第147話 新たな宿主
アンナ達は、初代魔王であるバオウガと対峙していた。
ツヴァイの猛攻に、バオウガは邪なる闇を用いて対抗してきた。
しかし、邪なる闇は魔王に受け継がれていく力である。それを、バオウガが使えるにはおかしいことなのだ。
「どうして、お前が邪なる闇の力を……」
「単純な話だ。私が復活したことで、邪なる闇は私の元に帰ってきたのだ」
「な、何……?」
「邪なる闇は魔王に受け継がれていく力。魔王に相応しい者に宿る力だ。つまり、今の魔王よりも私の方がこの力に相応しいというだけのこと」
アンナの質問に、バオウガはそう答えてきた。
どうやら、バオウガの力は現魔王に受け継がれていた邪なる闇そのものであるらしい。
その邪なる闇が、より相応しい宿主を選んだ。それが、バオウガが邪なる闇を使える理由らしい。
「今の魔王が、お前より相応しいだって? そんなことがあるはずはない」
「お前がどう思おうと関係はない。これが、事実なのだ」
アンナの言葉を聞き流しながら、バオウガは邪なる闇を展開した。
その邪なる闇が、アンナ達に狙いを定めていく。
「カルーナ、ガルス、私の後ろに!」
「うん!」
「ああ!」
それを見て、アンナはカルーナとガルスを自分の後ろにいるように指示を出した。
邪なる闇による攻撃を、防ぐためである。
「邪なる衝撃!」
「聖なる光よ! 私達を守れ!」
バオウガの闇がアンナ達に迫ってきた。
アンナは聖なる光を展開し、その闇を防いでいく。
「やはり、勇者か。簡単にはいかないようだな……」
アンナの聖なる光によって、バオウガの攻撃を防ぐことができた。
次の瞬間、アンナは一気に駆け出した。バオウガとの距離を詰めて、勝負を決めるためだ。
アンナに追従するように、ガルスも駆け出していた。アンナと同じ考えなのだろう。
一方、カルーナはアンナ達とは別の方向に駆け出していた。その方向は、ツヴァイのいる方向である。つまり、カルーナはツヴァイを助けに行ったのだ。
「火炎の吐息!」
「ふん!」
ガルスはバオウガに対して、火炎を放った。
その攻撃から逃れるために、バオウガは大きく後退する。
その隙に、アンナは一気にバオウガとの距離を詰めていく。ガルスの火炎の隙間をくぐり、バオウガに剣を向ける。
「十字斬り!」
「邪なる闇よ! 私を守れ!」
アンナが放った十字の斬撃は、バオウガの邪なる闇に防がれた。
しかし、アンナもそれは予想していた。そのため、この一撃は囮でしかない。
「竜人拳!」
「む?」
バオウガの邪なる闇に、ガルスの拳が突き刺さった。
アンナの攻撃で既に揺れていた邪なる闇の壁は、その一撃によって崩壊した。
そのまま、ガルスの拳がバオウガの体に当たる。
「うぐっ……!」
ガルスの拳によって、バオウガは大きく後退した。
邪なる闇で少し勢いが弱まっていたとはいえ、ガルスの攻撃は完璧に当たっていた。そのため、バオウガもそれなりのダメージを受けているようだ。
その隙を、アンナは見逃さなかった。さらに踏み込み、バオウガを追い詰めるのだ。
「聖なる十字斬り!」
「ぬぐうっ!」
アンナの聖なる光を纏った斬撃が、バオウガの体を斬り裂いた。
完璧に刃が入ったバオウガの体は、ゆっくりと揺らいでいく。
「まさか、これ程とはな……」
「まだ終わりではないぞ!」
そんなバオウガに、アンナはさらに剣を振るう。
このまま、バオウガを切り裂き、決着をつけるつもりなのだ。
「だが、まだ終わりはしない……」
「何?」
その瞬間、アンナの体に邪なる闇が巻き付いてきた。
その邪なる闇で、アンナは身動きを封じられる。
邪なる闇は、アンナの足元からバオウガの元に続いている。バオウガは、密かに邪なる闇を這わせていたのだ。
「邪なる闇よ! 勇者を締め付けろ!」
「うぐっ!」
邪なる闇は、アンナの体を締め付けていく。
その力に、アンナは必死に抵抗しようとする。
だが、邪なる闇の締め付けはとても強かった。アンナの闘気でも防ぎきれない程だ。
「竜人脚!」
「む!?」
しかし、そこでガルスの蹴りがバオウガに突き刺さった。
アンナに集中するしかなくなっていたバオウガに、その蹴りを完全に防ぐことはできなかったのである。
「はああああ!」
ガルスの蹴りによって、アンナを縛っていた邪なる闇は緩んだ。
その隙に、アンナは邪なる闇を突き破った。そのまま、アンナはバオウガに向かって行く。




