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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第九章 古の魔王

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第140話 突然の訪問者

 アンナと魔王との戦いが終わり、数か月が経とうとしていた。


 そんな中、アンナとカルーナは家で食事をとっていた。

 アンナの叔母であるソテアや、叔父であるグラインも一緒だ。


「それにしても、あんた達が恋人になったのは、驚きだね……」

「ぐっ……」


 食事中、ソテアがそんなことを呟いた。

 それに、アンナは思わず驚いてしまう。


 アンナと義妹のカルーナは、長い戦いを終えて、恋人関係になっていた。二人にも、それを打ち明けているのだが、ソテアはそれを長いこと言ってくるのだ。

 それは、当然のことではあるが、アンナにとってはとても厳しいものなのである。


「ソテア、もうやめたらどうかな?」

「で、でもね」

「二人が幸せならそれでいいと、前に結論を出したじゃないか?」

「まあ、そうなんだけど……」


 ソテアに比べて、グラインは二人の関係に何か言ってくることはなかった。

 というのも、グラインはそういう関係になると、なんとなく察していたらしいのだ。なんでも、カルーナがアンナに向ける感情がそういうものであると、昔からわかっていたらしい。


「お母さん、色々といっぱいいっぱいだね」

「まあね……」


 アンナがそんなことを考えていると、隣のカルーナが話しかけてきた。

 それに対して、アンナは苦笑いする。姪と娘が、恋人関係になったと聞いて、ソテアは気が気ではないのだろう。

 叔母の心中については、アンナも同情していた。最も、この関係を変えるつもりはないが。


「うん?」

「あれ?」

「おや……?」

「おおっと?」


 そのように食事をしていた四人の耳に、戸を叩く音が聞こえてきた。

 どうやら、来客であるようだ。


「私、出てくるね」

「ああ、お願いしてもいいかい?」

「うん」


 カルーナが立ち上がり、戸の近くまで向かっていく。

 念のため、アンナはその様子を伺う。この家に客が来ることは、非常に珍しい。

 そのため、少し警戒しているのだ。勇者として活動していたアンナに、変な輩が絡んでくるかもしれない。そのような疑念が、年頭にあるのだ。


「はーい……え!?」

「カルーナ?」


 戸を開けたカルーナが、驚いたような声をあげた。

 そのことに、アンナは瞬発的に動いていた。戸が完全に開いていないため、アンナからは誰が現れたかわからない。その事実が、アンナにそうさせていた。


「あ、お姉ちゃん」

「え?」


 玄関まで辿り着いて、アンナも同じように驚いた。

 その客は、恐らく危害を加えてくるような者ではない。

 だが、驚くのには充分な人物だった。


「久し振りだな……赤髪の女勇者アンナ、魔法使いカルーナ……」

「あなたは……影魔将シャドー!?」


 そこに立っているのは、黒い影のような体の男。

 魔王軍元幹部、影魔将シャドーであった。


「ど、どうして……あなたがここに?」

「お前達の力が、必要になったのだ」

「私達の力が……?」


 シャドーの言葉に、アンナは嫌な予感がした。

 魔王との戦いが終わった後も、アンナは何かあると呼び出されていた。また、何か戦いがあるのだ。

 別に、アンナ自身戦うことが嫌だという訳ではない。ただ、そういう戦いがあるという事実が嫌なのだ。

 せっかく平和になったのに、何か危機が訪れる。そうやって日々の平和が失われるのが、アンナは嫌だった。そのため、平和を取り戻すための戦いへの協力は惜しまないのである。


「何かあったみたいだね……まさか、また竜でも出たの?」

「いや、違う。恐らく、竜よりも厄介なものだ」


 以前、アンナは竜の異常発生の際に駆り出されていた。

 そのことがあったため、また竜が現れたのかと思ったのだ。

 しかし、それよりも厄介なものが現れたらしい。そのようなものなど、アンナには想像がつかない。


「厄介なもの?」

「ああ、強大なエネルギーが感知された。そいつらは、現在は魔界の上空に留まっている。だが、いつ動き出すかわからない。恐らくは悪意を持った者達だ」

「なるほど、それは厄介そうだね……」


 シャドーの言葉に、アンナは理解した。

 獣のような竜よりも、悪意を持った誰かの方が厄介なのだ。

 やはり、アンナの力が必要なようである。


「カルーナ、いける?」

「もちろん、大丈夫」


 念のため確認したアンナに、カルーナは力強く頷いた。

 その言葉を聞いて、アンナは後ろを確認する。

 すると、既にソテアとグラインがこちらに来てくれていた。

 アンナ達の会話は、少しくらいは聞こえていたはずだ。そのため、こちらに来たのだろう。


「叔父さん、叔母さん、ちょっと行ってくるね」

「ああ、気をつけるんだよ」

「……まったく、仕方ないか。絶対に、無事に帰ってくるんだよ?」

「うん、もちろん。ね、カルーナ?」

「うん!」


 ソテアとグラインに確認できたため、アンナはシャドーの方を向く。

 これで、後は出発するだけだ。しかし、少しだけ問題もある。


「ここから、魔界まではそれなりにかかるよね? それまでに、そいつらが動かないといいけど……」

「それについては問題ない。私が、すぐに魔界に案内する。この影の中に入るがいい」

「え?」


 移動時間の問題を指摘したアンナに、シャドーはそう言ってきた。

 何やら、シャドーの作り出した影に入れば、移動の問題は解決できるようだ。


「ここで、いいの?」

「ああ、今から向こうの私に道を繋げる」

「道を繋げる?」

影の抜け道(シャドー・ワープ)

「え?」

「きゃあ!」


 アンナとカルーナが影の中に入った後、シャドーは言葉を放った。

 次の瞬間、アンナ達は影の中へと吸い込まれていった。

 今まで体験したことのない感覚に、アンナは襲われる。カルーナはアンナの手を握ってきていた。恐らく、カルーナもアンナと同じ感覚に襲われ、不安だったのだろう。


「あっ……」

「えっ……?」


 そんな二人は、すぐに開けた場所に出てきていた。

 そこは、見覚えのある場所だ。紫の空に赤い月、大地にも緑はなく、全体的に暗い色。そこは、魔界である。


「来たようだな……」

「あ、シャドー……あなたも、移動していたんだね?」


 そこにいたのは、シャドーだった。

 どうやら、シャドーも移動したようだ。


「いや、違う。お前達の元にいたのは、私の分身だ」

「ぶ、分身?」

「ああ、分身から本体へと道を繋ぐのが、影の抜け道(シャドー・ワープ)の力だ」

「なるほど……」


 シャドーの言葉に、アンナは大体理解した。

 家にいたシャドーは分身で、こちらが本体なのだ。


「さて、それでは魔王城に向かうぞ。といっても、すぐそこだがな……」

「そうみたいだね……」


 アンナ達の目の前には、魔王城があった。

 かつての戦いで、色々と壊れたりしたが、今はかなり修復されているようだ。

 こうして、アンナとカルーナは、魔界に来たのだった。

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