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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第ニ章 国境際の聖女

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第25話 波乱の予感

「んっ……!」


 窓から光が差し、朝が来たことをアンナは理解した。

 隣では、カルーナが寝息を立てている。

 カルモの村に着くまで、右手の使えないアンナを色々とサポートしていたので、かなり疲れが溜まっていたのだろう。

 そして、昨日、やっとアンナの手が治って、安心した結果、疲れが一気に襲ってきたといった感じだろう。

 そう思ったアンナは、カルーナを起こさないように、ベットから抜け出すことにした。


「あれ?」


 しかし、その目論見は失敗した。

 服の一部をカルーナが掴んでいたからだ。


「しょうがないか……」


 離してくれなさそうだったので、アンナはもうひと眠りすることにする。





 アンナとカルーナは、すぐに村を出発しなかった。

 アンナの右手の最終確認を行うためである。

 人のいない場所で、聖剣を振るい、戦いの勘を取り戻しておきたかった。

 この村から出ると、次はエスラティオ王国に入ることになるだろう。

 その前に感覚を確かめておきたかった。


「あれ、お姉ちゃん、あれって……」

「ああ、本当だ……」


 そう思いながら、二人が村を歩いていると、道端でティリアと少年がいるのを見つけた。


「うえーん」

「泣かないでください。今、治してあげますからね」


 どうやら、道で転んだ少年をティリアが治療しているようだ。

 ティリアは、少年に回復魔法をかけて治療していた。


「わあ、ありがとう。聖女様」

「……いえいえ、気を付けくださいね」


 治療が終わると、少年は元気に駆けて行った。

 佇むティリアの視線が、アンナとカルーナに向いた。


「あ、こんにちは……アンナさん、カルーナさん」

「こ、こんにちは。ティリアさん」

「こんにちは、ティリアさん」


 三人で駆けて行く男の子を見つめながら、話を続ける。

 アンナは、ティリアに疑問を投げかけた。


「ティリアさん、いつもこうやって町の人を助けてるんですか?」

「ええ、怪我している人がいたら、なるべく助けるようにはしています」

「なるほど、それは、立派なんですね」

「いえ、そんな……」


 アンナが褒めると、ティリアは顔を赤くしながら照れた。

 しかし、すぐに顔を真剣に戻し、アンナの言葉に返した。


「それに、アンナさんの方がすごいです」

「えっ……」

「私に助けを求めて、この村に来るのは、魔王軍に傷つけられた人々ばかりなんです」

「そうだったんですか……」

「私には、傷つけられた人を治すだけしかできません。ですが、アンナさん達は、その原因を止めることができます。それは、私にはできないことです」

「ティリアさん……」


 ティリアの表情は、悲しいような悔しいような表情でそう言い放っていた。

 アンナは、なんと声をかけていいのかがわからなかった。


「あ、すみません。なんだか、変なことを言ってしまいました」

「あ、いえ……」

「それでは、私は失礼しますね……えっ!」

「これは!?」

「お姉ちゃん! 何か聞こえる!」


 ティリアが、それだけ言ってその場を去ろうとしてたが、何かが聞こえた。

 そして、三人はそれが悲鳴であることに、すぐに気づいた。


「お姉ちゃん、行こう!」

「うん!」

「私も行きます!」


 三人は、すぐに駆けだした。





 三人が、悲鳴が聞こえた方に行くと、そこにはある光景が広がっていった。


「魔族!」


 アンナは、思わず叫んだ。そこには、魔族がいたのだ。


「なんだあ? あいつは……」

「おい、あれって、もしかして……」

「まさか! 勇者なのか!?」


 そこには、二体のオーガと一体の悪魔がいた。

 体は所々傷ついており、さらには汚れている。その風貌から、恐らくは、逃げた剛魔団の残党であろう。

 悪魔とは、薄い紫色の肌に、白い髪、頭には角、背中には漆黒の翼、細長い尻尾も生えている。

 悪魔は、魔力の高い種族であり、魔法攻撃を得意としている。


「お姉ちゃん、あれって!」

「あっ……」

「誰か、助け……」

「黙りやがれ、このガキが……」


 アンナとカルーナは、悪魔がその手で子供を押さえつけているのに気がついた。

 その子は、先程ティリアに治療を受けていた子らしかった。

 魔族達は、人質を取っていることからか、アンナを勇者と認識しても口の端を歪めていた。


「勇者なら、好都合だ。どうせ、手出しはできやしないぜ」

「ううっ……」


 悪魔が得意気にそう言うと、オーガ達もそれに続くように、言葉を発した。


「そうだなあ、その前にあそこを見ろよ……」

「ああ、この村の噂は、本当だったんだなあ……」


 オーガ達の目線の先には、ティリアがいた。

 どうやら、この魔族達は、どこかから聖女の噂を聞きつけ、ここに来たらしい。

