解体とガウルフ肉
日にちが開いてしまった…
王都への帰り道、ヘルミネは通常のウルフ、ボクがガウルフを担いでいるが[怪力]のおかげで重さを感じない。
南の大門に着いたが……視線が凄い。なぜだ…?前みたいに血塗れじゃ無いのに……あぁ、そうか、女の子二人が魔物を担いでりゃ嫌でも視線は集まるか。
違和感なく女の子二人って思ったことに溜息をつきつつ検問の順番が来た。今日の検問はカインではなく別の若い男の人だ。
「次の人ー…身分証を見せてくださいっす」
あらかじめ出しておいた冒険者証を渡す。
「えっとヘルミネさんと……男の人……?名前は…あぁ、フウガさんっすね。どうぞー」
随分すんなり入れそうだ。この驚かないなんて珍しい。そう思ったときには口に出ていた。
「驚かないの?」
「何がっすか?……あーカインセンパイから聞いてるっすから!そうだ、センパイにフウガさんに会ったら伝えとけって言われたんすけど、ここの門番にはオレかセンパイのどっちかが入るようにしているからここから入る分には入る心配をしなくていいとのことっす。あっオレはジンっていうんでよろしくっす!」
矢継ぎ早に言われたが…変身したまま王都に入ることを心配しなくていいのはありがたいな。
「わかった。よろしく、ジン」
ジンと軽く握手してから南の大門を離れる。ジンの手はひょうひょうとした性格に合わず皮膚が硬くなっていて相当剣や槍の訓練をしているのだろうなと思った。
ギルドに入り、リラさんに話しかける。
「無事終わりました!」
「お帰りなさい!無事で何よりです!ウルフと…ガウルフですか!?ガウルフが西南の森にいるとは珍しいですね。これは…お二人で?」
「あぁ、トランが崩して私がトドメを刺した」
「そんなあっさりと…ウルフといえど上位種になると危険になってきますが…その様子だと余裕がありそうですね」
余裕が無かったといえば嘘になるが…[怪力]があったから余裕ができたのであって元の姿だと倒せたか怪しい…
「ヘルミネがいたからある程度落ち着いて対処できたってのもあるから一人となると危ないかも」
「そうですか…でもお二人だけででも討伐できたのは凄いことですよ!これは階級を白から上げられると思いますから上に掛け合ってみますね!」
冒険者ランクが上がるかもなのか!それは嬉しい!
「そうか、お前はまだ白だったな。なら二つ上の赤くらいにはなれれるんじゃ無いか?」
「そうですね!最低でも昇進間近の黄色にはなれると思いますよ!ではとりあえず依頼の報告をお願いします!」
ウルフの魔石28個とガウルフの魔石1つを渡した。
「では、ウルフの魔石28個で42000イム、ガウルフの魔石1つで60000イム、合わせて102000イムです!半分に分けますか?
「うん。お願い」
「では51000イムずつです、お疲れ様でした!」
今日一日で51000イムか王都内の雑用な依頼と比べて差が凄いな…分かってはいたが改めて王都内の依頼の不人気さが分かる。
「そのウルフとガウルフは解体と買い取りですよね!なら受付の中央にある。窓口へお願いします!」
担いだ2体を中央に運び係の人に渡す。渡すとき、一般的に食べることができる部位は買い取りでは無く持って帰りたい事を伝えた。
解体には少し時間がかかるといわれたので地下訓練場で過ごし小一時間経ったので窓口へ向かう。
係の人が肉を渡してくれた。ただ、その他の部位の買取額はまだ出ていないそうで、明日来てくれと言われた。
解体して貰った肉を持って黒猫の宿屋に向かう。肉が重いことがわかっていたので熊娘のままだ。
黒猫の宿屋に入るといつものようにミルが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませー!…ヘルミネさんと一緒にいる方は……あっフウガさんか!本当に別の姿ですね~!その姿も可愛いですよ!っとその大荷物はウルフの肉ですか?」
可愛い……いや、説明しておいて正解だった。
「…うん。どこに持っていけばいいかな?」
「ナリアさんには伝えておくので裏に回って貰ってもいいですか?」
「わかった」
黒猫の宿屋の裏口に向かう。裏に来たのは初めてだ。裏口の扉をノックする。すぐにナリアさんが出てきた。
「ありがとね。報酬なんだけど…1週間飲食タダでどうだい?」
「いいですね!それでお願いします!ヘルミネはそれでいい?」
「あぁ」
「あっ一つ付け足してもいいですか?」
「なんだい?」
「ガウルフの肉も入ってるんですけど、それを料理して欲しいんです!」
「お安いご用さ!今でいいかい?」
「はい!お願いします!」
ガウルフ肉の料理を食べられることにテンションを上げつつ再度表から黒猫の宿屋に入る。ミルがボク達が食事をすることを見越して席を取っておいてくれたので席に座り料理を待つ。
しばらくして料理が来た。どんな料理にして欲しいとは言わなかったのだが看板メニューのウルフ肉のごろごろ焼きに似た料理が来た。
似ているとは思ったがまず大きさが違った。通常の2.5倍程もあるのだ。それを一口大に切り口の中に放り込む。
「「熱っ!」」
ヘルミネも同じ事をしたようで同時に声を上げる。熱さの後に口の中に広がったのは肉汁の旨みであった。通常のウルフ肉とは比べるまでも無い程の肉汁と美味さに
口の中に肉を夢中で頬張る。
気がつくとあれだあけあった肉を全て平らげてしまっていた。余韻に浸りつつふと周囲を見ると店内にいるほぼ全ての人が口を半開きにして
こちらを見ていた。皿は空になっているが同じくこっちを見ているヘルミネに問う。
「な、なんで皆こっちを向いてるんだ?」
「なんて美味しそうに食べるんだ…と思ってな。しかし…食べてるのが美少女だとそれだけで絵になるな!」
ボクが食べ終わったのに気付いた他のお客さんが一人一人と我に返る中、ボクはまた顔を赤くなったのがわかった。視線には慣れてきたが大勢に見られるのは恥ずかしい…
逃げるように席を立ち厨房にいるナリアさんに「ご馳走様でした!!」と言った後自分の部屋に引っ込んだ。




