表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/35

火×水

いや…ほんと、遅くなって申し訳ないです。

赤級冒険者になってから2日後。昨日は1日ゆっくり休んだので今日は張り切って依頼を受けようと思う。



ギルドへ向かい、一階中央の依頼掲示板に向かう。

そういえばちゃんとこうやって掲示板で依頼を選ぶのは初めてだな…と掲示板を見る。が、赤級冒険者が受けられる依頼はもうほぼ張り出されていなかった。

もう無いのか…たしかに割のいい依頼は早い者勝ちだし当然っちゃ当然か。次からはもっと早い時間に来れば依頼は残っているだろうか。

依頼が無いんじゃ今日は常時依頼を受けようかな。出発する前にエルさんに挨拶しよう。ということでいつもの受付に足を運ぶ。


「おはようございます。エルさん」


「おはようございます。今から依頼ですか?」


「はい。でもこの時間だと依頼がほぼ無いですね」


「そうですね。赤級冒険者の受けることができる依頼は今日だと朝一で依頼の受付はほぼ終了しましたね。ということは常時依頼をお受けになるんですか?」


「ええ。小金持ちになったにしても1日何もしない訳にもいきませんから」


「そうですか。良い心持ちだと思います。あ、でも一昨日トレントを倒したついでにスライムも多く倒していただいたので

今は東南の森にはあまり魔物がいないはずです。だから他の場所に行くことをおすすめします」


他の場所か、そういえばこの世界に来て王都と東南、西南の森意外に行ったことないな。そろそろ少し別の場所に行ってみるのも良いかもしれない。


「他の場所ですか。どこかここが良いんじゃないかって場所はあります?」


「そうですね…少し遠いですが…王都の西にも森がありまして、そこならスライムもウルフも出るはずなので丁度良いと思いますよ。」


「西にある森…わかりました。行ってみます!」


「はい。いってらっしゃい。お気を付けて」


どうせなら西の大門から出てみよう。そもそも西の主要道路にも行ったことなかったな。知っている場所が増えるのは良いことだ。

城壁沿いに歩いて行けば迷うことはないだろうし行ってみよう。

ということで騎獣舎を横目に西の大門へ向かう。



1時間ほど歩くとやっと西の大門が見えてきた。さすがに王都だ、とても広い。これだけ距離があるとなると移動手段が欲しくなってくるな…

前の世界にはあった自転車がどれだけ便利だったかがわかる。今から行く西の森は王都より隣町であるウールの方が近いようなので近くの街道までは

ウール行きの乗り合い車に乗ろうかな。


乗り合い車で街道を西に進む。乗り合い車の料金は400イムだった。ただ本来だと500イムのようなのだが途中までと言うことで少しまけてもらった。

他の乗客とは同じ馬車に乗っているものの特に何かを話すわけでもなく無事森の近くで降ろしてもらった。


街道から見えた森に入ってしばらくするとちらほらと魔物が出てくるのが見えた。出てくる魔物はスライムやらウルフなので苦戦することもない。

スライムは火魔法を当てるだけだしウルフに至ってはほぼ群れていない限り牙を剥いて突っ込んでくるだからカウンター気味に剣を横薙ぎにヒットさせれば

倒すことができることに気付いた。



数時間経った。だいぶ疲れてきたのでそろそろ切り上げよう。この魔石を全部換金したらなかなかの金額になるな。

そう思い手持ちの金がまた増える事に歓喜する。

ただ…


ちょうど森を抜け、薄暗くてあまり気にならなかった服が肌に張り付く感触に顔をしかめる。


「ウルフを簡単に倒せるのは良いけど返り血が激しいのが難点だな…あぁ、そうだ。魔法があるんだからこの場で水を被れば血は取れるな」


とりあえず水を手のひらに出す。出した水は常温だがそのまま浴びるとさすがに冷たい。

なら火魔法の応用でこの水を温めることができるんじゃないか?

早速やってみよう。


作り出した水の中に火魔法を作り出してみる。すると水の中に一瞬火が出現したがすぐに消えた。

試しに使ってない左手で水を触ってみる。…大して変わっていないな。


「火魔法をもっと強く出してみるか」


先程よりも火を強くする。…強くし過ぎたかもしれない。

水の中に火が出て消えたのは同じだが、今度はボッッと音がして水が泡だった。湯気を制御はできそうにないので手のひらの水から湯気が立ち上るのが見える。


「強くし過ぎて沸騰したな…」


これじゃ被ったら火傷するな…どうしようか?いや、あぁ、水を足せば良いだけか。

水をまた手のひらの水の中に作り出して冷ましていく。冷ますのに何回か水を足したので良い感じの温度になる頃には水を被るにはちょうどいいくらいの湯量になった。

これで浴びることができる。どうやって浴びようか…うーん、頭の上でこの湯の玉の制御を解除すればいいか。


右手を頭の上に上げて魔力の制御を手放す。すると狙い通り、頭からお湯を被ることでだいたいの血を流すことができた。


「よし、上手くいったな」


…いやまて、上手く行ったはいいけど濡れたまま帰るのか…風邪をひきそうだ。汚れを落とすことに執着しすぎてこの後のこと考えてなかった。我ながら鈍くさい。

そうだ、ドライヤーみたいに温風で乾かすか…?いや、風魔法はあまり自信が無いし水と違ってぶっつけ本番じゃ火傷じゃ済まないかもしれない…止めておくか。

他に何か方法は…そうだ。


「変身すれば変身後のいつものワンピースは濡れてないかも?」


濡れたままじゃそろそろ風邪をひいちゃいそうだな…うん。しょうがない。これは必要だから変身するんだ。

そう心の中で自分に言い聞かせながら変身を…あーどの姿がいいかな…狼でいいか。変身、狼娘!


視界が見えなくなると同時に肌に張り付いた服の感覚が消え、ひらひらとした布の感触がした。

どうやら上手くいったみたい。変身が終わりいつものワンピースを確認のため見るとちゃんと肌の感触通り、濡れていないのがわかった。

ついでに最近は意図して気にしないようにしていたすーすーする感覚に自分以外誰もいない事が解っていても若干恥ずかしさを覚える。


「さて…早いとこ帰ろう」


早く帰って元の姿の服を洗わなければ。

なんやかんやしているうちにだいぶ傾いてきた陽を横目に、来た道を辿って街道へ歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