガルスの攻撃も、いつかは途切れ目がある。そこが、反撃の隙になるはずだと。

 そのため、アンナ、じっと堪えてガルスの攻撃が途切れるのを待つ。


「ふん――」

「はっ!」


 一呼吸、ガルスが攻撃と攻撃の間で、息を整えようとした。

 その一瞬を、アンナは見逃すわけにはいかなかなかった。


「聖なる光よ、剣になれ!」

「むっ!?」


 アンナは、盾を聖剣に戻し剣を構えた。

 ガルスは疑問に思いつつも、振り上げた手をアンナ目がけて振り下ろした。


受け流し(パリィ)!」

「ぬうっ!」


 アンナは、ガルスの拳を剣で受けて、その軌道を逸らすことで、ガルスのバランスを崩させた。

 しかし、追撃はせずにすぐにガルスから距離をとる。アンナの体力も、かなり削れていた。攻撃しても、勝てるかどうかはわからない。


「なるほど……中々決められんか」

「はあ、はあ」

「お姉ちゃん!」


 息を切らすアンナの側に、カルーナが駆け寄ってきた。


「大丈夫?」

「なんとか。だけど、十字斬り(クロス・スラッシュ)が通じなかったのは、厳しいかな……」

「お姉ちゃん……」


 カルーナは不安そうな顔で、アンナを見つめていた。

 アンナの持つ最高の技が効かなかったという事実は、二人に重くのしかかってきた。


「だけど、やれるだけはやってみるよ。聖なる光よ、槍になれ」


 アンナがそう言い放つと、手の中の聖剣が槍へと変化した。


「接近しすぎると、格闘術で負けてしまう。槍で距離をとりつつ戦ってみるよ」

「うん。私も、炎以外の魔法でサポートするね……」


 アンナは槍を構えながら、ガルスにゆっくりと近づいていく。

 ガルスは、アンナの思考を理解しつつも笑っていた。


「ふっ! 武器を変えたか……確かに俺は接近戦が得意だ。槍ならば、中距離から攻撃できる。悪くない選択だ」

「そりゃあ、どうも」

「だが、俺がそれになんの対策をしてないとでも思ったか?」

「えっ……?」


 言葉の後に、ガルスは大きく息を吸い込んでいた。

 アンナは、何かわからないが嫌な予感がした。直後、その予想は的中する。


火炎の吐息(ヒート・ブレス)!」


 ガルスが大きく口を開くと、その口から炎が吐き出された。

 アンナは、今までとはまったく別の攻撃であったため、数秒硬直する。


「くっ!」


 すぐに理解し、槍を回転させて自分に降りかかる火の粉を払ったが、次の瞬間ガルスの狙いが炎攻撃ではないことに気づく。


竜人拳(リザード・ナックル)!」


 炎を潜り抜けて、ガルスの拳が突き出された。


「くっ! 聖なる光よ、剣になれ!」


 アンナは、咄嗟に後退し槍を聖剣に戻した。攻撃を受け流することができるようにするためだ。


受け流し(パリィ)!」


 アンナは、ガルスの拳を受け流そうとした。


「ふん!」

「な、何!?」


 しかし、ガルスは聖剣と拳が接触する瞬間、拳の勢いを完全に殺していた。

 相手の勢いを利用していたアンナは、それ以上剣を動かすことができなくなった。


「同じ手を何度も使えると思うな……」

「くっ!」

「さて、そろそろけりをつけようか……」

「うっ!」

「お姉ちゃん!」


 アンナの状況を見て、カルーナは駆け出していた。

 魔法を放っても、アンナに当たってしまうこの状況では、カルーナにできることはそれだけだった。


「竜魔奥義……」

「なっ……」


 ガルスは、聖剣を右手で払いのけながら、円を描くように回した。

 その瞬間、アンナには空気が回転するような感覚が襲い掛かってきた。


竜人旋風撃(ドラゴン・サイクロン)!」

「ぐああ……!」


 アンナの体は、作り出された闘気の渦によって、大きく後退する。

 さらに、その渦の流れによって、強制的に地面に叩きつけられた。


「うっ……あああああああ!」


 そして、闘気の渦はうつ伏せになったアンナに上からのしかかり、その体を切り裂いていった。

 アンナの衣服が裂け、その体に切り傷が刻まれていく。

 その激痛に、アンナは叫びをあげていた。


「お姉ちゃん!」


 カルーナは、アンナに駆け寄って助けようとしたが、瞬時にそれが自殺行為であると理解した。

 自分が近づいても、巻き込まれて地面に叩きつけられるだけだろう。

 そのため、カルーナは別の手を打つしかなかった。


小さな(リトル)紅蓮の火球(ファイアー・ボール)!」


 カルーナの手から、小さな火球が放たれる。

 その様子に、ガルスが口を開いた。


「無駄だ、竜人旋風撃(ドラゴン・サイクロン)はその程度の攻撃でかき消せはしない」


 しかし、口にしてすぐにガルスは自身の言葉に疑問を覚えた。

 そもそもカルーナがかき消すつもりなら、わざわざ威力の低い魔法を使うはずがない。


「ぐっ!」


 小さな火球は、アンナの体近くに着弾し、小規模の爆発が起こる。

 すると、アンナの体は転がり、竜人旋風撃(ドラゴン・サイクロン)の範囲から離れていった。


「なるほど、勇者の体に向けた一撃だったか……」

「あなたの攻撃をかき消すなんてできないけど、お姉ちゃんの体を動かすことくらいなら、私にもできる!」


 カルーナは、アンナに駆け寄った後、ガルスに向かってそう叫んだ。


「やはり、厄介なコンビだ……」


 なんとか窮地を脱したアンナとカルーナだが、劣勢であることはまったく変わっていなかった。

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