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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第八章 魔界決戦

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第132話 聖女と竜人

 ガルスとティリアは、影魔将シャドーと対峙していた。

 ガルスは着地しながら、シャドーを見据える。


「……」

「まだ、息はあるか……」


 ガルスの一撃により、シャドーの意識は刈り取れた。

 しかし、まだ死んではいないようだ。


「ガルスさん!」

「ティリア……」


 そんなガルスに、ティリアが駆け寄ってきた。

 その表情は、少し心配そうだ。


「大丈夫ですか? 今、回復魔法を……」

「いや、待て」

「え?」


 回復魔法を放とうとするティリアを、ガルスは引き止めた。

 ガルスは、自身に回復魔法がかけられることは望んでいない。

 なぜなら、次の戦いにガルスが参戦できないからだ。


「こう見ても、俺の体は既に限界だ。回復しても、アンナ達の力にはなれん」

「そ、そんなことは、関係ありません。傷ついている人を助けるのが、私の役目です」

「外傷は特にない。問題は内面の方だ。俺は、闘気を使い果たしてしまった。これは、お前の回復魔法でも治るものではない」

「そ、それは……」


 ガルスの体は、直前にシャドーに締め付けられてできた跡以外は、傷も見当たらない。

 そのため、ガルスの言っていることは、ティリアも理解できる。


「ティリア、お前の残っている魔力は、アンナ達のために使え。必ず、お前の助けが必要になるはずだ」

「……わかりました。私、アンナさん達の所に行きます」

「ああ、それでいい……」


 ガルスの言葉に、ティリアはゆっくりと頷いた。

 そして、すぐに行動を開始する。

 ティリアは階段を駆け上がり、やがて見えなくなるのだった。


「ふっ……」


 ティリアが見えなくなってから、ガルスは笑う。

 その笑いは、あることについての笑みである。


「ぐっ……」


 次の瞬間、ガルスの体から鮮血が噴き出す。

 ガルスはゆっくりと膝をつき、さらに倒れ込む。


「なんとか……誤魔化せたようだな」


 ガルスの笑みは、ティリアを誤魔化しきれたことからくる安堵の笑みであった。

 ガルスが最後に放った技は、全ての闘気を注ぎ込んだ最強の一撃である。その技の負担により、傷口が開いてしまったのだ。

 回復魔法を受けたとはいえ、ガルスの傷が完全に塞がった訳ではない。その状態で、最大限の力を出し切る一撃を放ったため、体が耐えきれなかったのだ。


「はあ、はあ……」


 しかし、ガルスもそれは承知して放った。

 全ては、影魔将シャドーを葬り去るためである。

 結果として、シャドーの意識を刈り取れたので、ガルスは自身の役目を果たせたのだ。


「少々疲れてしまったな……」


 ガルスは自身の状態をティリアに知られる訳にはいかなかった。

 ティリアが無駄に魔力を使えば、魔王と戦っているアンナを助けられないかもしれない。

 それだけは、なんとしても避けなければならなかった。戦えないガルスよりも、戦えるはずのアンナを助けることの方が、絶対に役に立つだろう。


「ウォーレンスにやられてから、この体には無理をさせ過ぎたからな……」


 ガルスの体は、最早限界だった。

 元々、ウォーレンスにやられてから、ガルスはボロボロの体で戦ってきたのだ。

 ここまで来て、その限界がやってきたのである。


「少し、眠るか……」


 ガルスは、ゆっくりと目を閉じた。

 ガルスの意識が、だんだんと薄れていく。


(アンナ……お前なら、きっと魔王に勝てるはずだ)


 薄れゆく意識の中で、ガルスが最後に思ったのはそんなことだった。




◇◇◇




 ティリアは、階段を駆け上がっていた。

 ティリアが目指しているのは、アンナとカルーナ、そして魔王がいる最上階である。

 そこで、戦いが繰り広げられているはずなのだ。


「アンナさん、カルーナさん、どうかご無事で……」


 アンナ達が連れていかれてから、ガルスがシャドーを倒すまでは、それなりの時間があった。

 そのため、アンナ達がどうなっているかわからない。

 傷ついているだけなら、ティリアの回復魔法で回復できる。だが、もしものことがあったら、ティリアにもどうすることもできない。

 よりによって、相手は魔王だ。本当に何があるかわからない。そのことは、ティリアにとって恐怖でしかないのだ。


「きっと、大丈夫……」


 ティリアは、自分にそう言い聞かせ、足を進める。

 きっと、アンナ達が無事であると信じて。

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