第142話 かつての魔王達
アンナとカルーナ、ツヴァイの三人は魔界の人気のない開けた場所に来ていた。
そこが、魔界の上空にあった強大なエネルギーが、降り立った場所なのだ。
「お姉ちゃん、あれは……」
「うん、何者かがいるみたいだね……」
「ああ、四人……いや、五人はいるようだな」
アンナ達の目の前には、煙が広がっている。
その中に、五人程の影が見えるのだ。
「……二人とも、何か来る!」
「あっ!?」
「む!?」
そこで、アンナは叫んだ。
なぜなら、煙の中から炎の球が飛んできたのだ。
アンナ達は、一斉に後退していく。炎の球は、先程までアンナ達がいた場所で爆発する。
「どうやら、敵意がある何者かであることは間違いないようだな……」
「そうみたいだね……」
アンナ達は、それぞれの武器を構えておく。
相手が攻撃してきたことから、敵意があると確信できたのだ。
「けけけ、外したか」
「勝手な行動を……」
「まあいいだろう。我々の目的は、暴れることなのだ。特に問題もあるまい」
煙が晴れて、中にいた者達が見えてくる。
その姿に、ツヴァイの表情が変わっていく。
「馬鹿な……あれは……」
「ツヴァイ、知っているの?」
「ああ、あれは歴代の魔王達だ。資料で見たことがある」
「歴代の魔王?」
ツヴァイの言葉に、アンナとカルーナは驚いた。
過去の魔王達は、歴代の勇者達が倒してきたはずである。
そんな歴代の魔王が、何故ここにいるのかまったく理解できないのだ。
「なんで歴代の魔王がここに?」
「わからない。だが、オーデットと同じように怨念で蘇ったのかもしれないな……」
「あんなにたくさん?」
「確かに、集団というのは少し気になるな……」
操魔将オーデットは、かつてアンナ達が戦った男である。
オーデットは前魔王であり、アンナの前の勇者に倒されたはずだが、怨念の力によって蘇ったのだ。
今目の前にいる魔王達も、それと同じなのかもしれない。だが、集団で蘇っていることから、オーデットとは異なるのではないかとアンナは思うのだ。
「おいおい。俺様達を放っておいて、話を進めるんじゃないぜ」
「確か、紅蓮の魔王ボルバーだったか?」
「その通り、俺様はボルバー様だ!」
そこで、一人の魔王がアンナ達に話しかけてきた。
その魔王は、炎で覆われた体を持つ魔王だ。
「ボルバー、君は勝手が過ぎる」
「そういうなよ、スロック」
「水華の魔王スロックか……」
そんなボルバーに、話しかける男がいた。
その男は、水色の髪をした男だ。ほとんど人間と変わらない見た目だが、頭からは角が生えている。
「喧嘩をするな……我々が争っても、意味などないだろう」
「魔岩の魔王ガンディウス……」
二人を諫めるのは、大男だった。
体の所々には、傷が刻まれており、スロックと同じく角を生やしている。
「敵の前だ……油断するな……」
「閃鳥の魔王ファテル……」
小さく声をあげたのは、鳥のようだ翼が生えている男だ。
その目元には、仮面を被っており、その仮面からは鳥のくちばしのようなものが伸びている。
「……」
「奴は、正体がわからずか……」
最後の一人は、全身をマントで覆っていた。
そのため、ツヴァイも誰かはわからない。
だが、恐らくは魔王なのだとアンナ達は予測する。どのような魔王でも、強いことに間違いはないだろう。
「……お前達の目的はなんだ?」
「おいおい、わかっているだろう? 暴れに来たんだよ」
ツヴァイの質問に、ボルバーはそう答えてきた。
それと同時に、その腕が構えられる。
その炎が、自分達に狙いを定めてきていることにアンナ達はすぐに気づく。
「大紅蓮散弾撃!」
「来る!」
「うん!」
「変化鎧!」
その攻撃に、アンナとカルーナは後退した。
それとは、逆にツヴァイは前に出ていく。その体には鎧を纏っていることから、攻撃を受け止めるのだとアンナ達は理解する。
「ははは! 馬鹿め! この俺様の炎をそう簡単に受け止められるかよ!」
「それは……む!?」
ボルバーの炎が、ツヴァイとぶつかろうとした時、上空から一人の影が現れた。
その影は、ツヴァイの前に立ち、ボルバーの炎を受け止める。
「ふん!」
「な、何!?」
その人物によって、ボルバーの炎はかき消された。
真正面から自身の攻撃を受け止められ、ボルバーは目を丸くしている。
だが、アンナ達は驚きつつも理解していた。なぜなら、現れた人物に炎が効かないことをアンナ達は知っているからだ。
「来てくれたんだね……ガルス!」
「ふん……」
そこに降り立ったのは、竜魔将ガルス。
傭兵崩れのリザードマンが、アンナ達の加勢に来たのだ。




