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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第一章 勇者の旅立ち

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第15話 カルーナの策

 カルーナが放った炎によって、ボゼーズの操る水は蒸発した。

 しかし、ボゼーズは、にやりと笑うと、新たなる魔法を口にした。


昇華(サブリメーション)氷の礫(アイス・ダスト)


 すると、水が蒸発したことによって発生した水蒸気が、見る見る氷の粒になっていく。


「くっ!」


 対応が間に合わいと思ったカルーナは、頭を守るように腕を交差させた。


「きゃあ!」


 カルーナの体に、無数の氷の粒が当たった。

 数カ所の痛みに耐えつつ、カルーナは、その場から移動する。

 じっとしていると、追撃がくるからだ。


氷の杭(アイス・パイル)!」


 事実として、氷の杭が、先程までカルーナがいた場所を貫いていた。


「おや、おや、躱されてしまいましたか……」

「はあ、はあ」

「ですが、ダメージは与えられたようですね」


 カルーナは、氷の粒によって、全身を痛めつけられていた。

 命にかかわるものはないが、痛みと疲労が、蓄積されてきている。

 ボゼーズも、先程の攻撃によって、ダメージは受けているが、人間のカルーナと、オーガのボゼーズでは、そもそもの体の丈夫さが違う。


「そっちこそ、中々の魔力を消費したんじゃない?」

「おや? 流石に気づいていましたか」


 ボゼーズは、魔法の連撃により、カルーナよりも多くの魔力を消費していた。

 もちろん、元々の魔力の量が違うが、それでも、現在、ボゼーズの魔力は、カルーナよりも残っていないだろう。

 魔法使い同士の戦いにおいて、魔力切れは即敗北につながるものだ。

 現状、二人の状態は、ほぼ互角といえるだろう。

 しかし、ボゼーズは、口の端を歪めながら、笑っていた。


「ですが、切り札とは、最後まで残しておくものなのですよ」


 そう言うと、ボゼーズの杖の先端が光り始めた。


「何……?」

「魔石という物をご存じですか? これは、少量の魔力を込めることで、効果が得られる便利なもの」

「まさか!」

「そうです。私の杖には、それが仕込んであるんですよ」


 ボゼーズは、杖を振り下ろし、地面を叩いた。

 すると、地面から、土でできた円錐型の突起が発生していた。


地の怒り(グランド・ストライク)


 それは、カルーナの方に向かうように、次々と生えていった。


「くっ!」


 カルーナは走ったが、地面から生えた突起は、カルーナを追跡してくる。


「逃げることなど、できませんよ!」 


 次々と地面の形が変形していき、カルーナの逃げ場がなくなっていく。

 ついに、カルーナは動きを止めてしまった。


「終わりです!」

「ふっ!」


 しかし、カルーナはこの絶体絶命の状態で、笑っていた。


「何を笑うのです!?」

「あなたは、切り札とは、最後まで残しておくものと言った」


 カルーナの杖の先端が、光り始めたのを、ボゼーズは確認した。

 そして、理解した。カルーナが、自分と同じであったことを。


飛行(フライ)


 カルーナの体は、空へ飛び立った。

 当然、飛んでいるカルーナに、地面から出る攻撃が届くことはない。


紅蓮の火球(ファイアー・ボール)!」


 カルーナは、空中から、そのまま魔法を放った。

 炎の弾は、ボゼーズの方向へ、飛んできた。


「ぐおおおおっ!」


 ボゼーズは、必死に身を躱し、炎の弾の軌道から外れた。

 炎の弾は、そのまま、木々の間に、着弾し、小規模の爆発が起こった。

 そこでボゼーズは、にやりと笑った。どうやら、爆発の煽りすら、ボゼーズの元に届いていないようだった。


「狙いを外しましたね。確か、飛行魔法は、身動きはとれなかったはずです。いい的ですねえ」

「いや、狙い通りだったよ」


 ボゼーズが、カルーナ目がけて、攻撃しようと思案していると、後ろに大きな気配を感じた。

 振り返った時、それが何かを理解したが、時は、既に遅かった。


 ドスン!


 大きな音とともに、ボゼーズは倒れてきた木の下敷きになっていた。


「がはっ!?」


 激しい痛みに、ボゼーズは思わず叫んでいた。


「はあ、はあ……最初から、これが狙いで」


 大木に押しつぶされたボゼーズは、小さな声で呟いていた。

 体に、まったく力が入らず、激しい痛みに襲われていた。

 だんだんと、頭の中で考えが纏まらなくなっていく。

 ボゼーズは、自身の結末を理解した。

 そんな中、朦朧とする意識の中で、カルーナが下りてくるのを、ボゼーズは認識した。


「はあ、はあ、情けないですねえ……あんな娘一人に、剛魔団魔術師が……?」


 カルーナは、変形した地面の隙間を縫って、ボゼーズの方に歩み寄ってきた。


「ボゼーズ、まだ息はあるみたいだね……」

「ふふふ、お見事ですねえ……まったく」


 カルーナに話しかけられて、ボゼーズは言葉を発した。

 その顔は、悔しさに溢れていた。


「勘違いしないでくださいよ。悔しいですが、本当に褒めているのです。私は、少なくとも、最初にあった油断や慢心は捨てたのですから、あなたは実力で私に勝った……」

「ボゼーズ……」


 思わぬ言葉に、カルーナは顔をしかめた。

 この状態で、そんな言葉をかけられても、ちっともいい気分にはなれなかったのだ。


「ですが、私が負けても、剛魔団は負けません。それで、私はいいのです」

「……私達は、負けるつもりはないよ」

「ふふふ、それは、あり得ません。なぜなら、デルゴラド様が負けるはずがないのですから」

「お姉ちゃんは、負けないよ」

「ふふ、私達は、どこまで行っても、平行線のようですねえ……」


 ボゼーズは、薄ら笑いを浮かべながら、カルーナを見つめた。


「早く、お姉さんの元に、行くんですね。もう決着は、ついているかもしれませんが」

「……そうさてもらうよ」

「ええ、これで、やっと、ゆっくり、ね、む、れ……る」


 そこで、ボゼーズは目を瞑った。


「……ボゼーズ」


 カルーナは、自分がやったことを噛みしめていた。

 自らの手で、生命を奪う。それが、どれだけのものか、実感していた。

 アンナも、こんな感覚を味わっていたとすれば苦しかっただろう。

 しかし、奪わなければ、奪われていたのだ。

 現に、ボゼーズは、五人の兵士の命を奪っている。

 それでも、心の中で、割り切れないものがあるのだと、カルーナは理解した。


「さようなら」


 カルーナは、それだけ言って、ボゼーズの方を見るのをやめた。

 これ以上考えても、上手く思考することはできないと思ったからだ。

 今は、自分がやれることをやるべきなのだ。


「早く、お姉ちゃんの元に行かないと……」


 カルーナは、そう思ったが、足は早く動かせなかった。

 カルーナにとって、初めてともいえる、本格的な戦いだった。

 相手は、かなりの実力者。肉体的にも、精神的にも、その疲れは普通ではなかった。

 それでも、足を動かした。全ては、アンナのためだ。


「はあ、はあ」


 カルーナは、アンナの元に、急ぐのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 普通に面白いと思う、まだ18までしか読めてないが 勇者になりピンチになると主人公がパワーアップして 敵を倒すという王道っぷり…いいと思います。 [気になる点] なんか、うんなんだろう、この…
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