 その傷だらけの体を、治療しようとしているのだろう。

 オーガ達は、さらに言葉を続けた。


「おい、聖女様よお! こいつの命が惜しければ、俺達を治療してもらおうかあ!」

「ついでに、勇者も来い! お前の首をとったら、俺達は大出世だぜ!」

「くっ……!」

「お姉ちゃん……」


 アンナとカルーナに、一瞬の迷いが生じる。

 あんな屑どもにいいようにされるのは、とても腹立たしかった。

 しかし、現状は、この要求に従うしかないのだった。


「お待ちください!」


 そこで、ティリアの声が響いた。


「なんだあ、聖女様」

「まずは、あなた達の傷を治療します。話は、それからでいいでしょう」

「あん、俺達に従わないのかあ!?」

「その体の傷では、満足に動けなかったでしょう? まず、皆さまの傷を治しましょう」

「なんだと……」

「へ! まあ、いいじゃないか。どの道、俺等の現状は変わらないんだからよお」


 オーガの一人がそう言ったことで、魔族達はティリアが近づくことを許したようだった。

 そのため、ティリアがゆっくりと近づいていく。


「ティリアさん……」


 すれ違い様に、アンナはティリアに声をかけた。

 すると、ティリアは小さな声で呟いた。


「任せてください……」

「えっ……」


 ティリアの目には、何か決意のようなものが宿っていた。


「お姉ちゃん……構えておこう」

「……うん」


 その様子に何かを感じたアンナとカルーナは、構えながら現状を見守ることにした。

 ティリアにはきっと、何か作戦があるのだろう。

 ティリアは、オーガの一人に近づくと手を構えた。


回復呪文(ヒール)!」

「おお、傷が治っていくぜ」


 オーガの一人は、体を動かしながそれを喜んでいた。

 ティリアは、さらにもう一人のオーガに回復魔法をかける。


回復呪文(ヒール)!」

「へへへ、ありがとよ……聖女様」


 続いてティリアは、子供を押さえている悪魔に近づいた。


「さあ、あなたも……」

「聖女様……助け……」

「は! さっさとしな……」

「はい……」


 ティリアは、悪魔に向かって掌を向けた。

 そして、魔法を口にした。


麻痺呪文(パラライズ)!」

「なっ……」


 その瞬間、ティリアの手から電撃が放たれた。

 電撃は、悪魔の顔面に当たり、その体を痺れさせた。

 悪魔は、その痺れによって、子供から手を離していた。子供の体をティリアは優しく受け止めた。


「てめえ、何してる!」

「ふざけやがって!」


 オーガ二体が、ティリアの行動に怒ったようで声を荒げた。

 このままでは、ティリアが襲われてしまうかもしれないが、ここでアンナ達の出番だ。


「はああああ!」

「ぐあああああああ!」


 アンナは大きく剣を振るい、オーガ一体を貫いた。

 さらに、そこから剣を抜き、もう一体も切り裂いた。

 突然のことに驚いたオーガ達は、対処もできず、無残にもその体から血が噴き出した。


「はあああああ!」

「ぬわああああ!」


 カルーナは、悪魔を相手取るために、オーガはアンナに任せて前に出ていた。

 しかし、悪魔は、カルーナの方に目を向けて、にやりと笑っていた。


氷の球(アイス・ボール)

「はっ……!」


 その瞬間、カルーナの目に入ったのは、ティリアと子供に向かって、悪魔が攻撃魔法を使っている光景だった。

 自分への攻撃への対処ばかり考えていたカルーナにとって、その攻撃は予想外のものだった。


「くっ……」


 一瞬の判断で、カルーナはティリア達を庇うように前に出た。

 それは悪魔の狙い通りであり、カルーナの体に氷の球体が直撃する。

 カルーナの体はバランスを崩し、その場に倒れ込んだ。


「カルーナさん!」

「よくも逆らってくれたなあ!」

「聖女様! あっ!」」


 カルーナを心配するティリアに、悪魔の手がかかる。

 悪魔は、ティリアを突き飛ばすと、子供を掴み、その首に腕を回しその動きを封じた。

 ティリアは、その際に弾き飛ばされて、地面に倒れた。


「へへへ、これでまた人質だなあ……」

「うぐっ……」


 悪魔は、アンナの方に目を向けた。


「勇者……動くなよ!」

「……そっちこそ、その手を離せ」

「な、何!? ガキが見えねえのか……うん?」 


 アンナは、それでも剣を構えていた。

 悪魔は少々それに怯んでいたが、あることに気がついた。


「なんだ……?」


 それには、アンナも気がついていた。自分の後ろから、誰かが歩いてくることを。

 アンナがゆっくりと後ろの様子を見ると、そこにはある人物がいた。


「誰だ!」

「あ、あなたは……」


 アンナと悪魔は、同時に声をあげた。

 それは、アンナにとっては知らない者で、悪魔にとってはよく知る人物だった。


「誰か……普段なら傭兵とでも答えるが、今はこう答えるのが正解か」


 その男は魔族であり、リザードマン。


「我が名は、竜魔将ガルス」


 魔王軍幹部が、そこに立っていた。

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