第138話 戦いの決着
アンナ達は、魔王と対峙していた。
戦いの最中、アンナは魔王に戦いをやめようと言い始めた。
魔王がそれを受け入れ、戦いが終わるかと思われたが、そこに新たなる敵、操魔将オーデットが現れたのだ。
操魔将オーデットは、魔王扮する操魔将オーデットが葬り去ったはずだが、何故か蘇ったのである。
「わしの怨念は不滅……何度でも蘇るのだ!」
どうやら、オーデットは死んでいなかったようだ。
元々が死んだ先代魔王なので、それも納得できる。
「何をしに来た、オーデット!」
「当然、お前を処罰しに来たのだ! 勇者の甘言に惑わされおって! 人間とわかり合うことなどできないのだ!」
オーデットは、魔王に対してそう叫ぶ。
その表情は、怒りと憎しみに満ちていた。
それに対して、魔王も怒りを露わにする。
「前時代の異物が、何を言うかと思えば……!」
「黙れ! 勇者諸共、ここで死ねい!」
「む!?」
そこで、オーデットの手から糸のようなものが放たれた。
疲弊している二人に対して、その一撃は凶悪なものである。
「勇者!」
「うん!」
アンナと魔王は、その攻撃を躱す。
しかし、そこで糸に変化が起こった。
糸が曲がり、躱した二人の方向に向かってきたのだ。
「勇者、危ない!」
「魔王!?」
その瞬間、魔王は勇者を突き飛ばした。
疲弊し、次の攻撃を躱すことが難しかったアンナにとって、それはとてもありがたいことだ。
ただ、それにより、魔王の動きが止まってしまう。
つまり、オーデットの攻撃を魔王は躱せないのだ。
「ぐあっ!」
「ふん! 馬鹿め! 勇者を庇うなど、ありえんことだ!」
「ぐふっ……」
オーデットが糸を抜き、魔王の体から、鮮血が噴き出していく。
それを見て、アンナは大きく叫ぶ。
「魔王!」
「案ずるな……これは、和平を体で示したに過ぎん」
アンナに対して、魔王は笑う。
その様子は、今までよりも穏やかなように思える。
それを見て、アンナの心は燃え上がっていく。
「許さないぞ! オーデット!」
なぜなら、オーデットに対する怒りが止まらなかったからだ。
和解できた魔王を傷つけられたことに、アンナは怒りを抑えられない。
「む?」
「何……?」
そこで、アンナと魔王は声をあげた。
魔王の体から、邪なる闇が漏れ、アンナの方に向かってきたのだ。
魔王もそれに驚いていることから、意識せずに漏れているらしい。
「これは……」
「勇者、どうした?」
「体に、力が……」
その瞬間、アンナの体に力がみなぎってきた。
聖なる光と邪なる闇、二つの力が自身の体に宿っていることが、実感できるのだ。
「そうか……聖邪一体の力……」
「勇者?」
「魔王、この力なら、オーデットを滅ぼせるはずだ」
「何……?」
アンナの手に持つ聖剣に、邪なる闇の力が加わる。
二つの力が混じり合い、さらなる力になっていく。
「何をしたか知らんが、その程度でわしを倒せると思ったか!?」
「喰らえ! オーデット!」
アンナはオーデットに対して、剣と振るう。
聖邪一体の一撃が、大きな衝撃となって飛んでいく。
その攻撃を、オーデットは何故か躱さない。
「ふん! どんな攻撃でも、わしを滅ぼすことなどできん!」
「オーデット、それはお前の間違いだ!」
「む!?」
アンナの一撃は、オーデットの体を斬り裂いていく。
その聖邪の力が、オーデットに振りかかる。
「なっ……馬鹿な! 何故……」
「相反する二つの力が、お前の体を破壊するんだ……」
「何……?」
「何が……! ぐあああああ!」
オーデットの体が、破壊されていく。
勇者と魔王の力が混ざった一撃は、オーデットの怨念を遥かに凌駕するものなのだ。
「……人間と、魔族が……わかり合うことなどできん! お前達も、いつか……後悔するだろう! その運命にな!」
オーデットは、最期にそんな捨て台詞を吐いて、消えていく。
その言葉に、アンナは何も思わない。例えそんな運命が待っていても、アンナはそれに立ち向かうだけだからだ。
最も、アンナはそうなることなどないと信じている。人と魔族が、きっとわかり合えると、思っているのだ。
「うん?」
その瞬間、アンナの体から邪なる闇が抜け、魔王の元に戻っていく。
それを感じ、アンナはゆっくりと魔王の様子を伺う。
「魔王、無事か……?」
「ああ、問題無い……この程度で、死ぬことなどない」
「そうか、それならよかった」
アンナが手を伸ばし、魔王がその手を取る。
ここに、二人の戦いが終わったのだ。




