第103話 勇者と獣王
アンナは、狼魔団との戦いを終わらせ、カルーナ達の側に来ていた。
そこで目に飛び込んできた光景は、獣王がカルーナに腕を振り上げている場面だ。
そのため、アンナは闘気を集中させ、獣王を威嚇したのである。
「お姉ちゃん……!」
「カルーナ……!」
アンナはゆっくりとカルーナの元へと近づいていく。
「何故、動けん?」
獣王の動きは、アンナの放った闘気によって封じられていた。
その手を振り上げたまま、動かないのである。
獣王は、そのことに驚いているようだ。
「行くぞ……!」
「むっ!?」
「はああああっ!」
「ぐううっ!」
そんな獣王に、アンナの剣が振るわれる。
その攻撃によって、獣王の体は大きく吹き飛ぶ。
「お姉ちゃん、気をつけて。獣王は、普通に攻撃しても、再生してしまうの」
「再生? だけど、あいつの体はボロボロだよ?」
「あれは、消滅呪文の効果。それでも再生されるから、なんとかして消滅呪文を当て続けなきゃダメなの」
「なるほど……つまり、止めはカルーナか教授ってことか……」
カルーナの言葉で、アンナは獣王の力を理解する。
そして、自身にできることが、カルーナや教授が魔力を溜めるための時間稼ぎということもわかった。
「カルーナは、魔力はどう?」
「それが、私は駄目そう。体の魔力を、ほとんど使い果たしちゃったみたい……」
「それなら、なんでここにいるかわからないけど、教授に頼らせてもらおう」
カルーナの魔力は、もうほとんど残っていないようだ。
そのため、アンナは遠くにいる教授に頼ることにする。
恐らく、教授も状況を理解しているはずだ。
「それじゃあ、カルーナ、行ってくる」
「うん、頑張って、お姉ちゃん」
その言葉を合図に、アンナは歩いて行く。
目線の先には、獣王がいる。
「勇者アンナか。面白い!」
獣王は、既に体勢を立て直していた。
その顔は笑っており、嬉しそうだ。
「貴様がこちらに来たということは、ウォーレンス達は失敗したということか!?」
獣王は、アンナに向かって話しかけきた。
どうやら、アンナが狼魔団と戦っていたことを理解しているようである。
アンナは、特に隠す必要も感じなかったため、獣王に狼魔団の壊滅を話すことにした。
「そうだ。ウォーレンスには逃げられたが、獣王親衛隊とやらは、もう倒してきた」
「なるほど、ウォーレンスは逃げたか! 相変わらず、卑劣な奴だ!」
味方が敗北したというのに、獣王の顔は崩れておらず、むしろ楽しそうなくらいだ。
「味方がやられたというのに、嬉しそうだな……お前は、圧倒的に不利だぞ」
「不利? それは違うな。俺一人いれば、国の一つくらいは潰せる。故に、何も悲観することはない。むしろ、奴らを倒した圧倒的強者と戦えることが楽しみなくらいだ」
アンナの疑問に対して、獣王はそう語る。
その考え方は、アンナにはまったく理解できないものだった。
それを嬉々として話す獣王に、アンナは恐怖さえ覚えてしまう。
「さて、そろそろ始めるか!」
「くっ!」
そこで、獣王が一気に体を動かす。
どうやら、話は終わりのようだ。
アンナもそれを認識し、一気に獣王に近づいていく。
「喰らえ! 獣王波!」
獣王の体から、闘気が放たれた。
その闘気に対して、アンナも聖闘気を放出して対抗する。
「はああああっ!」
「むうううっ!?」
二つの闘気がぶつかり合い、大きな衝撃と化す。
だが、二人ともその闘気をものともせず、お互いに向かっていく。
「十字斬り!」
「ふん!」
獣王の爪と、アンナの聖剣が重なり合う。
「ぬううっ!?」
打ち勝ったのは、アンナの方だった。
獣王の爪が、崩れていく。
しかし、すぐにその爪は再生する。
「これが、再生能力か……!」
アンナは獣王の再生能力を認識した。
恐ろしい程の再生速度に、アンナは思わず驚いてしまう。
「だけど!」
だが、アンナはすぐに思考を切り替える。
「はあああっ!」
「ぬううっ!」
アンナの一閃が、獣王の体を切り裂く。
その衝撃で、獣王の体が動きを止める。
「まだまだ!」
アンナは、さらに攻撃を加えていく。
獣王が再生しても、何度も切り裂き、その体を動かせない。
「中々やるな! 勇者!」
しかし、獣王もただやられるだけではなかった。
「獣王波!」
「くっ!」
獣王は、アンナの隙を突き、闘気を解放してくる。
その衝撃で、アンナは少し後退してしまう。
すると、獣王の体がどんどんと再生していく。
「ふん! 残念だったな!」
獣王の体は、消滅呪文によって削られていた部分まで再生していた。
このままでは、完全に回復されてしまうだろう。
「くっ! やはり、手強いか……」
アンナは、獣王の強さに驚きながらも体勢を立て直す。
アンナ達と獣王の戦いは、続く。




