第133話 宿命の戦い
アンナとカルーナは、魔王によって魔王城の最上階に連れてこられていた。
「ここでいいか……」
「うっ!」
「あっ!」
魔王は、最上階の奥まで行き、二人を解放する。
アンナとカルーナは、二人で体勢を立て直す。
「勇者に、その妹の魔法使いよ……戦いを始めようか」
「くっ……」
魔王の体から、黒いものを発生した。
アンナは、それが自身と対になるものであるということを理解する。
「あれが、邪なる闇……」
「その通り、お前の聖なる光と正反対の力……」
「反対の力……」
魔王が纏っているのは、邪なる闇。
魔王が持つとされる聖なる光と正反対のものである。
勇者と魔王は、幾度となくその力でぶつかり合ってきたのだ。
「カルーナ、サポート、よろしく」
「うん、任せて」
アンナは、カルーナを後ろに下がらせ構えた。
その手には、聖剣を握りしめる。
「それが聖剣か……ならば!」
すると、魔王が手を出す。
すると、その手に黒い刃が握られる。
「これは……」
「お前が聖剣なら、俺は邪剣……これが、我が武器!」
「邪剣……」
魔王が邪剣を構え、ゆっくりと近づいてきた。
そこから放たれる気迫のようなものに、アンナは少し怯んでしまう。
相手は、魔族の王である。そのプレッシャーも尋常ではない。
「喰らうがいい! 魔王技・邪なる衝撃!」
「くっ!」
魔王の邪剣から、黒い衝撃波が放たれる。
アンナは、聖剣を構え、その攻撃を迎え撃つ。
「聖なる光よ! 私を守れ!」
アンナは聖なる光を展開し、衝撃波を受け止めた。
さらに、そのまま魔王に向かって突き進む。
「はあああっ!」
「ふん!」
「くっ!」
アンナの一撃を、魔王は簡単に受け止めてくる。
その力は、アンナ以上と言ってもいい。
アンナは、自身の闘気を集中させ、魔王に対抗する。
「流石は勇者……中々の力だ」
「くっ……!」
「そして、これは聖なる光を混ぜた聖闘気……」
「だから、なんだという……?」
「くくく……」
そこで、魔王は笑う。
その笑顔に、アンナは奇妙な感覚を覚える。
「な、何がおかしい……?」
「お前が聖闘気なら、俺は邪闘気といったところか?」
「なっ!」
アンナの体が、少しずつ後退していく。
それは、魔王が新たなる力を発生させたからだ。
これが、魔王の闘気、邪闘気である。
「ふん!」
「ぐわっ!」
魔王が邪剣に力を込めると、アンナの体は大きく吹き飛ぶ。
単純な力比べでは、魔王の方が上であるようだ。
「魔王技・邪なる衝撃!」
「くっ!」
魔王の腕から、邪闘気の渦が巻き起こった。
その渦は、アンナに向かって一直線に飛んでくる。
空中でうまく体を動かせないアンナに、この一撃は厳しいものだ。
「紅蓮の火球!」
「む?」
しかし、そんな魔王の攻撃に、カルーナの火球がぶつかる。
その火球によって、魔王の渦は相殺され、アンナに攻撃が届くことはない。
「カルーナ、ありがとう!」
「ううん、お姉ちゃん!」
「なるほど……」
アンナは体勢を立て直し、再び魔王に向かっていく。
しかし、今度は正面からぶつかりつもりではない。
「聖なる衝撃波!」
「紅蓮の火球!」
アンナとカルーナは、同時に技を放つ。
すると、二つの力が混ざり合い、より強力な攻撃となる。
聖なる光を纏った闘気と魔法が混ざり合ったものは、一直線に魔王に向かう。
「聖なる紅蓮の火球!」
「ふん!」
それに対して、魔王は邪剣の形を変えていく。
「邪なる闇よ! 俺を守れ!」
「あれは!?」
魔王の周りに、闇の壁ができあがる。
それは、まるでアンナの防御方法のようだ。
「むうっ!?」
しかし、それでもアンナ達の攻撃は強力だった。
それにより、魔王の体は後退していく。
だが、闇の壁を突き破ることは叶わない。
「駄目か……」
「ふっ! 中々悪くない攻撃だ……」
魔王は、笑みを浮かべながら、アンナ達を称賛する。
恐らく、その笑みは余裕からくるものではなさそうだ。
「楽しそうだな……魔王」
「楽しい? ふっ! そうかもしれんな……」
「魔王……?」
アンナの言葉に、魔王は頷く。
その様子は、最大の敵と対峙しているこの状況にそぐわない。
人間と魔族の決着をつけるための戦いであるというのに、それはおかしな話だ。
「俺を追い詰める者など、ほとんどいない。故に、お前との戦いは、俺の心を躍らせる……」
「何……?」
「ふふっ……」
アンナは、魔王の様子に驚いた。
この状況で、本当に戦いを楽しむことなど、アンナには理解できない・
「お前は楽しくないのか? 勇者?」
「私は、楽しくなんて……」
「ふん! つまらない奴だな……」
魔王は、アンナに対してそう言ってきた。
そこで、魔王は表情を変える。
それは、アンナをあざ笑うような表情だ。
「それとも、まさか、お前は俺を倒せば全てが解決するとでも思っているのか?」
「何?」
「はっ! 本当に、わかっていないのだな……」
「何が言いたいんだ?」
アンナに対して、魔王は笑う。
その表情は邪悪であると共に、どこか諦めているようでもある。
「仮に、俺を倒したとしても、新たなる魔王が生まれるだけだ。そうすれば、お前はまた戦うことになる」
「そ、それは……」
「逆も同じだ……つまり、俺とお前には破滅の運命しかない」
「……」
「故に、俺は今この瞬間を楽しむことしか興味がない。いずれ滅びるのならば、それ以外の道などないのだ!」
魔王の体から、邪なる闇が発生していく。
それは、アンナとカルーナの上空に漂う。
それは、雲のような形に変化していく。
「カルーナ!」
「うん!」
二人は、その闇から何かが起こると思い、その場から離れようとする。
しかし、それより先に魔王が動き出す。
「魔王技・邪なる雨!」
「これは!?」
アンナ達の頭上から、黒い雨が降り注ぐ。
アンナは咄嗟に聖なる光を展開し、自身とカルーナを守る。
二人は聖なる光の中で、待機するしかない。
「魔王技・邪なる衝撃!」
「くっ!」
「お姉ちゃん!」
そんな二人の元に、魔王の攻撃が飛んでくる。
その一撃により、聖なる光が揺らぐ。
「カルーナ、下がって!」
「……うん!」
次の瞬間、聖なる光が破られた。
それに合わせて、二人は大きく後退する。
ただ、上から降り注ぐ雨を防ぐことはできない。
「くっ!」
「きゃあ!」
二人は雨に引き裂かれながらも後退していく。
すると、闇の雲がない場所まで避難することができる。
「……カルーナ、大丈夫?」
「うん、まだ大丈夫……」
二人の体は傷ついたが、致命的になるようなものではなかった。
広範囲の攻撃故か、一つ一つの威力は低かったようだ。
「やっぱり、魔王は強い……」
「うん、でも、諦めちゃ駄目……」
「もちろんさ」
アンナとカルーナはゆっくりと構え直す。
二人と魔王の戦いは、続いていく。




