第108話 王国軍集結
ボーデン達と教授の船造りが始まって、数日が経った頃、アンナ達は呼びだされていた。
どうやら、船が完成したようである。
「おお、来たか、お前ら」
「皆、揃っているようだね」
アンナ達が来ると、ボーデンと教授が話しかけてきた。
その顔は、どことなく嬉しそうに見える。
「船が完成したんですね」
「ああ、強力な船ができたぜ。これで、海魔団と戦えるはずだ」
「船は、数隻ある。この船を使って、海魔団との戦いを行う。今、アストリオン王国軍がこちらに向かっている。明日には着くだろう」
アンナの言葉に、ボーデンと教授はそう答えた。
いよいよ、海魔団との戦いが始まるのだ。
◇
ボーデンと教授の言葉通り、後日はアストリオン王国軍がやって来ていた。
アンナ達は、やって来た王国軍に驚くことになっている。
なぜなら、やって来た王国軍には、意外な人物がいたからだ。
「皆さん、お久し振りです」
「皆よ、久し振りだな」
それは、アストリオン王ヴィクティスとエスラティオ王国女王のレミレアである。
ヴィクティスに関しては、アストリオン王国軍について来たということでまだ理解できた。
しかし、レミレアに関しては、何故ここにいるのか、皆わからないのである。
「ふむ。妾が、ここにいることに、驚いておるのか?」
「今回の戦いについて、各国に通達したのですが、流石に時間がかかり、援軍は難しいと思っていたのです。ただ、レミレア女王は、オルフィーニ共和国復興のために現地にそれなりの兵を連れて滞在していため、こちらに駆け付けてくれたのです」
「……そなたは相変わらずだな。もう少し、引っ張ってもよかったと思うのだが……」
アンナ達の疑問は、ヴィクティスが答えてくれた。
レミレアは、それに対して不満気だ。
その内容から、ヴィクティスとレミレアは旧知の仲であるらしい。
「相変わらずなのは、君も同じだね、レミレア」
「教授、それはお互い様だろう?」
「ふふ、そうかもしれないね」
「そなたには、謝っておかんとならんな。妾の独断で、勇者一行をそなたの元へ向かわせてもらった」
「ああ、それは構わないよ。予測していたことだからね」
そこで、教授もレミレアと会話し始めた。
やはり、教授はレミレアと親しいようだ。
「おお、そうだ。そなたらにも嬉しい助っ人も連れて来たぞ。ほれ、プラチナス」
「レミレア女王様、引っ張らないで下さい……」
レミレアが来たということで、プラチナスもここに来ていた。
彼は捕虜のはずだったが、随分と自由な身であるようだ。
そして、プラチナスはレミレアとかなり親しくなったように見える。
「レミレア女王様、あなたはもう少し、大人としての落ち着きを……」
「プラチナスよ。ここは、説教の場ではないぞ」
「いえ、あなたのその行動に、私がどれだけ心配していることか……」
「そなたは、心配性だな」
プラチナスは、しばらく見ない内に、臣下のような態度になっていた。
レミレアも、それも特に気にしていないようだが、かなりおかしい状態に見える。
一体、彼に何があったのか、アンナ達は少し不思議に思うのだった。
「さて、皆さん。そろそろ、戦いの相談をしましょうか」
そこで、ヴィクティスの一声が響く。
その言葉に、全員が気を引き締める。
「これから、アストリオン王国軍、エスラティオ王国軍、勇者一行で、海魔団を討伐しに行きます。アンナさん、海魔団についての情報は、兵士達から聞いていますね」
「はい。王都を出る前に、聞いています」
「そうですか。ただ、念のため、海魔団の情報を振り返っておきましょう」
アンナ達は、王都を出る前に、海魔団の情報は得ていた。
しかし、ここで一度振り返るようだ。
皆の認識を確かめるため、これは必要な作業である。
「海魔団は、水棲魔族によって、構成された魔王軍の海上戦担当です。現在は、アストリオン王国とウィンダルス王国の北に位置する海を占拠しています」
「ええ、そのせいで、二つの王国の行き来が難しくなっていたんですよね」
「はい、その通りです。そして、その海魔団を率いているのが、海魔将タイラーン」
そこで、ヴィクティスは口にした。
海魔団を統べる魔将の名前を。
「タイラーンは、トリトンという魔族だ」
その言葉を引き継いだのは、ガルスだった。
魔族のことなら、彼が一番よくわかっているため、言葉を放ったのだろう。
「トリトンは、下半身が魚で、上半身が人間の魔族だ。そのため、海上戦闘では無類の強さを誇るだろう。その中でも、タイラーンは最強とうたわれている」
「やはり、海魔将だけあって、一番という訳だね」
「奴は、体を巨大化させることもできる。それは、船と同じ大きさだ。よって、ただの船なら一撃で砕いてしまうだろうな」
「巨大な敵というのは、初めてだね」
「ああ、かなり厄介な相手だろうな」
アンナは、タイラーンとの戦いを予想する。
恐らく、また激闘になるのだろう。
そのことに、アンナの体は震えてしまうのだった。




