第7話 何故戦うのか
ガルスは、魔界の町の中を歩いていた。
「こっちに来るな! 半人半魔め!」
「この町から出て行け」
「きゃあ!」
そこで、ガルスはとある光景を目にした。
一人の少女に、魔族の子供達が石を投げている光景だ。
その少女は、犬のような耳が生えているものの、顔は人間のようである。半分が魔族、半分が人間。それは、半人半魔と呼ばれる混血の特徴だ。
半人半魔は、魔族から忌み嫌われている。憎むべき人間の血が混じっているという理由だけで、迫害されているのだ。
「何をしている?」
「え?」
しかし、ガルスはそのような差別などいないていなかった。
むしろ、そのような差別をする者達の方がガルスは嫌いだ。故に、ガルスは迫害されている半人半魔を助けることにしたのである。
「お前達がその者に小石を投げるというのなら、俺が相手してやろう。俺にその小石を投げてみろ」
「い、いや……」
「に、逃げろ!」
ガルスが少女の前に立つと、魔族の子供達は急いで逃げて行った。
屈強な戦士であるガルスは、子供達にとってかなり怖いものだったようだ。
「大丈夫か?」
「あ……うん」
ガルスは、体勢を低くしながら少女に話しかけてみた。
少女は、少し震えている。屈強な戦士であるガルスの体は、幼い少女には少し刺激が強すぎるのかもしれない。
「私が……」
「む?」
「嫌いじゃないの?」
そんなことを思っていたガルスだったが、少女が震えているのには別の理由があると気づいた。
彼女は、半人半魔であるため、様々な魔族に傷つけられてきたのだ。それ故に、いくら助けてくれたとしても、虐げられるのではないかという恐怖が抜けないのだろう。
「……生憎、俺はお前と会ったばかりだ。好きになる理由もないが、嫌いになる理由もない」
「私は……半人半魔だよ?」
「姿形など、些細なことだ」
ガルスは、ゆっくりと少女にそう話しかけた。
その言葉に、少女は少しだけ落ち着いたように見える。
そこで、ガルスは考える。この少女をどうするべきかを。恐らく、少女には親もいない。頼りになる親がいれば、このような場所にいるはずがないからだ。
そんな彼女とこのままここで別れれば、この少女は遅かれ早かれ野垂れ死ぬだろう。それは、ガルスも後味が悪い。
「俺の背に乗れ」
「え?」
「お前をとある場所に連れて行く。少なくとも、ここよりは安心できる場所だ」
ガルスは、この少女をとある人物に預けることにした。
その人物なら、この少女を悪いようにはしない。迷惑をかけることになるが、この少女を救えるなら、頭の一つでも下げようと、ガルスは決めるのだった。
「本当に……?」
「ああ」
「それじゃあ……」
ガルスの言葉に従い、少女はガルスの背に乗った。
その軽い体を支えながら、ガルスは歩き始める。ここから、その人物の元には、それなりの時間がかかる。長い旅になるが、それも仕方ないだろう。
「おじさんは……兵隊さんなの?」
「うん? ああ、そうなるな……」
「そうなんだ……」
背中からくる質問に、ガルスは短く答えた。
少女の声は、少し眠たげだ。恐らく、かなり疲労しているのだろう。
「どうして人間と魔族は戦っているの?」
「どうして?」
「私のお父さんとお母さんは、仲が良かったんだ……それなのに、他の人達はどうして仲良くできないんだろう……」
少女の声が、だんだんと小さくなっていることに、ガルスは気づいた。
そのまま、ガルスの背中にかかる体重が少し重くなっていく。少女が、眠りについたのである。
「何故か……」
そんな少女を支えながら、ガルスは考えていた。
どうして、人間と魔族が戦い続けているのかを。
幼い少女から放たれた何気ない問いかけが、ガルスの中で反響していく。その問いの答えを考えながら、ガルスは歩いて行くのだった。




