第145話 原初の魔王
カルーナは、水華の魔王スロックとの戦いを終えていた。
「お姉ちゃん!」
そのため、すぐにアンナの方を確認する。
カルーナは、アンナの戦いが終わっていないと予測していた。
なぜなら、マントの魔王は、明らかに他の魔王とは別格だったからだ。
「え?」
アンナの方を見たカルーナは、驚きの声をあげる。
カルーナの予測通り、アンナの戦いは終わっていなかった。それどころか、一つも動いていないのである。
その光景に、カルーナは違和感を覚えた。何故、アンナもマントの魔王も動かないのだろうと。
「カルーナ、アンナはどうだ?」
「こちらは片付いたが、アンナは無事か?」
「ガルスさん、ツヴァイさん、あれを……」
カルーナに続いて、ガルスとツヴァイもやって来た。
二人も、アンナとマントの魔王の光景を認識する。
「動いていない……いや、動けないのか……」
「動けない?」
「ああ、お互いに相手の手を読み合って、その結果動けないのだろう」
「そんなことが……」
ガルスの説明に、カルーナは驚く。
読み合っていて、お互いに動けない。それ程までに、アンナ達の戦いは高度なのである。
「加勢するべきか?」
「ああ、それがいいだろう。あのマントの男は明らかに別格だ。アンナだけに任せてはおけん」
ツヴァイの質問に、ガルスはそう答えた。
その答えに、カルーナとツヴァイはゆっくりと頷く。
「行くぞ!」
「ああ」
「はい!」
ガルスの言葉と同時に、三人は一気に駆け出した。
目指すは、アンナとマントの魔王の元だ。
「皆……」
三人の来訪に、アンナも気づいた。
しかし、それでもアンナは動けない。
目の前にいるマントの魔王が、それを許さないのだ。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「うん。でも……」
「動けないか……」
「どうやら、相手はかなりの手練れのようだな……」
アンナの後ろに、カルーナ達三人がやって来た。
しかし、三人も動けなかった。マントの魔王の明らかに異質な雰囲気に、気圧されているのだ。
「奴は一体、何者なんだ……蘇った魔王ではあるだろうが、一体いつの魔王だ?」
「わからん。わかっていることは、先程の魔王とは比べ物にならない強さだということだ……」
ツヴァイの質問に、ガルスがそう答えた。
やはり、目の前にいる魔王の正体はわからないがかなりの強さであるようだ。
「……私が誰かがわからないようだな」
「何……」
そこで、マントの魔王が初めて声をあげた。
落ち着いた男性の声だ。
「隠す必要もないことだ。故に、教えてやろう。私は、原初の魔王だ」
「原初の魔王……?」
「そう。私は、この世界に現れた最初の魔王……魔王の始祖バオウガ」
マントの魔王は、自身を原初の魔王と言った。
それと同時に、そのマントが脱ぎ払っていく。
すると、原初の魔王であるバオウガの姿が見えてくる。白い髪に角、それ以外は人間のような姿だ。
「原初の魔王……確かに、資料で見たことがある」
「そのようだな……」
その姿を見て、ツヴァイとガルスがそう呟いた。
どうやら、バオウガで間違いはないようだ。
「原初の魔王って、強かったの?」
「確か資料では、初代の勇者と相討ちになったと記されていたな……」
「強さについては、かなりのものだったとされている。それが本物かどうかは、知らんがな……」
アンナの質問に、ツヴァイとガルスがそう答えてくれた。
その強さは、未知数ではあるらしい。しかし、生半可な強さではないことは、目の前にある強大な力が証明しているようなものである。
「私が強いかどうかか……ならば、わかりやすく説明してやろう」
「何?」
「魔王というのは、勇者に敗北して次の世代が現れる。そういうシステムになっている。逆も同じだ。その繰り返しが、歴史の中で起こっていた。故に、次世代に移る毎に、勇者と魔王は強くなっているといえる」
アンナの疑問に、バオウガはそう言い出した。
しかし、その説明では自身が一番弱いと言っているようなものだ。
目の前の魔王が一番弱くないことなど、アンナは既にわかっていた。そのため、その理論は納得できるが、疑問を覚えるものである。
「だが、私は例外だった。先程、そちらの半人半魔が言っただろう。私は、初代の勇者と相討ちになったと」
「それが……まさか」
「そう。私と勇者は、互いに互いが倒した。つまり、次世代の方が強い理論とは異なるのだ」
「結局、何が言いたいんだ?」
アンナの質問に、バオウガは口の端を歪めた。
その表情は、自身に満ちている。
「私が魔王の中で、最も強いということだ」
アンナ達に、バオウガが迫ってきた。
こうして、アンナ達とバオウガの戦いが始まるのだった。




