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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第八章 魔界決戦

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第137話 手を取り合うには

 アンナ達は、魔王と対峙している。

 魔王の攻撃を、カルーナが防いだ後、ティリアがやってきてアンナを回復させた。


「はあっ!」

「ふん!」


 アンナと魔王は、同時に駆け出す。

 聖剣と邪剣、二つの力がぶつかり合い、大きな衝撃が起こる。


「くっ……!」

「ぐっ……!」


 ここに来て、二人の力は互角程度になっていた。

 通常ならば、アンナの方が劣勢であったが、疲労により魔王の力が弱まっているのだ。最も、アンナの方も疲労しているため、完全に有利ではないようである。


「この俺と互角に戦うとは……」

「互角か……」

「ぐぬっ!?」


 だが、アンナは自身に残る闘気を解放していく。

 それにより、魔王の体が後退する。


聖なる十字斬り(セイント・クロス)!」

「ぬっ!」


 十字の斬撃が、アンナから放たれた。

 魔王は、その斬撃を受け止める。だが、完全に受け止めきることはできない。


「くっ……魔王技・邪なる衝撃(イービル・ブラスト)!」

「くっ!」


 しかし、魔王は後退しながらも攻撃を放ってくる。

 それにより、アンナの体も後退していく。


聖なる十字斬り(セイント・クロス)!」

「魔王技・邪なる衝撃(イービル・ブラスト)!」


 聖なる光と邪なる闇、二つの力がぶつかり合い、衝撃が起こる。

 やはり、二つの力はほとんど互角であるようだ。

 アンナは、ゆっくりと相手を見据える。


「魔王……もうやめよう」

「何……」

「私とお前が、これ以上戦う意味などない……」


 アンナの言葉に、魔王は目を丸くした。

 それ程に、その言葉は魔王にとって衝撃的なものなのだ。


「何を言う!」

「私達のどちらかが倒れれば、また新しい勇者か魔王が生まれる……それでは、なんの意味もない」

「……何?」

「人間にも魔族にも、真の意味での平和は訪れない……」


 アンナは、ずっと考えていたことを、言い放った。

 それは、勇者と魔王の運命に関わることである。

 仮に、今ここで魔王を倒しても、新たなる魔王が出てくるだけだ。それでは、戦いは終わらない。アンナの望む平和は、手に入らないのである。


「……だから、なんだと言うんだ?」

「魔王……」

「今更、引き返すことなどできるはずがない。人間も魔族も、お互いへの憎しみを晴らすことなどできない!」


 アンナの言葉に、魔王は飛び掛かってきた。

 その表情は、様々な感情があるように思える。


「ふん!」

「くっ!」


 アンナは、そんな魔王の攻撃を受け止めながら、言葉を放つ。

 ここで、諦める訳にはいかないのだ。


「だが、どこかでその憎しみを断ち切らなければ、戦いは終わらない。それは、今でいいはずなんだ!」

「黙れ! お前達人間を滅ぼせば、戦いは終わる!」


 魔王はアンナに、連撃を仕掛けてくる。

 アンナはそれを後退しながら、それを捌いていく。

 魔王の攻撃は勢いこそあるが、簡単に受け止められるものだ。恐らく、彼にも動揺があるのだろう。


「それは無理だ! お前は、人間を滅ぼす気なんてない!」

「何を言う!?」

「お前が魔将に選んだ者達のほとんどが、そんなことを望むような者ではなかった! それは、お前自身の心に迷いがあったからじゃないのか!?」

「ぬうっ……!」


 アンナの言葉に、魔王は顔を歪めた。

 それを見て、アンナは自身の言葉が概ね間違っていなかったのだと理解する。


「手を取り合って、新しい未来を掴もう、魔王!」

「新しい未来……」


 魔王の力が、弱まっていることをアンナは感じた。

 恐らく、魔王の心に迷いが生じているのだろう。アンナは、自身の呼びかけが、ある程度の効果があると確信する。


「魔王、私達が手を取り合えば、人間も魔族もついて来てくれるはずだ。だから、私の手をとってくれ……」


 そのため、アンナは、さらに言葉を続けた。その言葉が、魔王に届くと信じて。


「くっ……」

「魔王……」


 魔王は、ゆっくりとアンナから離れていく。

 その表情には、未だ迷いが見える。ただ、アンナから離れたのは、それが片方に傾き始めたからだろう。


「本当に、人間と魔族が手を取ることができるのか……?」

「できる……少なくとも、私は魔族達とわかり合ってきたはずだ」

「……そうか」


 アンナの言葉に、魔王の表情が変わった。

 それは、安堵のような表情である。何か、付きものが落ちたようなそんな表情なのだ。


「真の平和が得られるのなら、お前の手を取るのも、悪くはないだろう……」

「魔王!」

「……俺もどこか、疲れていた。この終わりのない運命に、どうすることもできなかった……」


 魔王の口から放たれたのは、そのような言葉だった。

 それは、アンナの言葉を肯定している言葉だ。

 アンナは、ゆっくりと魔王に歩み寄る。魔王の手を取れると信じられたのだ。



「――ならん!」



 しかし、そこで、アンナにそんな言葉が聞こえてきた。

 ただ、それは魔王の口から放たれたものではない。

 それが聞こえた方向、上方向にアンナは視線を向ける。


「これは!」

「馬鹿な!」


 アンナは、ともに顔をあげた魔王と声をあげた。

 二人の視線の先には、ある男がいたのだ。


「お前は、操魔将オーデット!?」

「何故生きている!? お前は、俺の手で葬ったはずだ!」


 その男とは、操魔将オーデット。

 影魔将シャドーに扮した魔王が、止めを刺したはずの先代魔王である。

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