第114話 魔界へ
アンナ達は、魔界への突入を決めていた。
「よし、連絡はついたよ。それと、ヴィクティスやレミレア達にも通信が通じたみたいだ。二人とも、嵐によってアストリオン王国に戻されていたらしい」
「そうですか、とりあえず無事ならよかったです。それで、王様達はなんと?」
「ああ、僕達の進行に、反対はないらしい」
「それなら、大丈夫そうですね……」
一つ心配だった王達からの許可も出たようだ。
つまり、これで魔界に行くのに問題はなくなった。
「どうやら、タイラーンの作り出した嵐は相当強力らしく、自然に止むのを待つか、打開策を見つけるか、どちらにせよそれなりの時間がかかるそうだ。その隙に、魔族に体勢を立て直されるのはまずいらしい。だから、魔族に何かあった今攻められるなら、そうしれほしいそうだ」
「なるほど……」
「ただ、危険そうなら引くことも考えて欲しいとも言っていた。勇者を失うのは、かなり厳しいらしいからね」
「はい、それは心得ています……」
教授の言葉に、アンナはゆっくりと頷く。
当然、アンナも今から死ぬつもりも死なせるつもりも毛頭ない。
皆で生きて帰れるなら、引くことも考えるつもりだ。
「それなら、問題はないね……」
「はい、それじゃあ、皆、行こう!」
アンナの合図で、一同は門へと入っていく。
いよいよ、魔界へと突入だ。
◇
アンナ達は、真っ黒な道を歩き続け、開けた所に出てきた。
その光景に、人の世界しか見ていなかった者達が、声をあげる。
「こ、これが……」
「魔界……?」
「なんだか、暗い……?」
「ああ、なんというか、あっちと全然違うな……」
「なるほど、興味深いね……」
紫の空に赤い月、大地にも緑はなく、全体的に暗い色。それが、魔界の光景だ。
「……暗いか、その感想も当然だろう」
「ああ、人間達の世界に比べたら、そうだろうな……」
ガルスとツヴァイは、アンナ達の感想にそう呟いた。
二人から見ても、魔界は人間の世界に比べて、暗いようだ。
「ガルス、ツヴァイ、あれって一体……?」
そこで、アンナは魔界を知る二人に話しかけた。
周りを見渡した時、遠くの方に町のようなものが見えたからである。
それが、なんなのか、聞いておきたいのだ。
「あれは、魔族達が暮らし町だ。人間達と変わらない、戦いを知らぬ民達が暮らす場所だ」
「ああ、あそこは丁度、魔王の膝元ということもあり、中々大きな町だったな……」
「魔族の民達が……」
アンナの言葉に、二人はそう答えてくれた。
その答えに、アンナは驚いてしまう。
「……魔族も、そんな風に暮らしているんだね……」
「ああ、もちろんだ。ただ、ここで暮らしている者達の半分くらいは、人間と争っている自覚など持っていないだろうがな……」
「え?」
「人間は魔族からの侵攻を受けている。魔族は人間の侵攻を受けていない。それにより、民の意識にも差があるのだ」
「そっか……」
アンナの呟きに、ガルスが続いた。
ガルスの言ったことが、いいことなのか悪いことなのか、アンナにはわからない。
「……もし、私達が魔王を倒したら、どうなるんだろう? 人間が勝ったら、魔族の領域に侵攻するのかな?」
「お姉ちゃん……?」
アンナは思った。
確かに、魔族は人間側に侵攻してきたが、あの町で暮らす人々は関係ないはずだ。
そのため、人間側が勝利した後、あそこにいる人々の暮らしは、脅かされるのは嫌だった。
アンナは平和に暮らす人々のために戦うことを決めたのだ。その思考は魔族にも適用されるのである。
なぜなら、魔族も人間とさほど変わらないとアンナは知っているからだ。
「アンナ、お前の考えは、俺にとってありがたいことだ。ただ、今はそれを気にする必要はない」
「ガルス……」
「お前が考えるべきは、魔王を倒すことだ。後のことは後で考える。それでいいだろう」
色々と考えていたアンナだったが、ガルスの言葉でそれをやめる。
ガルスの言う通り、今それを考えても無駄だと思ったからだ。
「わかった……それじゃあ、魔王のいる場所に向かおう。それで、戦いを終わらせるんだ……」
「ああ、それでいい。魔王がいるのは、魔王城という場所だ。ここからも、近い」
ガルスとツヴァイの案内で、アンナ達は進んで行く。
いよいよ、魔王との戦いが始まるのだ。




