第144話 それぞれの戦い
ガルスは、閃鳥の魔王ファテルと対峙していた。
「喰らえ!」
「くっ……!」
ファテルは空中から、その手についたかぎ爪で攻撃してくる。
その攻撃を、ガルスはぎりぎりで躱すしかできないでいた。
「なるほど……拙者の力についてくるか。だが、躱すのに精いっぱいなようだな……」
「ふん……」
ファテルは、かなりの速度で飛んでいた。
空中からの高速攻撃に、流石のガルスも防戦一方だった。
しかし、ガルスもただ攻撃を躱していた訳ではない。
「それは、お前の勘違いだ」
「何!?」
そこで、ガルスはファテルの翼を受け止めた。
高速で飛んでいるファテルを、無理やり引き止めたのだ。
「ば、馬鹿な……拙者の速度に、ついてきたというのか……?」
「お前が、何度も突っ込んできてくれたのでな……目が慣れたのだ」
「目が……慣れるだと……?」
ガルスはファテルの攻撃を見て、目を慣らしていたのである。
それにより、ファテルの動きを完全に読み取り、受け止めるまで至ったのだ。
「そんなことができる訳がない……」
「お前が何を言おうと、起こった事実は変わらない」
「うっ……」
ガルスは、翼を握りしめたまま、ファテルの後ろに回る。そのまま、ゆっくりと腕に力を込めていく。
「ふん!」
「ぐああああああ!」
ガルスの力により、ファテルの翼は両方とも引き千切られた。
多数の羽が、周囲に舞いながら、ファテルの叫びが響き渡る。
だが、それで攻撃の手を緩める程、ガルスは甘くはない。
「竜人拳!」
「がああああああ!」
ガルスの拳が、ファテルの心臓部分を突き抜けた。
それと同時に、ファテルの体が塵に変わっていく。
「これで、終わりか……」
こうして、ガルスとファテルの戦いは終わるのだった。
◇
ツヴァイは、魔岩の魔王ガンディウスと対峙していた。
「ふん!」
「くっ!」
ガンディウスの拳が、鎧を纏ったツヴァイを襲ってくる。
その威力は、ツヴァイが後退する程強力なものだ。
「……その鎧は、見掛け倒しか? 我はまだ本気を出していないぞ?」
「お前だけが本気ではないと思っているのか?」
「ほう? なら、この攻撃……受けきれるか!?」
ガンディウスは、その拳を握りしめ、再びツヴァイに向かって来る。
それに対して、ツヴァイは体に闘気を集中させていく。
「鎧の障壁!」
「ぬうっ!?」
ツヴァイの周りに、闘気の障壁が現れた。
その障壁により、ガンディウスの攻撃はまったくツヴァイに届かない。
「なるほど……少しはやるようだな」
「……先程から、何を上から目線で語っている」
「何?」
「お前の力は、理解した。どうやら、お前とこの俺には圧倒的な差があるようだ」
ツヴァイは、障壁を張ったまま新たな力を発現させていく。
その力に、ガンディウスは目を丸くする。
「馬鹿な……これは、魔力!?」
ツヴァイが発現させたのは、闘気とは異なる力、魔力である。
通常は、闘気と魔力はどちらか一つしか使えないことが多い。だが、その特殊な出自からツヴァイは二つの力を使えるのだ。
先程までは、闘気だけだったツヴァイの力は、魔力の発現により格段に上がっている。その力は、ガンディウスを遥かに上回っているのだ。
「変化槍!」
「くっ!?」
ツヴァイの鎧が、槍へと変化していく。
魔人の鎧槍、それがツヴァイの武器の名だ。この武器は、鎧と槍の二つの姿を持っている。
その二つは、どちらもツヴァイの得意武器なのだ。
「雷の槍!」
「魔岩の大障壁!」
ツヴァイの突きに対して、ガンディウスは岩の障壁を張り巡らしてくる。
だが、ツヴァイの槍は闘気と魔力が合わさった魔闘気の槍だ。その力は、ガンディウスの障壁をいとも簡単に突き抜けていく。
「ば、馬鹿なああああああ!」
ツヴァイの槍が、ガンディウスを貫いた瞬間、その体が塵へと変わり始めた。
こうして、ツヴァイとガンディウスの戦いも終わるのだった。
◇
カルーナは、水華の魔王スロックと対峙していた。
「ふふ、僕の力で君を倒してみせよう」
「……もしかしたら、あなたは私をお姉ちゃんから遠ざけたと思っているかもしれない」
「うん?」
「でも、本当はそうではない。私は、わざと孤立した。なぜなら、この技は仲間を巻き込みかねないから!」
「何!?」
カルーナは、手の平から橙色の光球を放出していく。
それは、多大なる魔力によって作られた最強の光球である。
「消滅呪文!」
「くっ!」
カルーナの魔法から、スロックは逃れようと身を翻す。
だが、カルーナの光球は強大だった。カルーナは、ボルバーが攻撃を放ってくる前から、魔力を集中させていた。そのため、光球の大きさは通常時より遥かに大きいのだ。
「がああああ!」
スロックは、なんとか半身だけ逃れることができた。
しかし、その半身は魔法によって消滅している。
「うがああ……」
次の瞬間、スロックの体が塵へと変わっていく。
こうして、カルーナとスロックの戦いも終わるのだった。




