第134話 邪なる竜
アンナとカルーナは、魔王と対峙していた。
魔王は、邪なる闇という聖なる光と対となる力によって、アンナ達を苦しめてくる。
その実力は、アンナ以上といっても過言ではない。
「お姉ちゃん……それで、次はどうするの?」
「うん、私に一つ考えがある……」
「それって、まさか……」
カルーナの言葉に、アンナは手についている指輪を見据える。
その視線により、カルーナも気づく。アンナが聖なる指輪を使って、聖竜を呼びだそうとしていることに。
「でも、天井が……」
「大丈夫……聖竜の力で、天井は突き破る!」
言葉とともに、アンナは指輪を天に差す。
すると、指輪が輝き始める。
「む!?」
アンナの指輪から放たれた光は、この階の天井を破壊していく。
ここが最上階であるため、魔界の空が皆の目に入ってくる。
「……フルル」
そして、そこに一体の竜が現れた。
聖なる光の輝きを纏う美しき竜。
その竜の名前は、聖竜。アンナが従える最強の生物である。
「なるほど……ならば!」
「なっ……!」
魔王はアンナの呼び出した竜に少し驚いていた。
しかし、すぐに自身の手にはめている指輪を天に突き刺す。
すると、その指輪から黒い光が放たれる。
「これは……」
「俺とお前は、対となる存在……故に、俺も竜を従える」
「ガルル……」
聖竜の前に、黒い竜が現れた。
その体の色は、邪なる闇の色とそっくりだ。
「ガルル……」
「フルル……」
二体の竜は、お互いを睨みつける。
竜達も、目の前にいるのが、宿命の相手であると理解しているようだ。
「カルーナ、行くよ!」
「うん!」
「ふん!」
アンナはカルーナを抱え、飛び上がった。
それと同時に、魔王も飛び上がる。
お互いに、目指す場所は竜の頭だ。
「任せたよ、聖竜」
「うん、お願い……」
「フルル……」
アンナとカルーナの呼びかけに、聖竜はゆっくりと応える。
「行くぞ、邪竜」
「ガルル!」
一方、魔王の言葉に、邪竜は喉を鳴らす。
それぞれの竜は、再び相手を見据える。
「聖竜! 聖なる吐息!」
「邪竜! 邪なる吐息!」
二体の竜がそれぞれ口を開き、そこから衝撃波を放つ、
二つの攻撃が、ぶつかり合い、爆発する。
竜達の力は、ほとんど互角であるようだ。
「なるほど、それなら……」
そこで、魔王が邪剣を構えた。
それと同時に、邪竜が再び口を開く。
「魔王技・邪なる衝撃!」
「ガルアッ!」
魔王の攻撃と、邪竜の吐息が混ざり合い、一つの大きな衝撃波となった。
先程、アンナとカルーナがしたように、二つの力を融合させたのだ。
「カルーナ、お願いできる?」
「うん、もちろん」
「聖竜?」
「フルル」
それに対して、アンナは聖なる光を構える。
さらに、カルーナが魔力を練っていく。
そして、聖竜が口を開き、全員が一気に技を放つ。
「聖なる紅蓮の火球!」
「フルル!」
三つの力が混ざり合い、魔王側の攻撃とぶつかり合う。
あちらは二つだが、こちらは三つだ。魔王は、アンナよりも強い力を持っているが、カルーナが加わることで、その力関係は崩れる。
「むっ!?」
アンナ達の攻撃が、魔王の攻撃を突き破っていく。
三つの力が、魔王の攻撃に打ち勝ったのだ。
「邪なる闇よ! 俺達を守れ!」
魔王はその攻撃に対して、闇を展開して防ごうとする。
それでも、アンナ達の攻撃は防ぎきれない。
アンナ達の力が、魔王の防御をも突き破ったのだ。
「ガルル……」
「ぐううっ……」
魔王と邪竜が、どんどんと後退していく。
アンナ達の攻撃が、かなり効いているようだ。
「やるな……流石は、勇者だ」
「ガルル……」
「ここは、奥の手を使わせてもらおう」
「何?」
そこで、魔王はそんなことを言ってきた。
魔王は邪竜の頭に手を置き、ゆっくりと口を開く。
「邪竜一体……真竜装甲!」
「ガルル!」
「なっ! これは……」
すると、邪竜の体が変化し、闇へと変わる。
その闇は、魔王の周りに纏わりついていく。
そして、その闇は鎧のように変化する。その姿は、竜を人のように変化させた姿だ。
「な、なんだ? これは!?」
「があっ!」
魔王は飛び上がり、アンナ達の元へと向かってきた。
アンナ達は、聖竜とともに構える。
「フルル!」
「ふん!」
聖竜が口を開け、そこから吐息を吐き出す。
それに対して、魔王は邪なる闇を展開する。
その力により、聖竜の吐息を防いでいく。
「聖なる紅蓮の火球!」
「かっ!」
アンナとカルーナも、追撃を仕掛けるが、それも魔王には通じない。
先程までより、その闇の力が強力になっているようだ。
「ふん!」
「フルッ!」
「聖竜!」
「きゃあ!」
魔王の蹴りが、聖竜の頭に突き刺さった。
その衝撃で、聖竜は落下していく。
もちろん、その頭に乗っていたアンナ達も振り落とされる。
「フルル!」
その衝撃で、力を使い果たしたのか、聖竜が指輪に戻っていく。
アンナとカルーナは、なんとか着地し、体勢を立て直す。
「どうやら、形勢は逆転のようだな……」
そんな二人に向かって、魔王がそう呟いてきた。
確かに、竜の対決では優勢だったはずのアンナ達が、今は劣勢に立たされている。
それだけ、魔王の鎧化が、強力だったということだ。
「カルーナ、大丈夫?」
「うん、お姉ちゃんは?」
「かなり厳しいけど、まだいける」
アンナとカルーナは、かなり疲弊していた。
だが、まだ余力は充分残っている。
「カルーナ、魔王を倒すには、あの魔法が必要だ」
「あの魔法?」
「うん、カルーナが使える最強の魔法……消滅呪文が」
「消滅呪文……」
そこで、アンナは思いついた。
カルーナが使える最強の魔法、消滅呪文なら今の魔王に対抗できると。
そのため、アンナは一つの作戦を提示する。
「私が時間を稼ぐから、消滅呪文をお願い。それで、あの鎧を突き破ろう」
「うん、わかった……」
アンナは、カルーナを後ろに下がらせ、魔王を睨む。
すると、魔王はゆっくりと言葉を放ってくる。
「作戦会議は終わったのか?」
「……待っていてくれるとは、意外と優しいね?」
「無論、ただ待っていた訳ではない……」
アンナ達と魔王の戦いは、続いていく。




