弟子?
特に苦労すること無くウールの街に入ることができた。冒険者証を門番の人に見せることで簡単に入る事ができたのだ。
アルゥの事は聞かれたはしたのだが、街道沿いで保護した旨を伝えると驚くほどすんなりと入れた。
…けっこうガバガバば気もするが…大丈夫なのだろうか?まぁ、それはともかく泊る場所を探さなければ。
宿屋を探して適当な宿屋に入るのだが…残念なことに雑魚寝しかない宿屋が多く、割高なものの個室のある宿屋を見つけたのは、とっぷりと夜が更けてしまってからだった。
変身はどうしたのかというと…こんな人の目が気になる場所で解除して周りやアルゥを驚かして騒ぎになる様なことはしたくなかったので変身が切れる前にわざわざ人の目が着かない場所に行き、
その前でアルゥを待たせた後、解除、再度変身を行なった。…正直だいぶ面倒だった。
「ごめんね。だいぶ歩かせちゃって」
「ううん。大丈夫。長時間作業するのは慣れてないことは無いから…」
そうは言うものの目が閉じかかっているのでだいぶ眠そうだ。夕飯は宿屋を探しているときに適当に屋台で買い食いをしたのだが…これからのことを言うのは…今夜は無理そうだ。
おとなしく今夜はもう寝て明日の朝に話そう……あっ…気を抜いてたら変身の効果時間が切れた…
いつものようにボクの体が魔力による光に包まれる。するとアルゥから驚きの声が上がった。
「うわっ!?なに!?姉ちゃん大丈夫か!?」
もう何度も見てきたこの光景にまたか…などと思いつつも光が収まった。
「え?あれ?フウガ姉ちゃんは?というか兄ちゃん誰…?」
「…僕が楓翔だよ。これが本来の姿さ」
アルゥはまだ目を白黒させて混乱しているようで…
「いや、だってフウガ姉ちゃんは女の人で、兄ちゃんは男の人だろ!?」
「まぁ、うん…そういう[特技]なんだよ…」
これまた打って変わって唖然とした顔になった。
「ほんとかよ!?い、一回見せてもらってもいい?」
「あぁ。わかった。それでわかってもらえるならな…」
じゃあ行くぞ?と言ってから変身、狼娘!と念じる。たちまち魔力による光が僕を包む。数秒後、変身が終わった。
それを見たアルゥは上ずった声で喋る。
「うわぁ!本当だ!兄ちゃんが姉ちゃんになった!」
…口に出して言わないでも…
あまりのことに顔をうつむいて耐えているとアルゥがまた話し出す。
「ていうかなんて呼べばいいんだ?おねにいちゃん?」
「おねにいちゃんは勘弁して…」
「わかった!姿にあった呼び方するよ姉ちゃん!」
姉ちゃんは変わらないんだな…
「いつも兄ちゃんでいいんだよ…?」
「それじゃあ街中で呼ぶとき変でしょ?」
…正論というか…半ば答えがわかっていたことを言われて、黙るしか無かった。挙げ句の果てに兄ちゃんよりも姉ちゃんの時の方が似合ってるなどと言われ、無言でベッドに倒れ込んだ。
翌朝目が覚めると、アルゥはもう起きており、窓の外をぼーっと眺めていた。
どうした?と聞くと、「人がいっぱいいる!すごい!」と言われた。そういえば昨日はウールをどう越えたのかと聞いたところ、街には入れないので壁に沿って迂回してきたのだという。
目が覚めてきたのでこれからの話をしよう。
「これから王都に向かうわけだが…王都に入ったら冒険者になるんだよね?」
「うん!そのために家を出てきたから…」
「なら僕の部屋に泊らないか?そのほうが宿代も多少浮くだろう」
「そんな!悪いよ!もうこんなにお世話になってるのに」
「でもお金無いでしょ?」
「うん…でも…いいの?」
「あぁ。ここまで来たら放ってはおけないしな」
「…ありがとう」
さて、今後の話もしたし…朝食を食べて王都に帰ろう。
ウールの乗り合い車を探すと、昨日王都で乗ってきた時の乗り合い車の運転手のおっちゃんに会った。
おっちゃんによると、昨日は何回か王都、ウール間を往復したが王都へ向かう最後の便で僕が帰らなかったので、王都で心配している人がいるという。
カインあたりだろうか…変な心配させてしまった。でも冒険者だから多少アクシデントはつきものだと思うけどな…いちいち心配してたらきりが無いとは思うけど…そう考えるとカインは過保護なとこがあるなぁと思いつつ、乗り合い車にアルゥと共に乗り王都へ帰った。




