弟分?
1ヶ月空いてしまった…申し訳ないです。
来た道を戻るように、街道へと歩く。ふと沈みゆく夕日の方を見ると、遠目にウールの街が西日によって影がうっすらと見えた。
「来たときは気付かなかったけどけっこうウールに近かったんだなぁ……んん?」
ウール方面から街道を小さな人影がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。ここからだと遠くて見えないが…子供だろうか?でもこんな夜も近い時間に子供が歩いているだろうか?そう考えているうちにはっきり姿が見えるほど近くに来た。やはり子供だ。なぜこんな場所子供が一人で…?
王都近辺だとしてもここから王都までの道は危険が無いというわけではない。しかもここから王都までは乗り合い車でも時間がかかるくらい遠い。
…さすがにほっとくわけにはいかない。とりあえず事情を聞いてみよう。背格好からして男の子であろう子供に近寄る。
男の子もこちらに気付いたようでボクの顔を見た後見られているのに気付きボクの姿を観た後見た後はっと下を向いた。
いやなんで下を向いたんだ?…あぁ、あの子は男の子でしかもボクは今女の子か……そう思うと恥ずかしくなってきた…いやいや恥ずかしくなる必要ないだろ!明らかに年下だろうし……一旦落ち着こうか。
んなことを考えているうちに目の前まで男の子が来たので話しかける。
「ねぇ君、なんで一人でこんな場所一人で歩いてるの?王都まで行くつもりならまだ遠いしこの街道も絶対に安全って訳じゃないんだよ?」
……なんか女の子っぽく喋りかけてしまった気がする。特に意識してなかったんだが…いや、それよりこの子の事だ。
西日でよく見えないが…素朴な少年?といった所だろうか。その少年は一瞬言葉に詰まった後、話しだした。
「えっと…俺、家出してきたんだ。でも全然お金持ってなくて…だからせめて王都まで行って泊る場所を探そうって」
家出…か。ただどうやってお金を稼ぐつもりだったのだろうか。やはり冒険者か?いろいろ聞きたいことはあるが今は…
「そっか、でもさっき言ったように王都まではまだ遠いから今日はウールまで戻ろう?」
「でも…お金が無くて…」
「それくらいボクが払ってあげるから、ね?」
「…わかった。ありがとう。お姉ちゃん」
「おねっ…いやなんでもない。じゃあ行こうか。」
「うんっ」
男の子と一緒に街道沿いにウールへ向かう。そういえば名前をまだ聞いてなかった。
「君、なんて名前?」
「えっと、アルゥっていうんだ。」
「アルゥか。ボクは楓翔っていうんだ。」
「フウガ…さん?変わった名前だね!お姉ちゃん!」
とアルゥは無邪気に笑う。
「いや…おね…」
…名前に馴染みがなさ過ぎて男っぽい名前とかわかってないのか。
「?どうかした?」
「いやなんでもないよ…なんでも…そ、そういえばなんで家出してきたの?」
そうか…お姉ちゃんか…しょうがない…のか?と思いつつ半ば強引に話を変える。
「えーっと、果物とか野菜とかをそだててる村にいたんだけど継ぐのが嫌で抜け出してきたんだ」
なるほどな。ただ継ぐ子がいなくなったらアルゥの親は困るんじゃ無いだろうか?
「家出してきて大丈夫なの?家を継ぐ人がいなくなったらお父さんとお母さんは困るんじゃない?」
「うん。大丈夫…だと思う…弟がいるから。俺、[特技]が弓術なんだ。でも畑仕事で食べてるからこんな[特技]を持ってたんじゃ意味なくて。しかもまだ弓も引けなくて。それに昔から俺冒険者になりたかったんだ!だから、弟が…弟の[特技]が畑作だったからこれで俺がいなくても大丈夫だろうって。けっこう貧しかったから一人分食べる量も浮くしいいだろうと思って。だから家出してきたんだ。」
…思ったより深い話だった。もっと短絡的に家を出てきたのならこのまま村へ連れて行こうかとも思ったのだが…この子はこの子なりに考えて家出をしてきたみたいだ。
なら止めるわけにも行くまい。アルゥにはアルゥの人生がある。それにボクが口を出すのは無粋だろう。ただ…このまま放っておけないのも事実だから…手助けはしようと思う。
「そっか…」
いろいろ考えはしたが着いて出た言葉はこれだけだった。自分がこれくらいの年齢の時はこんなに物事を考えられただろうか?いや、考えていなかったな。
また、元の世界との違いを感じ、久しぶりに随分遠いところまで来たと感じた。
とりあえず、ウールで宿屋を探して明日王都に帰ろう。そう思い、もうすぐ着くウールの門へ歩みを進めた。
…やっぱお姉ちゃん呼びはむず痒すぎる。




