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ウルフ討伐

夜になり、食堂の営業が終わる頃に1階に向かう。

僕に気付いたミルが駆け寄ってきた。


「あれ?フウガさん。食堂なら今日はもう終わりましたよ」


「用があるのは食堂じゃ無くて…ここに泊らせて貰うにあたって話しておきたいことがあるんだ」


「…厄介ごと?」


「いや、迷惑かけるようなことじゃないんだけど…」


「そっか、なら一応みんなにも聞いて貰った方がいいですね!」


「あっちょっと…」


言うな否や従業員の人たちを呼びに行ってしまった。…[変身]をのことを話すのは最低限にしたかったけど…まぁしょうがないか…

少しして全員を呼んできてくれた。その中には当然、この店の店主であるナリアさんの姿も見える。


「呼んできました!あっ!フウガさんはナリアさんと直接会うのは初めてでしたね!」


「ありがとう」


ミルにお礼を言った後ナリアさんに挨拶をする。


「そういえば、名前は知っていましたが直接会ったことは無かったですね。楓翔です。今日からお世話になります」


「あぁ。君がフウガかい。話には聞いていたけど今まで会ってなかったね。よろしく」


挨拶もしたことだし本題に移ろう。


「で、本題なんですが…僕の[特技]が特殊でして…」


「どんな風に特殊なんだい?」


「それが…[変身]と言って姿を変えることができるんです」


「そんな[特技]聞いたこと無いね…どんな姿に変わるんだい…?」


「説明するより見て貰った方が早いと思います。害があるとかじゃないので安心していてください」


変身、狼娘!と念じる。すると魔力が体を覆う。最近はもうこの感覚も慣れてきてしまった…

皆からわっと声が上がる。数秒で変身は終わったが予想通り皆の驚いた顔が見えた。

最初に口を開いたのはミルだった。


「すごい!それが変身ですか!というかほんとにフウガさん?ですよね?」


「うん。ト……いや、フウガだよ」


「うわぁ…可愛いですね!そうか!最近王都で噂になってる駆け回る銀髪美少女の噂はフウガさんだったんですね!!」


ミルや他数人の従業員人に口々に可愛いと言われる。なんともむず痒い……いやちょっと待てなんだその噂!?

やっと衝撃から立ち直ったのか今度はナリアさんが口を開いた。


「で……その[特技]を私達に明かしたのは何故だい?」


「えっと…この他にもなれる姿があって…たぶんこれからも増えていくんですけど…変身したまま帰ってくることもあると思うんです。で、説明しないままだとボクが泊る部屋にボクじゃない人が入っていくって不審者認定されそうだったので先に行った次第です」


「なるほどねぇ…わかった。見事に女の子だねぇ…言うほど驚くような姿になることがあるのかい?」


「あーえっと…スライムになることはあります…」


「「「スライム!?」」」


「いや、でもそんな姿じゃ王都内を歩けないのでスライムの姿でここに入ってくることはないです。あと、今のところ変身した姿は今のこの狼娘の時に似ているので判別はつくとは思います」


「……わかった。にわかには信じがたいが…目の前で変身されちゃあねぇ…」


「すみません…お手数おかけします」


「いいんだよ」


温かい言葉をいただいた後、部屋に戻った。



翌日、異世界に来て初めてギルドの部屋以外で朝起きた。寝ぼけて一瞬どこにいるかわからなかったが少し経って思い出せた。


「そうか…今日からは宿暮らしだったな」


食堂にもう座ってのんびりとしていたヘルミネと朝食を食べ、ギルドに向かう。

今日は予定通りウルフ討伐をしよう。今日の受付はリラさんだ。


「おはようございます!フウガさんとヘルミネさん!今日はどうなさいますか?」


「ウルフの討伐を受けるよ」


「わかりました!ついに討伐依頼ですね!ではお気を付けて!」


素早く依頼書を作成して送り出してくれた。

久しぶりに王都外に出るなぁ。今度は前までと違い、しっかりと強くなったので危険は少ないはずだ。


南の大門で今日も門番をしているカインにチェックして貰ってから西南に向かう。



西南の森に着いた。

今回は薬草採取メインでは無いため、緑陽草は採取しないがレアな陽黄草を見かけたなら取ろうと思う。


なるべく音を立てないように風上に向かって移動するよう注意しながら森の奥へ向かう。


しばらく進むと前方から葉が擦れる音が聞こえた。慎重に向かうと4体のウルフがいるのが見えた。

こちらが風下なので気付かれてはいないはずだ。なのでまず1体僕の魔法で倒すことにする。

そうヘルミネに伝え魔法を使う。とりあえず火の魔法を使おう。あまり大きな火の玉だと周りに燃え移るので手のひらの上に出現させた火を圧縮する。圧縮することで強くなるが周りに飛び散りにくくなるのだ。

完成したファイアーボールを一番大きくて強そうなウルフめがけて放つ。


「ギャウン!?」


ウルフはファイアーボールに当たる直前に気付いたようだが避けられずもろにあたり弾け飛んだ。首から胴体にかけて焼けていて動かないので倒せたようだ。

初撃で1体倒せたがもう3体残っている。その3体はこちらに気付いたようですぐに臨戦態勢になった。

そのうち2体が僕とヘルミネに1体ずつ飛びかかってきた。もう1体は後方で様子をうかがっている。隙ができた方を襲おうとしているのだろうか?


こちらに来た1体は右前脚の爪を剥き出しにして飛びかかってきた。前回と違い今度は剣を持っていて、さらにそれなりに使えるようにもなったので剣を使って迎撃する。

飛びかかってきたウルフはこちら側から見て右には攻撃が届かないので、素早く片手持ちだった剣を両手で持ち右斜め前に行くように地面を蹴る。

そしてそのまますれ違いざまにウルフの開いた口に合わせて剣を左から右に振り抜く。

するとグシャッという音と共に肉を切り裂く感触がした。

振り抜いた反動そのままに後方にいるであろうウルフに向かうよう半回転する。


振り返った先にいたウルフは口から胸まで引き裂かれ横に倒れ絶命していた。運良く心臓ごと切ることができたようだ。

前回ウルフを倒したときは気にする余裕が無かったが今回は冷静な分斬った感触が手に残っている。いい気分では無いが慣れないと仕方が無い。


ヘルミネの方を見ると同じく飛びかかってきたウルフを大剣で真正面からぶった斬っていた。


「力業過ぎだろ……」


最後の1体は状況不利と見たのか逃げ出した。


「逃がすか!ヘルミネ!僕が足を止めるからとどめは頼む!」


「あぁ、わかった!」


ウルフの足を止めるなら氷の方がいいだろう。

氷の魔法を発動させる。狙いは足下だ足に直接当たってもいい。ウルフの足下めがけて氷の魔法を放つ。

氷の魔法は狙い通り逃げるウルフの足下に着弾し一帯を凍らせた。

凍らせたことによりウルフは足を滑らせ倒れ、そこに飛び込んでいったヘルミネが胴体を大剣で真っ二つにしてウルフとの戦闘は終わった。

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